
長年、インクルーシブデザインの研究を続けてきたジュリア・カセム氏と、2022年4月にインクルーシブブランド「IKOU」を立ち上げた松本友理氏。異なる立場の両者が、インクルーシブデザインの現状や課題について話した。
京都工芸繊維大学
KYOTO Design Lab特命教授(インクルーシブ・デザイン)
Halu代表取締役
ジュリア・カセム氏(以下、カセム) 1971年に日本にやってきて、東京芸術大学大学院で彫刻を学んだ後、84年から英字新聞「The Japan Times」のアートコラムニストをしていました。当時の日本は好景気で、美術館ブーム。立派な建物が次々と建設される一方で、アートの知識がない人々が心理的に排除されていると感じていました。さらに排除されていたのが障がい者たち。そこで、一般の人々も視覚障がいの人々も楽しめる美術展を企画しました。エクストリームユーザーである視覚障がい者の視点を取り入れ、多くのユーザーに新たな体験を提供できたことが、インクルーシブデザインに取り組むきっかけになりました。
松本友理氏(以下、松本) 2022年4月に「IKOU」を立ち上げました。身体的にチャレンジを抱える子供たちを深く洞察し、より多くの子供たちに価値をもたらすプロダクトを作っています。
カセム なぜIKOUを始めようと思ったのでしょうか。
松本 起業してものづくりをしようと決めたのは、前職で商品開発をしていたことと、脳性まひを抱える息子との暮らしがきっかけです。既存の福祉機器の多くは機能に特化しており、ユーザーの気持ちが置き去りになっている。そこで、ユーザーの気持ちに寄り添いながら、さらに障がい児だけでなく、一般の子供たちも価値を感じられる商品開発をしようと、考えを発展させていきました。
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