2007年にオープンしたECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム。商品の販売だけでなく、メルマガやSNS、動画配信サービス、さらには自社アプリなどを通じて、テキスト、音声、映像と多様なコンテンツを展開し、生活者とつながってきた。熱量の高いファンも多く、愛されるブランドだ。本連載では、同社がなぜ愛されるのか、その背景を探りながら、これからのブランドやマーケティングの在り方に迫っていく。第1回から第3回までは、ブランドの根幹となるミッション・ビジョン・バリューと、今ムーブメントになりつつあるパーパス経営について、代表取締役社長の青木耕平氏に聞く。

多くのファンとつながる「北欧、暮らしの道具店」。運営するクラシコム代表の青木耕平氏に、経営やマーケティングの軸となっている同社の「ミッション・ビジョン・バリュー」が生まれた理由と経緯を聞いた
多くのファンとつながる「北欧、暮らしの道具店」。運営するクラシコム代表の青木耕平氏に、経営やマーケティングの軸となっている同社の「ミッション・ビジョン・バリュー」が生まれた理由と経緯を聞いた

 クラシコムが展開する「北欧、暮らしの道具店」は、一見すると北欧雑貨などを扱うECサイトだ。だが、多種多様なチャネルに独自コンテンツを配信する、コンテンツメーカーとしての強さと消費者との直接のつながりが、ビジネスを支えている。

ECサイトでありながら、オリジナルドラマまで制作するのが斬新だ。上の動画は、2022年4月に公開した4作目のオリジナルドラマ「庭には二羽」の前編

 LINEは75万フォロワーを抱え、Instagramも122万フォロワーの規模を有する。さらに、YouTubeチャンネルには52万人が登録し、ポッドキャストも累計1000万再生を誇る。2019年に配信をスタートした公式アプリも既に200万ダウンロードを突破(全て22年5月時点の数字)。テキストだけでなく、音声、そして映像まで、そのカバー範囲は極めて広い。

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 コンテンツに接し、同社の世界観に触れ、そして商品を購入し、継続的につながるファンとなっていく――。このサイクルこそ、「北欧、暮らしの道具店」の強さだ。22年8月5日にクラシコムは東京証券取引所のグロース市場に上場予定だが、上場に関する資料にはまさにこの強さを証明する数字が並ぶ。21年7月期の売上高は45.3億円、営業利益は7.8億円を実績としており、営業利益率は何と17%に達する。D2C分野では、定価消化率99.5%(21年7月期実績)と安売りをしないのはもちろん、大々的な広告を打たず、コンテンツ制作や直接のコミュニケーションに集中する。その仕組みがうまく回っているからこその、営業利益率の高さといえる。

 ただ、コンテンツを接点として、世界観をつくることは決して簡単なことではない。クラシコムがそれを実現できているのは、強固なミッション・ビジョン・バリューがあるからだ。

青木氏が起業した理由とは ミッションが生まれたわけ

 同社が掲げるミッションは、「フィットする暮らし、つくろう。」。そしてビジョンは、「自由・平和・希望」。バリューは、「センシティブ・チャーミング・オルタナティブ」だ。詳細を見ていく前に、なぜこのミッションが生まれたのか、そこから追っていきたい。

 青木氏は、不動産を扱うIT企業を立ち上げるなど、起業家として歩んできた。そんな中、07年に北欧のビンテージアイテムを販売するECショップ「北欧、暮らしの道具店」を実の妹である佐藤友子氏と開業。「そもそも自分が起業した根本的な動機付けは、シンプルに幸せになりたかっただけ」と話す青木氏。世の中にある選択肢と自分の持っているカードをマッチングさせても、幸せに生きていけそうな場を見つけることが難しいと判断し、起業を選択したのだという。

クラシコムは、青木耕平氏と実の妹である佐藤友子氏が2人で創業。現在は青木氏が代表、佐藤氏が取締役兼「北欧、暮らしの道具店」店長を務める
クラシコムは、青木耕平氏と実の妹である佐藤友子氏が2人で創業。現在は青木氏が代表、佐藤氏が取締役兼「北欧、暮らしの道具店」店長を務める

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