2万4955文字という“長すぎる”紹介ページが話題を集めた新製品がある。ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)が2022年8月に発売した低アルコール飲料「正気のサタン」だ。文字数もさることながら、製品名のボツ案や担当者の苦悩などまで完全公開しているのは斬新。きれいな言葉やおいしさをアピールすることだけが広告や販促の“正解”ではない。そこには顧客と真摯に向き合い、愛されるヤッホーのマーケ姿勢が表れている。

正気のサタンのマーケティングを担当した本田敏也氏(写真左)。社内ではコナンくんという通称で呼ばれる。よなよな未来課(ブランド戦略ユニット)に属し、新しいことに部署横断でチャレンジするエキスパート職としてヤッホーブルーイングに2021年4月に入社した。井手直行氏・通称てんちょ(写真右)は、星野リゾート代表の星野佳路氏が1997年に創業した同社の社長に2008年に就任。仮装をしてイベントに参加することも話題に
正気のサタンのマーケティングを担当した本田敏也氏(写真左)。社内ではコナンくんという通称で呼ばれる。よなよな未来課(ブランド戦略ユニット)に属し、新しいことに部署横断でチャレンジするエキスパート職としてヤッホーブルーイングに2021年4月に入社した。井手直行氏・通称てんちょ(写真右)は、星野リゾート代表の星野佳路氏が1997年に創業した同社の社長に2008年に就任。仮装をしてイベントに参加することも話題に
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 2万4955文字。これは、ヤッホーブルーイングが発売した低アルコール飲料「正気のサタン」の製品紹介ページに掲載された文字数だ。書籍1冊は10万文字程度であり、実にその4分の1ほどのボリュームということになる。製品紹介ページとしては規格外であり、“正気の沙汰”ではない(以下に正気のサタン製品紹介ページへのリンクを張るが、一度行くと読み終わるまでに相当な時間を要するので、ほどほどに読みながら記事へ戻ってきてほしい)。

正気のサタンの製品紹介(ランディング)ページ。一見するとちょっとおしゃれな普通のブランドページかと思いきや……
正気のサタンの製品紹介(ランディング)ページ。一見するとちょっとおしゃれな普通のブランドページかと思いきや……
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ページを全てスクロールして保存したもの。読み終わるまで何分かかるのやら。文字数は驚異の2.5万文字
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▼関連リンク(クリックで別サイトへ) 「醸造系クラフトドリンク 正気のサタン」長すぎる製品紹介ページはこちら

 正気のサタンは、ヤッホーブルーイング初の低アルコール飲料として2022年8月2日から東京都内のセブンイレブン限定で先行販売されている。予想をはるかに上回る売れ行きを見せ、売り切れ店も続出。クラフトビールと同じ素材・製法でアルコール度数だけを抑えているのが特徴で、一般的なノンアルや低アルコールビールのように発酵せずにビールの風味を付けたり、できあがったビールのアルコール度数を抜いたりしていないため、ヤッホーブルーイングは「醸造系クラフトドリンク」と名付けた新しいカテゴリーとして打ち出している。

正気のサタンは、ヤッホーブルーイング初の低アルコール飲料。アルコール度数は0.7%。東京都内のセブンイレブン限定で先行販売
正気のサタンは、ヤッホーブルーイング初の低アルコール飲料。アルコール度数は0.7%。東京都内のセブンイレブン限定で先行販売
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 近年ビール市場は、右肩下がりが続く。そんな中、クラフトビールとノンアルコールビールの2つのカテゴリーだけは伸びている状況だという。ただ、社長の井手直行氏は「ノンアルコールビールは、車を運転するなどアルコールを飲めない理由があるときに仕方なく飲むイメージが強かった。味はビールに近いけれど“代替品”。ヤッホーがそれをつくっても意味がないと思って、ずっとやってこなかった」と言う。

 それではなぜ、今ヤッホーブルーイングが正気のサタンを発売したのか。

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