マーケター・オブ・ザ・イヤー2022 第2回

「マーケター・オブ・ザ・イヤー2022」の1人目は発売から1年以上がたった今もなお品薄状態が続く口紅「KATE(ケイト) リップモンスター」を担当した花王の岩田有弘ブランドマネジャーだ。マスク生活が続く中、他人に見せる機会が大幅に減った唇を彩る商品をヒットさせたのは「マスクをするからって口紅をしないなんてありえない」という信念だった。「口紅は売れない」といわれる中でヒットしたリップ界の怪物には、数々の仕掛けがちりばめられている。

花王 化粧品事業部門 マステージビジネスグループ KATEブランドマネジャーの岩田有弘氏。1978年、岐阜県生まれ。2001年カネボウ化粧品入社。営業やKATEの商品開発、マーケティング戦略企画などを経て19年から現職。「誰もしたことがない、新しいことに取り組む。やらずに後悔するならやって後悔する」がモットー。2児の父でもあり、週末は子供と公園へ行ったり、ゲーム、時にはガンプラを作ったりして過ごすのが趣味
花王 化粧品事業部門 マステージビジネスグループ KATEブランドマネジャーの岩田有弘氏。1978年、岐阜県生まれ。2001年カネボウ化粧品入社。営業やKATEの商品開発、マーケティング戦略企画などを経て19年から現職。「誰もしたことがない、新しいことに取り組む。やらずに後悔するならやって後悔する」がモットー。2児の父でもあり、週末は子供と公園へ行ったり、ゲーム、時にはガンプラを作ったりして過ごすのが趣味
「KATE(ケイト) リップモンスター」は参考小売価格税別1400円。14色あり、多くの店舗で入荷待ちの状態が続く
「KATE(ケイト) リップモンスター」は参考小売価格1400円(税別)。14色あり、多くの店舗で入荷待ちの状態が続く

 都内のドラッグストア。化粧品がずらりと並ぶ中、いまだに品切れが目立つ棚がある。2021年5月に発売したケイトの口紅、リップモンスターの売り場だ。

 発売直後の「瞬間風速」ともいえる週間シェアは5割超。まさにモンスター級のヒットだ。マスク生活中の発売にもかかわらず、累計出荷本数は470万本を突破(22年8月末時点)。21年には百貨店を除く口紅市場で、初のシェア1位を獲得した。花王は供給体制の強化を続けているが、発売から1年以上たった今も需要に追いつかない。その入手困難さからSNS(交流サイト)では「幻のリップ」の異名をとる。

 リップモンスターの企画が始まったのは20年。新型コロナウイルスの感染が広がり始めたころだった。自粛要請で外出する機会自体が減ったほか、せっかく口紅をつけたところで外では口元がマスクで隠れる時間が大半を占める。「これからマスク生活が続く中、口紅を増やして大丈夫なのか」「コロナ禍にリップは求められていないのでは」。社内では口紅の新商品投入を不安視する声が高まった。

 そもそも口紅はブランド誕生から25年が経過したケイトで、かねて弱いといわれてきたジャンルだ。資生堂の「マキアージュ」などがシェアで先行しており、アイシャドーやアイブローなど目元のメークを強みとしてきたケイトは後じんを拝していた。

「マスクをするからって口紅をしないなんてありえない」

 社内の消極ムードを打ち破ったのは岩田氏が率いるチームの「マスクをするからって口紅をしないなんてありえない」との確信だった。調査など定量データがあるわけではなかったが、「口紅をしないと顔が完成しない」「マスクを外す一瞬でも顔がかわいくないと嫌」という女性は少なくないと直感があった。

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