
ファミリーマート(以下、ファミマ)がコンビニエンスストアの改革に取り組んでいる。独自の品ぞろえを強化しつつ、店内に大型のデジタルサイネージ(電子看板)を設置。伊藤忠商事出身の細見研介社長は「ファミマはデジタルとリアルをつなぐメディアになる」と語り、今後、他社との協業を進めていく考えも示した。(聞き手は日経MJ編集長 永井伸雄)
ファミリーマート社長
――コンビニ市場が飽和しているといわれますが、どうみますか。
細見研介氏(以下、細見) 社会の状況も、小売業も変わってきている中で、コンビニだけが市場飽和といわれるのか。店舗数だけでいえば、今までみたいに増えないかもしれませんが、飽和という言葉は極めてミスリーディングです。
――サイネージの導入効果を、加盟店の現場とどう共有しますか。
細見 百聞は一見にしかず、です。サイネージは3000店に設置し、飲料の無人補充ロボットも3年で300店に導入します。見てもらって、体験してもらって、が一番。実際には想定とは違う化学反応も起きます。まず取り組んで、動きながら修正していきます。
サイネージは都市部や地方など、いろいろな地域に設置しました。各地でどんな化学反応が起こるのか楽しみです。広告事業なので、まずお客さんに見てもらいます。でも、考えてみると一日中眺めているのはお店の方です。お店の方たちはすごく喜んでいます。
――「アンバサダー」になりますね。
細見 店舗のスタッフは全国に約20万人います。1日1500万人のお客さんが来店して、お店には駐車場もあります。いろいろなビジネスの可能性が広がります。
――コンテンツはどうですか。
細見 今はトライアルで、いろいろな広告を流していますが、『(雑誌)東京カレンダー』のちょっとした映像とかもあります。若い人に人気の韓流アイドルなど、いろいろ仕掛けたいですね。お店のスタッフも、サイネージが(事業の)次のステージへの入り口だと思ってくれているのではないかな。気持ちとしては今年度内には1万店にサイネージを広げたい。
マーク・アンドリーセン氏の「ソフトウエアが世界を飲み込む」というのは、どの業種も同じ。これからは自動車もゲームも売り方が変わります。デジタルでの競争は無限。コンビニの店舗はデジタルとの接点です。
――リアルの店舗は強みになるんですね。
細見 アドバンテージですよ。コロナ禍が始まったとき、オンラインで飲もう、とかやりましたが、やっぱり面白くない。場の雰囲気というのは、リアルでしか感じられないものなんです。
――ファミマとして、どんなブランドを目指していますか。
細見 ブランディングには注意が必要です。限定的なイメージを強く打ち出しすぎると、マーケティングが小さくなってしまう。メディアを持ったことで弁当、おむすび、メーカーの商品など、どうやって作っているのか、どんな品質管理をしているのかなど、説明できます。エリアで分割すれば、地方(テレビ)局のようなこともできます。ある鉄道会社の会長からは「一緒に組みましょう」と声をかけられました。
ファミマには地域の情報に精通した約2000人のスーパーバイザーがいます。大手コンビニの中では、早く仕掛けていきます。今までの競争とは違ってきます。
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