ファミリーマートの店舗集客大作戦 第7回

コード決済機能を備えたファミリーマートの公式アプリ「ファミペイ」は、2022年7月にサービス開始3周年を迎えた。鳴り物入りで3年前にスタートしたサービスだが、必ずしも思惑通りに事は進んでおらず、22年に入って仕切り直しに踏み切った。実はその取り組み方に、現在、ファミリーマートが好調を続ける秘密の一端が隠されている。

公式アプリ「ファミペイ」を使ってコード決済をする画面。3つの共通ポイントのどれかをあらかじめ登録しておけば、ポイント付与と決済を1つのバーコードで同時に処理できる(出所/ファミリーマート)
公式アプリ「ファミペイ」を使ってコード決済をする画面。3つの共通ポイントのどれかをあらかじめ登録しておけば、ポイント付与と決済を1つのバーコードで同時に処理できる(出所/ファミリーマート)

 ファミリーマート(以下、ファミマ)の公式アプリ「ファミペイ」の肝は、「Tポイント」「dポイント」「楽天ポイント」とマルチポイントに対応しつつ、各共通ポイントのIDとファミリーマートのID(以下、FM・ID)を連係させていることだ。ユーザーがアプリを使って決済する際、アプリ画面に独自のバーコードが生成され、ポイント付与・利用とコード決済による支払いを同時に処理できる。

 消費者にとっては、好みの共通ポイントを利用できるうえに、その提示と決済を別々にする手間が省ける。ファミマにとっては、複数の共通ポイントを導入しても、購買履歴などの顧客データは自社のFM・IDに集約して管理できる。このFM・IDのデータを蓄積し、店頭レジで収集するPOS(販売時点情報管理)データなどと合わせて、近い将来に本格的なデータマーケティングを展開しようという狙いが、サービス開始当初のファミマにはあった。

 また、ファミペイのコード決済機能は、「FamiPay」とアルファベットで表記する。FamiPayについても、ファミマならではの特徴がある。ユーザーが決済するときに発生する手数料をできるだけグループ外に流出させないようにしているのだ。例えば、クレジットカードは当初、ファミマやその親会社である伊藤忠商事が出資するポケットカード(東京・港)発行の「ファミマTカード」だけにしか対応していなかった。現在でもJCBブランドのクレジットカードのみだ。

PayPayの想定以上の急伸が読み違いに

 ファミペイは2021年11月時点で1000万ダウンロードを達成し、順調に普及しているように見える。しかし、デジタル・金融事業本部長補佐兼金融事業部長兼ファミマデジタルワン社長である中野和浩氏は、「当初の想定と比較すると読み違いがあった」と話す。具体的には、ソフトバンクグループ傘下のPayPay(東京・千代田)が運営するコード決済「PayPay」が、18年10月のサービス開始から3年10カ月で、アカウント登録したユーザー数が5000万人を突破(22年8月18日時点)するなど、想定以上に急速に普及してしまったことを指す。この結果、ファミマ店頭で、ファミペイではなくPayPayで決済するユーザーが思いのほか多い、という事態を招いているというのだ。

ファミリーマート デジタル・金融事業本部長補佐兼金融事業部長兼ファミマデジタルワン社長である中野和浩氏
ファミリーマート デジタル・金融事業本部長補佐兼金融事業部長兼ファミマデジタルワン社長である中野和浩氏

 ファミマ店頭での決済の半分以上はまだ現金決済なので、現時点ではユーザーの多くが仮にFamiPayで決済していたとしても、ユーザーの購買履歴などのデータをFM・IDを通じて十分に収集できているとはいえない。現金決済のユーザーの購買履歴はデータとして収集するのが難しいからだ。

 とはいえ、「ユーザーがFamiPayで決済せずにPayPayなど他のキャッシュレス決済手段で決済してしまうと、FM・IDも収集できないし、決済手数料も外部に支払う必要が生じる」(中野氏)。これでは何のためにFamiPayを提供しているのかという疑問が社内で生じても不思議ではない。

ファミペイ普及策を仕切り直し

 そこでファミマは、ファミペイの普及と利用を促進するため、22年に入ってファミペイの普及策の仕切り直しに踏み切った。PayPayなど競合するキャッシュレス決済手段への対抗上、例えば商品の割引クーポンをアプリ上で発行するといったユーザーへの還元策は強化しつつ、ファミマの強さを前面に出して、「ファミマらしいサービス」として普及を働きかけるようにした。ファミマの強さとは、「自前の店舗とスタッフを抱えていることと、商品と連動したマーケティングを実施できること」(中野氏)だ。

ファミペイ上に示される商品の割引クーポンの例(出所/ファミリーマート)
ファミペイ上に示される商品の割引クーポンの例(出所/ファミリーマート)

 例えば、店での声掛けの徹底。かつてファミマがTポイントと蜜月関係にあった際、ユーザーがファミマ店頭で決済するときに店員が「Tカードをお持ちですか?」とほぼ必ずといってよいほど声を掛けていた。ファミペイでもこれと同じことを再度徹底し、ユーザーへの普及を進めようというのだ。

 また22年5月から6月にかけては、全国の加盟店を対象に、ファミペイの普及や利用促進に成功した施策を募集し、優秀な施策を発表するコンクールを社内で開催した。具体的な成功例を全国の加盟店に知らしめ、その例を参考にしてそれぞれの店で取り組みを進めてもらい、店頭でのファミペイ普及を後押ししようと考えたのだ。

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