顧客がSNSなどに投稿した画像や動画は「UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ=ユーザー生成コンテンツ)」と呼ばれる。いわゆる口コミの一種だが、これを投稿者の許諾を得た上で、マーケティング活動に取り入れる企業が増えている。そのUGC活用の新しいトレンドとして、効果測定をしながら、より優れたUGCを活用する「運用型UGC」という概念が登場した。第1回はUGCの歴史を振り返りながら、運用型UGCの概念を理解しよう。

(写真/Shutterstock)
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 UGCのマーケティング活用は2014年ごろから米国で加速を始め、日本では16年ごろより先進的な企業が取り入れ始めた。その大きなきっかけは「広告でモノが売れにくい問題」である。デジタル広告が普及し、広告が増え続ける中、消費者の広告慣れが進んだ。また、時には見るだけで不快になるようなクリエイティブが批判にさらされ炎上することもあり、広告への信頼は徐々に低下していった。

 広告の信用低下と反比例するかのように、購買の意思決定に使われるようになったのが口コミだ。SNSの普及と共に生活者同士の情報共有がしやすくなり、その傾向は加速した。ニールセンデジタルが19年に発表した調査では、17年から19年にかけてUGCが購買に与える影響力は約1.5倍に高まっている。

 そのような変化の中、意図的にUGCを生み出そうとインフルエンサーの活用や、マイクロインフルエンサーのような影響力のある消費者に商品を提供して、UGCの投稿加速につなげる動きが活発化した。しかし、これは「ステルスマーケティング」問題を引き起こす一因にもなった。そのような企業主導でSNSやインフルエンサーをマーケティングに活用する場合、消費者に誤解を与えぬよう、広告であることを明示することを前提とすべきだという認識が業界を超えて広がった。

UGCのマーケティング活用が高度化

 19年ごろになると、UGCをECサイトや広告の誘導先のLP(ランディングページ)に掲載したり、広告クリエイティブとして採用したりする活用法が広がり始めた。従来は、企業の販促活動の一環として、ECサイトやLPに、アンケートやコールセンターなどで取得した顧客の声をコンテンツとして掲載するのが、顧客の声を活用したマーケティング手法の主流だった。それをSNS上にあるUGCで代替する動きが広がり始めたのだ。

 UGCを広告に活用する場合、配信先としてSNSは特に相性が良い。SNSでは、いかにも「広告」というクリエイティブよりも、フィードやタイムラインに自然になじむクリエイティブのほうが効果が出やすい。そうした自然な広告クリエイティブに活用できる素材の1つとして、顧客のUGCを採用する企業が増えつつある。

 こうした取り組みは、定量的に効果測定ができるためより活用しやすい。ECサイトやLPであれば、UGCの表示有無でABテストをすることで、UGCが購入にどれぐらい影響を与えたかを計測できる。広告クリエイティブであれば、従来の広告クリエイティブとCPA(顧客獲得単価)で比較すれば有効性を判断できる。

 男性向け化粧品ブランドを製造販売するバルクオム(東京・港)は、UGCの活用によりSNS広告経由でのCPAが3分の1まで低下した。ファンケルグループの通販会社アテニア(横浜市)はLPに訪れた訪問者のうち、購入に至るCVR(コンバージョン率)が1ポイント向上した。このように成果を定量的に可視化しやすくなったことで、効果を実感した企業の間で活用が進む。競争激化で広告費が高騰し、費用対効果が悪化しやすい市況において、特にECサイト業界においてUGCの活用は必要不可欠な施策となった。

 そして、22年に入り、UGC活用は次のステージに移行し始めた。それが「運用型UGC」という概念の登場だ。

 デジタル広告は効果測定をしながら、クリエイティブや配信対象を最適化する「運用」が肝になる。だが、競争の激化によって、改善の限界が見え始めている。当社が支援する企業のSNS広告の出稿実績を見ると、19年から21年までの3年でCPM(広告表示回数1000回当たりの料金)は約1.6倍に上昇した。また、サード・パーティー・クッキー規制によるターゲティング精度の低下や、媒体のルールや法改正などによってクリエイティブの表現にも制約がかかり、デジタル広告の獲得効率の悪化は業界の深刻な課題となっている。

アライドアーキテクツがマーケティングを支援する企業3社の出稿実績を基に、SNS広告のCPM(広告表示回数1000回当たりの料金)の推移をグラフ化。年々、広告費が上昇していることが分かる
アライドアーキテクツがマーケティングを支援する企業3社の出稿実績を基に、SNS広告のCPM(広告表示回数1000回当たりの料金)の推移をグラフ化。年々、広告費が上昇していることが分かる

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