ゲームのタイトルや必殺技などで見かける迫力満点の筆文字。その筆文字のライセンスサービスを提供しているのが、シャチハタと白舟書体による共同事業「J-Font.com」だ。64種類の筆文字フォントがあり、テレビや商品パッケージなどさまざまな分野で使われている。

 東京ゲームショウは各社の新作タイトルだけでなく、ゲーム制作に関わるさまざまな企業がブースを出している。ビジネスソリューションコーナーにある、シャチハタと白舟書体によるJ-Font.comのブースもそのひとつだ。

ビジネスソリューションコーナーにある、シャチハタと白舟書体によるJ-Font.comのブース
ビジネスソリューションコーナーにある、シャチハタと白舟書体によるJ-Font.comのブース

 J-Font.comはシャチハタと白舟書体による共同事業で、筆で書いたような筆文字フォントを提供するサービスだ。白舟書体は手彫りの印鑑を手掛けていた企業で、現在は筆文字フォントの制作などを手掛けている。自社で販売プラットフォームを持っていないため、BtoBとBtoCの両方で豊富な経験を持つシャチハタと組んで、2018年に事業を立ち上げた。東京ゲームショウは初参加となる。

 J-Font.comの筆文字フォントは、ゲームなら格闘ゲームや和物ゲーム、BLゲームで演出やタイトルなどに使われている。必殺技を繰り出すときなどに大きく表示される、ど迫力の筆文字がそれだ。これまでの採用数は数え切れないほどとのことだが、例えばカプコンの『モンスターハンターライズ』や『戦国BASARA4 皇 ANNIVERSARY EDITION』、セガの『龍が如くオンライン』、マーベラスの『天穂のサクナヒメ』などに使われている筆文字はJ-Font.com提供によるもの。ゲームだけでなく、テレビ番組『水曜どうでしょう』で番組中に出てくる筆文字や、パッケージの商品名、観光地のポスターなどで幅広く使われている。誰でも一度は目にしたことがあるだろう。

必殺技を繰り出すときに現れるど迫力の筆文字。そうした筆文字フォントを提供している。写真はセガの『新サクラ大戦』
必殺技を繰り出すときに現れるど迫力の筆文字。そうした筆文字フォントを提供している。写真はセガの『新サクラ大戦』

 最初はパッケージ販売していたが、現在はサブスクリプション形式での提供が中心。サブスクリプションの料金プランは、使用する端末の台数に応じて4種類ある。例えば利用台数が1~10台のMiniプランなら、1台あたり年1万9800円(税込み)で64書体すべてを利用できる。

 使用許諾範囲は印刷、Web画像、デジタルコンテンツ、電子書籍、ゲーム・遊技機、放送・映像制作と幅広い。そしてゲーム・遊戯機の場合、画像として使用できるほか、追加料金なしでフォントファイルそのものをゲームに組み込めるのが特徴だ。多くのフォントメーカーの場合、フォントファイルをゲームに組み込むと追加料金が発生する。J-Font.comのサービスにはそれがなく、筆文字をゲームのUIやユーザーが書き込む文字などに自由に使える。この使い勝手の良さが、採用ゲームの増加につながっているという。

 筆文字に特化していることも強みになっている。大手のフォントメーカーはゴシック体や明朝体など多数のフォントをそろえているが、筆文字はそのうち数書体ということが多い。J-Font.comは筆文字のみで64書体もあり、迫力満点系から繊細なものまでラインアップが充実。筆文字のオプションとして、他メーカーのフォントと一緒に採用してもらえるのだという。

 最近は中国からの問い合わせも増えており、中国の大手フォントメーカーである方正電子と共同で、簡体字版の筆文字フォントを開発した。今後は学生向けの学割プランや、教育機関向けの特別価格プラン、安価で商用利用も可能な個人向け新サービスも予定している。

筆文字フォントの作り方は大きく2つある。ひとつは、筆で書かれた文字に線を追加したり、一部を消したりして整える方法だ。写真左側は筆で書いた文字で、右側はそれに線を付け加えたり、一部を修正液で削ったりしてフォントにしたもの。ゲームに出てくるあの迫力満点の筆文字はこうして作られている
筆文字フォントの作り方は大きく2つある。ひとつは、筆で書かれた文字に線を追加したり、一部を消したりして整える方法だ。写真左側は筆で書いた文字で、右側はそれに線を付け加えたり、一部を修正液で削ったりしてフォントにしたもの。ゲームに出てくるあの迫力満点の筆文字はこうして作られている

(文・写真/湯浅 英夫)

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