宝の山! 顧客データのマーケ活用術 第5回

2018年からCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の運用を開始したパナソニック。自社の顧客データを統合するだけでなく、複数の事業者間でデータを連携し顧客分析を進めてきた。ところが、「クッキー規制」の本格化により、データ活用の方針転換と自社データの深掘りが急務となった。パナソニックはどう変わろうとしているのか。

約800万人の家電購入者が登録する「クラブパナソニック」のサイト画面
約800万人の家電購入者が登録する「クラブパナソニック」のサイト画面

 パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部がCDPの導入を検討し始めたのは2017年だ。準備期間を経て翌18年にはトレジャーデータ(東京・港)によるCDPの本格運用をスタートした。

 目的は2つ。商品紹介サイト「パナソニック.JP」、ECサイト「パナソニックストア」、家電購入者の会員組織「クラブパナソニック」、お客様相談窓口やカスタマーサポートのFAQのサイト──。これら複数サイトでの顧客の回遊状況を把握し、顧客理解を深めること。そして、サイト上でのさまざまな行動データを分析して、デジタル広告の運用などのマーケティング施策に生かすことだ。

 こうした目的を果たすために取り組んだのが「態度変容スコアリング」だ。サイトや広告などに接する顧客一人ひとりが見ていたコンテンツを分析し、どの商品の何にどの程度興味関心を持っているかをスコア化した。だが、メーカーは小売り側の購買データを持てないため、自社のサイト内のデータだけでは、どんなきっかけでアクセスしたかなど、カスタマージャーニーの全体像を把握しにくい。ここで解析の役に立ったのが、外部企業との連携で取得する「サード・パーティー・データ」の活用だった。

 18、19年はまだ、サード・パーティー・クッキーを活用する機運が、旺盛だった時期だ。

 「当時はクッキーのマーケティング利用についてあまり考慮する必要がなかった。例えば、化粧品会社や地図情報を持つ企業など、多数のナショナルブランドが集まってサード・パーティー・データをつなぎ、お客様理解を深めるためのデータコンソーシアムのような構想が立ち上がっていた」(パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部エンゲージメントセンターの富岡広通氏)。

 事業会社同士のデータ連携により、「生活品購入者と家電購入者の相関」や「ユーザーの週末の行動と家電の相関」など、自社だけでは得られない生活者のライフスタイルが見えてきたという。

 サード・パーティー・データを使い顧客IDを掘り下げていくと、家電を選ぶ際の顧客の心理までが浮き彫りになった。「家電のサイトを見るとき、お客様は決して旅行先を選ぶようなわくわく感を持っているわけではない。どちらかというと、なるべく検討する時間を短くし、手早くパフォーマンスのいい製品を選ぼうとしている。極端に言えば、生命保険を選ぶときのような心理」(富岡氏)。購買の背景にあるこうした心理は、機能や品番などが並ぶ自社データを分析するだけでは知り得ない。それをサード・パーティー・データから確認できたことは大きかった。顧客心理が分かればアプローチの仕方も見えてくる。

 だが、この「データコンソーシアム構想」に費やした1、2年について「結果的には“失敗”だった」と富岡氏は振り返る。20年1月に米グーグルが「Chrome」でサード・パーティー・クッキーのサポートを終了すると発表したことが“決定打”となり、クッキー規制の流れが本格化。個人情報保護の観点で法的、技術的な規制が強化され、それまで積み上げてきたものが、あまり意味を持たなくなってしまったからだ。

 自社が持ち得ない他社のデータを重要視していたパナソニックにとって、あらためて自社データの掘り下げが大きな課題となった。

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