いまだその全貌が見えない「Web3」。本連載では書籍『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』(2022年7月、日経BP発行)を基に、Web3を正しく理解するために必要な情報を整理してお届けする。第1回は「Web3の定義」について解説する。
2021年後半から「Web3」の注目度が高まりましたが、現在、Web3の定義は必ずしも明確ではなく、現在進行形でアップデートされ続けています。今も変化していることを承知の上で、「Web3」を定義したいと思います。
Web3は特定のプラットフォームに依存しない世界
「Web1.0」は、主にパソコンを利用するWebサイトや電子メールの世界です。続く「Web2.0」は、モバイルやスマートフォンを用いたSNSが主流となり、大手プラットフォーマーがデータを囲い込んで中央集権化が進んだ世界です。Web1.0、Web2.0の表記に合わせた「Web3.0」は、ブロックチェーン/スマートコントラクト(決められた条件になれば自動的に実行される仕組みを備えた契約)の技術を基盤とする分散化されたネットワーク上で、特定プラットフォームに依存せず自律したユーザーが直接(P2Pで)つながる世界です。
Web3.0のマーケティング的な視点が「Web3」で、暗号資産(従来「仮想通貨」と呼んでいたもの。「クリプトアセット」や「クリプト」と呼ぶ)やブロックチェーンのリブランディングという見方もあります。以降、本連載ではWeb3.0とWeb3を区別せず「Web3」で統一します(表1)。
Web3の特徴として、ブロックチェーンの活用、DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)/スマートコントラクトでの意思決定、トークン利用のエコシステムは揺るぎないと思います。一方で、利用するデバイスは、Web2.0の延長上でモバイルやスマートフォンを利用しつつ、XR(VRやARなどの仮想技術の総称)やウエアラブル関連のデバイスを活用することが考えられますが、それらだけと決まったわけでありません。デバイスの技術進化は速いので、適宜最良のデバイスを採り入れるでしょう。
Web3が盛り上がった背景に、Web2.0時代の自由競争の結果としてテックジャイアントが個人情報を集約し、それらプラットフォーマーの影響力が大きくなり過ぎてしまったことへのカウンターカルチャー的な要素があります。Web2.0の場合、どんなにフォロワー数の多いアカウントであっても、アカウントのデータはプラットフォーマー側にあり、ユーザーはあくまでも、プラットフォーマーのサーバー内のデータを借りている存在にすぎないのです。プラットフォーマーの都合でいつでもアカウントが停止されることもあり、米国の元大統領トランプ氏が任期中に一斉にSNSのアカウントを停止された事件は象徴的です。
対して、Web3の基盤にはブロックチェーンがあり、パブリックブロックチェーンは象徴的な存在です。パブリックブロックチェーンとは、インターネットに接続できる人であれば誰でも許可なく取引に参加でき、管理者が存在しないブロックチェーンのことです。特定の国家や企業が利益を独占するのではなく、人類共通のインフラとして稼働しており、理論的には100年後や1000年後も永続する可能性があります。100年続くコミュニティーとなると、多くの企業や国家よりも長い寿命です。
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