
「マーケター・オブ・ザ・イヤー2022」の3人目は、売り上げ9割減という創刊以来の窮地に陥った老舗海外旅行ガイド「地球の歩き方」を事業譲渡で受け継ぎ、コロナ時代にマッチした新企画で復活させた地球の歩き方(東京・品川)社長の新井邦弘氏。海外旅行が難しい時代に、読者のニーズをどのように読み解いたのか。
事業譲渡後、1年9カ月で85冊というハイペースで新刊発売
「地球の歩き方」は1979年にダイヤモンド・ビッグ社が創刊した海外旅行向けガイドブックで、海外版シリーズ約120タイトル、約160の国と地域の書籍を発行。だが、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外旅行が難しい状況になり、売り上げは9割減となっていた。
そんな中、同書を発行するダイヤモンド・ビッグ社が20年11月、学研プラスと事業譲渡契約を締結。21年1月に新会社「地球の歩き方」が始動した。同社はその後、1年9カ月の間に85冊という驚異的なペースで新刊を発売し、ヒットを連発。22年9月現在、11種類のシリーズ(「地球の歩き方ガイドブック」「aruco」「旅の図鑑」「旅の名言&絶景」「Resort Style」「Plat」「国内版ガイドブック」「島旅」「御朱印」「旅の読み物」「ランキング」)約330タイトル(単行本の紀行書は除く)を発行している。
いわば瀕死(ひんし)の状態で引き継いだ「地球の歩き方」を、どのようによみがえらせたのか。そのキーパーソンが、社長の新井邦弘氏だ。
何かをガラッと変えるという発想は、最初は全くなかった
新井氏は学生時代にバックパッカーとして世界各国を放浪。帰国後、学習研究社(現・学研ホールディングス)に入社し、月刊ミステリーマガジン「ムー」編集部に所属。その後、「歴史群像」編集長を経て事業室長に。事業譲渡に伴って設立される新会社の社長就任を打診されたときは、学研ホールディングスのグローバル戦略室長をしていた。
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