「マーケの危機」今、再考すべきこと 第11回

ユーザーを意図的にだます「ダークパターン」と呼ばれるWebサイト設計が横行している。2022年8月発売の新刊『ザ・ダークパターン』の著者でUXライターの仲野佑希氏に、ダークパターンが問題視される社会状況と、その具体的な手口、サイト運営体制のあり方について解説してもらった。

入会はオンラインで簡単にできるのに、解約手続きにはいくつものハードルが――。そんな「ダークパターン」が横行している (写真/Shutterstock)
入会はオンラインで簡単にできるのに、解約手続きにはいくつものハードルが――。そんな「ダークパターン」が横行している (写真/Shutterstock)

 「一度きりの注文をしたつもりが、実は定期購入になっていた」「注文後に、登録した覚えのないメルマガが大量に届くようになった」「解約をしたいのに、どこを探しても手続き画面が見つからない」――。

 このように、消費者に余計な注文を促したり、不要な情報を送りつけたり、退会を妨げたりする手法「ダークパターン」が横行しています。通販サイトやサブスクリプション(定額課金)サービスを頻繁に利用している方ならば、ダークパターンに遭遇した経験は一度や二度ではないでしょう。顧客をだまし討ちするかのようなサイト設計に、いらだちを覚えたはずです。しかし、いざ販売者側に立つと、ダークパターンをサイト設計に取り入れ、ユーザーに不快な思いをさせているケースが少なくありません。

 国内のメディアでダークパターンが取り上げられるようになったのは、ここ1、2年のことです。ダークパターンの名付け親であり、英国のUX(ユーザーエクスペリエンス)専門家でもあるハリー・ブリグナル氏は、ダークパターンを次のように定義しています。

●「ダークパターン」の定義
“ダークパターンとは、ユーザーをだまして何かを購入させたり、登録させたりするなど、意図しないことを実行させる、Webサイトやアプリのトリックのこと”

出所:darkpatterns.org (筆者訳)

 2020年12月、日本経済新聞社が米プリンストン大学と明治大学の助言を受けて、国内の消費者向け主要100サイトを対象に、ダークパターンの調査を行いました。その結果、ネット通販など62サイトでダークパターンが確認されました。最も多かったのは、ユーザーを巧妙に「誘導」する手法で、58サイトが該当。そのうち、メルマガ受信が初期設定でオン(同意)になっているダークパターンが51例見つかり、商品の定期購入が初期設定になっているものも2サイトありました。

「定期購入」に関する消費者からの相談件数が急増中
「定期購入」に関する消費者からの相談件数が急増中
出所:消費者庁「詐欺的な定期購入商法をめぐる状況」

 新型コロナウイルスによる巣ごもり消費で、定期購入にまつわるトラブルも急増しています(上図)。「1回だけのお試し注文のつもりが、複数回購入しないと解約できない定期購入契約になっていた」「いつでも解約できるという説明があったのに、解約したくても電話がつながらない/追加の支払いを求められた」などの相談が全国の消費者センターに寄せられており、その数は20年度で6万件弱。15年度の4141件から5年で約14倍に達しています。

 こうしたトラブルの増加を受け、22年6月には特定商取引法の改正法が施行されました。改正法では、通信販売における「詐欺的な定期購入商法」への対策が強化されています。

●特商法の主な改正内容
・定期購入でないと誤認させる表示等に対する直罰化
・上記の表示によって申込みをした場合に申込みの取消しを認める制度の創設
・通信販売の契約の解除の妨害に当たる行為の禁止
・上記の誤認させる表示や解除の妨害等を適格消費者団体の差止請求の対象に追加

出所:消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律(2022年6月施行)

 世界の動向に目を向けると、消費者保護やプライバシー保護に敏感な欧米では、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)や、米国カリフォルニア州の消費者プライバシー法(CCPA)でダークパターンに対する規制を強化しています。国内の改正特商法も、まだ規制強化に乗り出したばかりといえるでしょう。

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