
「マーケター・オブ・ザ・イヤー2022」の5人目は、東京・下北沢でこれまでの常識を覆す再開発に挑んだ小田急電鉄の橋本崇氏。住民それぞれが大事にする「シモキタ」のイメージを読み解き、住宅や旅館、ミニシアターなど個性的な施設が立ち並ぶエリア「下北線路街」をつくり上げた。
22年5月に全面開業した「下北線路街」。全長約1.7kmのエリアに、住宅や旅館、ミニシアター、学生寮など13種類の個性豊かな施設を誘致し、若者が集うスポットに。開業後、下北沢駅の乗降人員は1.6万人増えた。輸送人員については、新型コロナウイルス禍の影響もあるが、小田急線全駅の平均が前年比で30.4%増加しているところ、下北沢駅は前年比38.9%増えた。
このエリアはもともと小田急線の線路が敷かれていたところで、東京都の連続立体交差事業と小田急電鉄の複々線化事業によって線路が地下に移動し、地上に空いたスペースを活用したもの。担当となった橋本氏はまず住宅地図を手元に周辺地域をくまなくリサーチし、地元の商店街組合や住民らと200回以上の意見交換をしたという。
「朝昼晩、雨の日や土日も含めてどこをどういう人が歩いているかなどを、地図を持ちながら歩いて見て回り、街の癖を知っていった。日常の動線上にないと人はなかなか来ない。その動線からどうやって人の流れをつくるか。住民の方々にも話を聞きながら、現地に行って情報を集める。その繰り返しだった」 (橋本氏)
「下北沢」ではない「シモキタ」を発見
そこで気づいたことの1つが、多くの人たちが自分たちの地元を「下北沢」とは呼ばないこと。「代田」「代沢」「北沢」といった地名で呼ぶ人たちがほとんどだった。一方、そんな人たちも「シモキタ」という言葉に愛着を持っている。そこで橋本氏は、「地元の方が使う『シモキタ』は場所を示す言葉であると同時に、自分たちが思い思いに好きなことをしている状態や概念も『シモキタ』と表現しているのでは」と考えたという。
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