2022年9月2日発売の「日経トレンディ2022年10月号」 ▼Amazonで購入する では、「ずるい文章術」を特集。ビジネス文書を書くときに必要なノウハウは、結論を最初に伝えること。「逆三角形型」、それを発展させた「PREP法」の2つをマスターすれば、大半の文章に応用できる。ライターの藤𠮷豊氏に、ビジネスシーンで有効な文章力を身に付けるコツを聞いた。

※日経トレンディ2022年10月号より。詳しくは本誌参照

結論を先に書く「逆三角形型」は、意識すべき型の1つ
結論を先に書く「逆三角形型」は、意識すべき型の1つ

 分かりやすい文章を書くための共通ルールは存在するのか。文章術の名著100冊を読み込んだライターの藤𠮷豊氏に、ビジネスシーンで有効な文章力を身に付けるコツを聞いた。

文道 藤𠮷 豊氏
編集プロダクションで編集・ライティングに従事した後、出版社で自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からはフリーランスとして活動。06年以降は大学生や社会人向けに執筆指導も行う。主な著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを一冊にまとめてみた。』(日経BP)などがある

――幅広い文章術に関するベストセラーを読んで、一番の発見は?

 歴史に残る文豪、著名ジャーナリスト、らつ腕編集者、人気ブロガー。バックボーンや専門分野の違う様々な人の本を読みました。それでも大事だとするノウハウには、ほとんど差がなかったことですね。文章を上達させるには、基本の「型」を押さえることが早道なのだと実感しました。

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――特に、ビジネス文書を書くときに必要なノウハウは何ですか。

「相手が知りたいこと=結論」を最初に伝えることです。

 例えば、イベント出席の案内に対する返事を「その日の午前中は社内で別の会議があり、午後は取引先との商談があります。午後5時には社に戻りますが、その後も急ぎの仕事があるため参加できません。次はぜひ参加したいと思います」と受け取ったらどうでしょうか。相手が知りたいのは、「来るか・来ないか」なのに、最後まで読まないと結論が分かりません。

 これを結論ファーストにすると、「今回は残念ながら参加できません。その日は終日仕事の予定が決まっています。午前中は会議、午後は取引先との商談、社に戻ってからも急ぎの仕事があります。次の機会にはぜひ参加したいと思います」となり、情報を的確に伝えることができます。最後まで読まなくても概要がつかめるので、相手の時間を取らない。しかも一番大事な情報を先に書けばいいので、文章の書き出しに悩む必要がありません。

 最初に結論を述べて、次に結論に至った経緯を説明し、最後に必要であれば「次は参加したい」といった個人の意見を補足する。結論から書き進むほどに重要度が低くなる、こうした文章を「逆三角形型」といいます。これはビジネス文書に最適です。文章力を上げたいビジネスパーソンが、最初にすべきなのは逆三角形型の文章の書き方を覚えることです。

 これを進化させたものが「PREP法」で、プレゼン資料や企画書などで効果を発揮する型です。結論、理由、具体例を順に解説し、最後にあらためて結論で締めくくる。例えば、「今回提案したい商品はこれです」と結論から提示し、その理由として市場データなどを挙げ、モニター使用者の感想など具体的なエピソードを紹介する。最後にもう一度、「ゆえにこういう機能を付加した商品を提案します」とプッシュすることで読み手の理解や納得感が深まります。

 ビジネス文書なら、この2つの型がほとんどの文章に応用できるはずです。

ビジネス文書がうまくなる「型」

基本「逆三角形型」

最初に結論を書き、その後重要度が高い順に説明を書いていく構成。文章で言いたいことを最初に明らかにすることで、情報が的確に伝わる。文章量を減らす場合は後ろから削ればいいので推敲もラク。新聞記事の多くはこの構成だ
最初に結論を書き、その後重要度が高い順に説明を書いていく構成。文章で言いたいことを最初に明らかにすることで、情報が的確に伝わる。文章量を減らす場合は後ろから削ればいいので推敲もラク。新聞記事の多くはこの構成だ

発展「PREP法」

逆三角形型の一種ともいえる。結論を先に書くのは同様だが、説明の部分を理由と具体例に細分化し、根拠を明確化。結論を最後にも加えることで、説得力が高まる
逆三角形型の一種ともいえる。結論を先に書くのは同様だが、説明の部分を理由と具体例に細分化し、根拠を明確化。結論を最後にも加えることで、説得力が高まる
結論、理由、具体例を順に解説し、最後にあらためて結論で締めくくる
結論、理由、具体例を順に解説し、最後にあらためて結論で締めくくる

――より長い文章を書くときに、うまく仕上げるコツはありますか。

 まずは自分が「うまい」と思った先輩や同僚の文章をマネすることです。

 私は以前、自動車雑誌の編集者だったことがあります。自動車の記事を書いたことがなかったのに、新車のレビューを書かなければいけない状況でした。そこで人気の自動車ジャーナリストの原稿を読んで、何がどの順番で書かれているのかを抽出・分解してみたのです。すると最初に開発者へのインタビューを書いてから、前モデルとの違い、デザインや性能の特徴、価格と続き、最後に自分の感想で締めていると分かりました。それをマネすることで新車レビューの記事が書けるようになりました。

 ビジネス文書の場合も同様です。何をどんな順番で書き、どの情報に厚みを持たせているのか。マネする際も注目すべきなのは型です。読みやすいビジネス文書は、逆三角形型やPREP法の構成になっているものが多いので、自然とこうした型に当てはめる書き方が身に付くはずです。

 文章の上達過程は、「守破離」です。まずは「守」でPREP法など一つの型を忠実に守って書き方を定着させる。次に、「破」で型にアレンジを加えてみる。例えば結論の前に疑問や不安を書き、結論に対するインパクトや、読み手に自分事感を持たせる手法があります。ここまでマスターできたら、既存の型に頼らずに、オリジナリティーを目指す「離」の段階に進むといいでしょう。

――ビジネス文書を書く際、型の他に気を付けるべきことはありますか。

 文章術のベストセラー100冊で一番多く指摘されていたことは「シンプルに書くこと」です。100冊中、53冊で紹介されていました。特にビジネス文書は、読み手による差異が生まれないよう、分かりやすく伝えることが必要です。

――「うまい文章」というと、ひねりの効いた比喩やハッと驚く論理展開が思い浮かびますが、ビジネス文書では基本に忠実な文章が求められる?

 その通りです。型にはめることもシンプルに書く工夫の一つといえます。また、細かい言葉選びでも工夫の余地があります。

 その一つに、簡単な言葉を雑に使わないことが挙げられます。例えば、「お金持ち」。耳慣れた言葉ですが、年収は1000万円以上なのか1億円超か、人によって想定するお金持ちは様々です。プレゼン資料で、「富裕層向け商品」としたときに、その富裕層とはどのくらいの人がターゲットなのかを明らかにしておく必要があります。「野村総合研究所の階層分けに倣って、ここでは金融資産保有額1億円以上5億円未満の世帯と定義します」と補足するなど、読み手に誤解なく、正しく意図を伝えるためには、簡単な言葉こそ認識のすり合わせをすることが大切です。

――テレワーク時代ならではのビジネス文書を書く注意点はありますか。

 テレワークでは文書をプリントアウトせず、スマホなどの小さい画面で見るケースが多くなりました。周囲に余白がある紙の書類よりも詰まった印象になるので、画面が黒く見えすぎないようにする重要性が増しています。「ホラーの帝王」とも称される米国の小説家、スティーブン・キングは著書『書くことについて』(小学館)の中で、「その文が読みやすいか、読みにくいかは中身を読まなくても分かる。読みやすそうな本はワン・パラグラフが短く、白いスペースが多い」と書いています。見た目が黒いと難しい印象を与えてしまうので、文章全体の中でひらがなの割合を増やす、内容が切り替わるところでは余白行も加えて改行するなどが求められます。余白を設ける工夫一つで読み手の負担はグッと減ります。

 何を書くかは違っても、ほぼすべての仕事で書く力は求められます。文章力は業界や職種を問わず求められる「ポータブルスキル」。苦手意識がある人は克服しておくことで、将来活躍するチャンスが広がると思います。

 文章力が上がると、書く以外のスキルも上がります。マネする過程で文章の分析を積み上げれば、読解力が上がる。文章を書くためにどんな情報が必要か分かれば、情報収集もうまくなる。論理的な構成を組み立てられるようになれば、話術の上達も期待できます。文章力を磨くことは、ビジネススキル全般の向上につながるといえます。

(写真/高山 透)

注)「ずるい文章術」は、「日経トレンディ」2022年10月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。
▼関連リンク 「日経トレンディ」(電子版)
「日経トレンディ2022年10月号」の主な内容を紹介
【ずるい文章術】
●伝わる文章のカギは「短文」誰でもできる“言葉ダイエット”の法則
●PART1 企画書編
脱・重厚長大「プレスリリース形式」で書けば説得力が劇的向上
●PART2 チャット編
脱・メール構文「一文一義」「挨拶不要」が業績アップにつながる!?
●PART3 プレゼン資料編
脱・官公庁パワポ資料 一瞬で伝わる秘訣は「13文字以内」
●PART4 SNS編
脱・Web1.0型発信 コアファンをつくる「共感」の生み方
●PART5 転職応募書類編
脱・書類選考落ち 40代からは「即戦力性」がカギ
●先進企業に学ぶビジネス文書の社内ルール
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