猶予は1年 「GA4」への乗り換え術 第2回

Webサイト解析ツール「Googleアナリティクス」の従来版が2023年7月にサービス停止する。最新版「GA4」への乗り換えを早急に進める必要があることは間違いないが、実際の作業を進める上では何に気を付けるべきなのか。既にGA4を導入したクレディセゾンの事例を踏まえ、失敗を防ぐための心得を紹介していく。

クレディセゾンは、ECサイト「STOREE SAISON(ストーリー セゾン)」で「Google アナリティクス 4(以下、GA4)」の先行導入を進めた
クレディセゾンは、ECサイト「STOREE SAISON(ストーリー セゾン)」で「Google アナリティクス 4(以下、GA4)」の先行導入を進めた

 米グーグルは2022年4月、従来版「ユニバーサルアナリティクス(以下、UA)」を23年7月に停止すると発表した。クレディセゾンはその発表と同時期に、「Google アナリティクス 4(以下、GA4)」への対応を開始した。まず先行導入したのは、同社カードの「永久不滅ポイント」でアイテムを購入できるECサイト「STOREE SAISON(ストーリー セゾン)」。同サイトでは19年の開設以来、UAでアクセス解析をしてきた。

 今後しばらくはUAを併用しつつ、GA4の検証を進める。「サービスの実績を取りまとめる節目となる決算期に合わせ、23年4月からGA4を実稼働する」と、同社カスタマーサクセス事業部デジタルサービス部の本多孝匡氏は話す。

クレディセゾンのGA4導入スケジュール。年度の切り替えに合わせて23年4月からGA4の実稼働を予定する
クレディセゾンのGA4導入スケジュール。年度の切り替えに合わせて23年4月からGA4の実稼働を予定する

 UAとGA4では、データの取得方法が変化しており、従来と同じ指標を比較しようと思っても数値にずれが生じることが多い。「基本的には数値が少なくなる傾向がある」と本多氏は指摘する。第1回で紹介したように、UAではページ単位(ユーザーのセッションベース)で大半のデータを取得するが、GA4では「ユーザーの行動」ペースでの計測へと切り替わった。

 例えば、同じユーザーがスマホとパソコンでWebサイトへアクセスした場合、UA上ではそれぞれが別ユーザーとしてカウントされる。場合によっては、若干水増しされた状態となっていたというわけだ。GA4では同じユーザーがアクセスしたと計測される。こうした数値の変化を踏まえて検証し、目標をどう管理していくか。クレディセゾンでは、そうした検証を23年4月の本格導入まで進めていく考えだ。

GA4では数値が少なくなる傾向

 クレディセゾンのGA4導入プロセスをもう少し細かく見ていこう。22年4月に開始した準備段階では、まずどんなデータを分析するかという「取得要件」の議論から入った。これまでUAで測定する中で、重視してきたデータは主に2つ。1つは「セッション訪問ベースでの購入完了ページ到達数」。セッションとは、1人のユーザーが一定時間内で途切れずに利用するなどの条件でアクセスした数のこと。1万セッションの中で、購入完了ページに到達したセッションが100だった場合、CVR(コンバージョン率)が1%になる。

 もう1つは「カート単位で見たCVR」。ユーザーによっては1回のセッションで2カート分購入することもある。1万セッションの中で150カートに商品が入った場合、カート単位で見たCVRは1.5%となる。このほかに、約20種類のデータを使って分析してきた。

1回のセッションで複数回カートに入れた場合を考慮する「カート単位のCVR」も計測している
1回のセッションで複数回カートに入れた場合を考慮する「カート単位のCVR」も計測している

 GA4の新機能やデータの取得方法などの変化を踏まえ、社内で議論を重ねた。サイトの開始時期が3年前と比較的最近であったこと、定期的にデータの取得要件の見直しをしてきたこともあり、結局は従来とほぼ同様のデータをGA4上でも計測していくことになったという。日ごろの管理のおかげで、その部分に大幅な変更を加える手間は削減できたというわけだ。

 UA上では、購入商品やカートの動作に関するデータを高度に可視化できる「拡張eコマース」という機能を活用してきた。その上で、ページ読み込み以外のユーザーの行動を計測するための「イベント」を設定し、スクロールの度合いやバナーのクリックなどを計測していた。「GA4ではほとんどの指標を『イベント』で取得するようになった。この点では、以前からイベントの設定に慣れていたので違和感はなかった」(本多氏)

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