文系マーケターのための統計入門 第4回

文系マーケターやマーケティングに興味のあるビジネスパーソンが、“これだけは知っておきたい”基本的な統計用語を解説する本特集。今回のテーマは「仮説検定」と「p値」。検定とはどんな手法か、p値が示すものは何か、なぜマーケティング関連の論文で頻繁に登場するのか、どのように使うのかなどについて、法政大学経営学部の西川英彦教授による“超初心者レベル”の講義で学ぶ。

今回のテーマは「仮説検定」。データから導き出した仮説が正しいかどうか検証するための統計的手法だ ※画像はイメージ(画像提供:dizain/Shutterstock.com)
今回のテーマは「仮説検定」。「仮説」は英語で「HYPOTHESIS」。データから導き出した仮説が正しいかどうか検証するための統計的手法だ ※画像はイメージ(画像提供:dizain/Shutterstock.com)

立てた仮説を検証する“優れモノ”の統計手法

――前回、西川先生から「覚悟しておくように」と言われたので楽しみにしていました。今回のテーマは「仮説検定」です。

西川英彦教授(以下、西川) 正式名称は「仮説検定」あるいは「統計的仮説検定」ですが、略して「検定」と呼ぶことも多いですね。それくらいマーケティング分析において、一般的な統計的手法といえるでしょう。この仮説検定には「χ2(カイ二乗)検定」「t検定」「F検定」など、さまざまなタイプがあります。

――「検定」と言われても、思いつくのは漢字検定や英語検定くらいです。回帰分析や因子分析など、何かを「分析」するのはまだイメージしやすいですが、統計学の検定とは、いったい何をしているのでしょうか。

西川 仮説検定は、実務や研究課題を解決するために立てた仮説を、調査や実験のデータを用いて「検証する」ための統計的手法です。

――つまり、自分が立てた「仮説の正しさを証明する」ために使うのですね。

西川 一般の人はそう思うでしょう。しかし、「正しさを証明する」という言葉はここでは使えません。先ほどと別の言い方で説明するなら、「調査や実験の結果のデータを確率的に検証して、立てた仮説が支持されること」を目的として行うのが仮説検定です。

  • 仮説検定は「実務や研究課題を解決するために立てた仮説が支持されるか」を、調査や実験のデータを用いて確率的に検証する統計的手法

――「確率的に検証」ということは、何かの確率を計算するわけですね。

西川 「仮説の正しさが証明された」と言えば「仮説は100%正しい」という意味になります。しかし、検定は確率を使った統計的手法なので「正しい確率が高い」とは言えても「100%正しい」と断定できません。ですから「仮説が支持された」としか言えないのです。

――100%ではないから「仮説の正しさが証明された」とは言えない。少し回りくどいですが「実験すると、立てた仮説が正しいとする確率がすごく高かった。従って、この仮説は“ほぼ正しい”と考えられる」という意味で、「支持された」となるわけですね。

西川 惜しい。

――惜しい?

西川 統計的な手法では、直接的に「その仮説が正しい確率は非常に高い」と検証するのがとても難しいのです。

――ええっ? どうして、そんなに難しいのですか。

西川 例えば、ある商品のパッケージをリニューアルした際に、「デザイン変更の効果があった」と言っていいのかと考えていたとします。そこで、変更前後のデザインには、人気の差があるのか、ないのかを調べることにしました。その場合、仮説はどう立てますか。

――「変更前後のデザインには、人気の差がある」でしょうか。

西川 そうなりますね。しかし、繰り返しになりますが、その仮説の正しさを直接的に検証するのは非常に難しい。

――なぜですか。

西川 一口に「差がある」と言っても、「非常に大きな差がある」から「ごくわずかな差がある」まで、同じ「差がある」でも程度は無限にあります。

――確かにそうですね。

西川 そうなると、もし「差がある」ことを直接的に検証しようとすれば、差の大きさの違いに合わせて、1つひとつを裏付けるために、無数の例を集めなければならないことになります。

――それは現実的には無理ですね……。

西川 では、逆ならどうですか。

――逆?

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