
従来版のサービス停止まで1年。アクセス解析ツールの最新版「Googleアナリティクス 4(以下、GA4)」をどう使いこなすか。本誌連載「続・マーケティングDXの落とし穴」ででもおなじみ、マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)支援のWACUL(ワカル)で代表取締役に就任した垣内勇威氏が、誤ったGA4の導入方法と使い方を一刀両断する。
やみくもなDXツールの導入は自己満足に陥りやすく、売り上げやLTV(顧客生涯価値)という目的に結びつかない――。誤ったマーケティングDXに対し、本誌連載で警鐘を鳴らしてきた垣内氏。広く浸透したDXツールの代表格といえば「Googleアナリティクス(以下、GA)」である。従来版の「ユニバーサルアナリティクス(以下、UA)」が2023年7月でサービスが停止となるため、多くの企業が新版のGA4への乗り換えを急いでいる。垣内氏の目にGA4はどう映っているのか。
「セッション(ページ)単位ではなく、ユーザー単位で分析するという思想がいい」。垣内氏にGA4の第一印象を聞くと、いつもの辛口評価ではなく、称賛の言葉が飛び出した。ユーザー単位の計測は「デジタルのポテンシャルを引き出すという点で素晴らしい」のだという。
ページ単位では、どうしてもランディングページの訪問数、直帰率といった単純なアクセス値の増減に一喜一憂してしまいがちだった。Webページの中でどんな行動を取ったのか、というユーザー単位の計測ができればKPI(重要業績評価指標)に直結する数値を参照しやすくなる。この変化の方向性は「必然だし、重要だ」と垣内氏は評価する。
GAがグーグル広告活用の窓口に
「ただ、ここからが問題だ」。リップサービスは終わり、とばかりに同氏の目が鋭くなる。「GA4ではユーザー単位で分析できるようになったことでデータ量が飛躍的に多くなる。人間が使いこなすうえでは、もはや判別が難しい」(垣内氏)
最新版のGA4ではデータ分析の専門家でも使い切れないほど高機能化し、細部の詳細なデータが取得できるようになった。だからこそ「これは基本的にAI(人工知能)が使うものだと考えた方がいい」のだという。
確かに、GA4ではAI機能を強化しており、機械学習で異常値などを報告してくれるようになった。こうしたGA4の機能強化の背景にはクッキー規制の広がりがあると、垣内氏は話す。
少し詳しく説明しよう。米グーグルは将来、世界で広がるプライバシー保護の動きに合わせ、Webブラウザー「Chrome」で“脱サード・パーティー・クッキー”を進める方針を示している。その時期については、24年後半に延期すると発表したが、いずれはクッキーの制限に踏み込まざるを得ない。
今後はサード・パーティー・クッキーを使ったターゲティング広告ではなく、それぞれの企業が、自ら持つファースト・パーティー・データを活用することで顧客とのつながりを生みだしていく必要がある。
そんな中、ネット広告の覇者として君臨してきたグーグルも、手をこまねいて見ているわけにはいかない。来るべき脱クッキー時代に向け、企業が持つ顧客データを活用し、グーグルの広告へと流入させる窓口となり得るのが、他でもないGoogleアナリティクスと見なすことができる。
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