「マーケの危機」今、再考すべきこと 第7回

月間200万人が訪れるECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムが、コンテンツ力やブランディング力を生かした企業マーケティング支援を展開している。手がけた広告プロモーションには、読者や視聴者から「ありがとう」といった声が届く。ナショナルブランドを中心に100社以上が導入する、生活者に「喜ばれる広告づくり」とは。

月に200万人が訪れるECサイト「北欧、暮らしの道具店」
ECサイト「北欧、暮らしの道具店」

 「『北欧、暮らしの道具店』のような雰囲気にしてほしい」――。

 クラシコムのブランドソリューション事業には、企業から様々な相談が寄せられるという。「確かに雰囲気も大切だが、それだけでは伝わらない」と語るのは、同社取締役事業開発部の高山達哉部長だ。

 2007年に立ち上げた「北欧、暮らしの道具店」は、世界中の雑貨や洋服のほか、オリジナルブランドの商品を販売するECサイトだ。クラシコムでは、サイトを「世界観(ライフカルチャー)でつながるプラットフォーム」と位置付け、商品紹介はもとより、生活の風景や文化などをテーマにしたコンテンツを一貫したトーンで届けてきた。「フィットする暮らし、つくろう」をミッションに掲げ、自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できる商品や時間を表現する。

 ECサイトに加え、公式アプリは210万ダウンロードを突破(22年7月末時点、以下同)。LINEは75万、Instagramは138万のフォロワーを有し、YouTubeチャンネルには53万人が登録、ポッドキャストは累計1000万回再生と、多くのユーザーが「北欧、暮らしの道具店」がつくり出す世界観に魅了されている。

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 こうした消費者とのつながりやコンテンツ制作力、企画力など、クラシコムの培ってきたメディア力とノウハウを、他企業のマーケティングに活用するのがブランドソリューション事業だ。高山氏は、「『北欧、暮らしの道具店』が普段心がけていることやそのスタンスを、そのまま企業の広告コミュニケーションの中でも反映させている」と語る。

 冒頭の通り「『北欧、暮らしの道具店』のような雰囲気にしてほしい」という多くの相談に対し、高山氏らは、目に見える雰囲気だけではなく「まず、商品を分かってもらうことが大切」と伝えている。

2015年にブランドソリューション事業を開始後、支援企業数は右肩上がりで21年には100社を超えた。年間売り上げは開始当初から7倍の成長だ(資料提供/クラシコム)
2015年にブランドソリューション事業を開始後、支援企業数は右肩上がりで21年には100社を超えた。年間売上高は開始当初から7倍の成長だ(資料提供/クラシコム)

 コンテンツをつくる以上は、少しでも読んだ人の心を動かすことができたらうれしい。だが、そのために雰囲気だけを良くしたり、決して奇をてらうような「面白さ」を追求したりはしない。

 19年初頭、社員全員に配られた編集用の読本「KURASHICOM BOOK 1」がある。「北欧、暮らしの道具店」の編集方針や細かな作業マニュアルのほか、全社員のインタビューを通じて、「フィットする暮らし」をどう表現していくかをまとめた本だ。

 この中に、「面白いとは分かること」という言葉がある。具体的にクラシコムの考える「面白さ」とは、以下の3点を指す。

 コンテンツを読んだだけで、何を伝えたいかが「理解」でき、自分もそんな気持ちになることがあるといった「共感」ポイントが盛り込まれており、自分の暮らしに取り入れてみよう、あるいは今のままでいいことが分かるなどの前向きな「動機」につながる。この3点がそろって初めて、つくり手と読み手とのコミュニケーションが取れる。これを支援企業にも必ず伝えていく。

生活者視点でのメリットから考える

 読み手にいかに理解してもらうか。広告プロモーションのスタート地点では、企業の担当者とクラシコムのメンバーたちが各社のサービスや商品と「がっつり向き合う」(高山氏)。商品を使うベネフィット(便益)は何なのか。メリットがなければ購入にはつながらない。だが、企業側が考えているメリットが、実は生活者視点ではメリットになっていないケースも多い。

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