新刊『それでは伝わらない!ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ』(2022年8月、日経BP発行)を基に、ビジネスコミュニケーションの常識を変え、グローバル化を一気に進展させる新しいツールの登場やコミュニケーションスタイルの変化の背景を整理して解説する連載。今回は、ビジネスパーソンが報告・連絡・相談に使っているツールについて掘り下げる。

 ある保険会社では、業務報告はすべてLINEで行っています。報告テンプレートが決まっていて、そこに報告内容を記入してLINEで上司に送信します。仕事に関するやりとりも基本的に常にLINEのメッセージで行います。LINEであれば片手でスピーディーかつ簡潔にやりとりできます。「お疲れさまです」「よろしくお願いします」程度の挨拶は入れますが、メールほど堅苦しい文章は不要で、気心の知れた相手であればラフな書き方でも問題ありません。

 その保険会社で働く若手のJさんにとっては、使い慣れたLINEが使えるメリットは感じつつ、まだ非効率な点があると指摘します。

 「会社から支給されるスマホに業務用LINEのアカウントがありますが、それとは別に上司とは私用スマホのLINEでもつながっていて、報告は社用で、それ以外は私用LINEへ、といった指示をされるのです。自分からすると、1つのLINEに統一してやりとりできればいいと思います。また、業務テンプレートもフォーマットに従って入力するのは手間がかかるので、必要な数字だけをそのまま送るなど、もっとシンプルにしてほしいなと思います」

ビジネスチャットで全社員とつながる

 現在フリーランスでメディア運営をする28歳のKさんは、フリーになる前は美容室で働き、その前は金融系ソフトウエアサービスのスタートアップ企業で働いていました。ソフトウエア企業と地元の美容室でのコミュニケーション方法は全くカルチャーが異なりギャップに驚いたと言います。

 「ソフトウエア企業では、すべてのコミュニケーションはSlackで行われていました。上司からの業務指示、チームメンバーとのディスカッション、全体アナウンスなど、何から何までSlackで完結していました」

 20代のKさんにとってSlackは、仕事のコミュニケーション手段として使いやすかったようです。

 「私にとっては、すごくやりやすくて気に入っていました。一番は、いちいち『お疲れさまです』とか『よろしくお願いいたします』とか、メールでよく使う定型文を入れる必要がなく、伝えたいこと、聞きたいことをそのまま、すぐ送れるところです。また、LINEのようにスタンプで反応できるところもすごく便利でした。読んだことをスタンプで、ワンクリックで伝えられますし、仕事上の成果をSlackで投稿すると、同僚がおめでとうをスタンプで伝えてくれることもありました」

 「Slackでは参加しているメンバー全員のアカウントを見ることができるため、直接の上司や同僚以外にもメッセージを送ることができます。私も社長に直接、改善アイデアのメッセージを送ったことがあります。以前、来客したお客さまが適切な案内を受けていない状況を見て、来客の際の案内プロセスや担当者を正確に決めておくべき、という趣旨のメッセージを伝えました。社長は早速その問題の対応策を講じてくれました」

 一方でデメリットもあったようです。

 「Slackで全社員とつながってしまうので、DMで私用のメッセージを直接送ってくる同僚がいました。正直、勤務中に仕事外の話をする余裕はなかったのですが、むげにすることもできず、対応が面倒だなと思うこともありました」

メールのコミュニケーションは非効率で無駄が多い

 その後、Kさんは結婚をきっかけに退職し、近所の美容室の事務のパートとして働きました。そこでのコミュニケーション手段の違いにかなり戸惑ったようです。

 「その美容室でのコミュニケーションはすべてメールでした。主に上司やお客さまとのやりとりだったのですが、仕事のやりとりはメールと決まっていて、メールならではの定型文や、敬語への細かい配慮など、これまでSlackのオープンでストレートなコミュニケーションに慣れていたので、面倒だなと感じました。正直、一度Slackコミュニケーションを経験していると、非効率で無駄が多いなと思いました。ただ、パートという立場から改善意見を言うことはできませんでした。また、職場の風景も違っていました。ソフトウエア企業では全く紙を見ることはありませんでしたが、その美容室では紙だらけで、そういったデジタル化の環境も大きく異なっていると感じました」

 ビジネスで使うデジタルツールは、これまでメールが主流でしたが、「メールでは面倒」といった声があり、ビジネスチャットやLINEに置き換わるのは時間の問題だと考えた方がいいでしょう。

SNS標準がビジネスコミュニケーションへ、学び直すのはキャリア世代!?
『それでは伝わらない!ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ』
『それでは伝わらない!ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ』
著者●西原勇介/定価●1870円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●四六判248ページ/発行日●2022年8月29日/ISBN978-4-296-20018-4

 最近の若者のコミュニケーションはいかがなものか――。そう考えているキャリアパーソン世代は少なくないでしょう。しかし、キャリアパーソン世代が常識と思っているビジネスコミュニケーションは、今、過去のものになろうとしています。これまでは「丁寧・気配り」「実直」「立場・背景」が重視されましたが、新常識の特徴は「共感」「ストレート」「フラット」で、従来とは大きく変化しています。

 これら新常識にキャリアパーソン世代は戸惑うでしょうが、若者はそうではありません。実は若者がSNSで身に付けたコミュニケーションスキルの特徴と同じなのです。つまり、コミュニケーションを学び直す必要があるのはキャリアパーソン世代というわけです。

 ビジネスコミュニケーションの新常識は、本書を読むことで最速で身に付けることができます。もちろん社会人になったばかりの若者や就職を控える学生にとっても、普段のコミュニケーションが次世代のビジネスシーンにおいてどんな価値があるのか、本書を読めば具体的な事例をもって知ることができ、得意とするスキルをビジネスでも存分に発揮できるようになります。

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