宝の山! 顧客データのマーケ活用術 第6回

米ウォルマートなど、小売事業者が膨大な顧客IDと購買データを活用した広告配信のプラットフォームを展開し、新たな収益を手にしている。国内では地方ドラッグストアの雄、サッポロドラッグストアー(サツドラ、札幌市)も、2022年3月に店内のAI(人工知能)カメラを搭載したデジタルサイネージへの広告配信を始めた。その成果は?

デジタルサイネージを設置したサッポロドラッグストアーの店内
デジタルサイネージを設置したサッポロドラッグストアーの店内

 店舗の入り口やエンド(陳列棚の両端)など、売り場の目立つ場所に設置され、派手な動画クリエーティブで来店客の耳目を引き付けているデジタルサイネージ。多くのリアル店舗で導入されているが、これが今、小売事業者が保有する膨大な顧客IDを軸とした購買データと広告モデルの掛け合わせにより、新たな収益源としての価値を高めている。

 北海道を中心に約200店舗を展開するサッポロドラッグストアーも、そんな広告事業に取り組み始めた1社だ。同社は、ネット広告大手のサイバーエージェントやAIカメラの技術を持つAWL(アウル、東京・千代田)と組み、2020年3月から実証実験を繰り返してきた。そこでPDCA(計画・実行・評価・改善)を回し、ある程度の精度を担保できたことから、22年3月にデジタルサイネージで取引先メーカーの商品を訴求する広告プラン「Satudora InStore Ads」の提供を始めた。

 現在の対象店舗は20店。店舗の規模に応じてAIカメラ搭載デジタルサイネージを5~14台導入しており、最大で計167台に広告配信する仕組みを整えている。22年秋以降はさらに20~40店を追加する予定で、まずは「サービス開始から1年(23年3月末)で100ブランドの広告獲得が目標」(サッポロドラッグストアー商品部デジタルマーケティング推進担当の山本剛司氏)だ。

デジタルサイネージ上部にAIカメラを設置している
デジタルサイネージ上部にAIカメラを設置している

 Satudora InStore Adsの広告メニューは、1カ月の掲載期間で40万円からが基本プラン。配信期間や店舗数、表示回数によって異なるが、複数のプランを用意している。また、今後はAIカメラで計測した実視聴回数ベースでの広告プランも提供可能という。

 広告配信枠を取引先メーカーに販売したところ、22年6月末までの4カ月で26ブランドが出稿した。健康食品や飲料、ビールから洗剤、ヘアケアなどの日用品、医薬品メーカーまで幅広い。例えば、あるエナジードリンクの広告をサイネージに流したところ、「(広告なしの)普段より約1.5倍販売数を伸ばせた」(山本氏)といい、着々と成果を出している。その背景には、同社が収集する独自データがある。

サイネージ広告で見えた3つのポイントとは?

 まず大きいのが、サツドラはAIカメラの活用により、顧客の店内行動の理解を深めてきたことだ。同社は20年6月に開店した北8条店(札幌市)を先端店舗として84台のAIカメラと41台のデジタルサイネージを設置するなど、AIカメラの導入を進めてきた。

 これにより、各店舗の来店客数や性別、推定年齢、どの売り場でどれだけ滞在し、どの商品を手に取ったかなど、独自の店内行動データを個人が識別できない形で収集。これらのデータとID-POS(販売時点情報管理)などの購買情報との相関を分析してきた。

 この結果をサイネージの広告運用にも生かしている。まず広告を出稿する商品を買ってくれそうな顧客が多く来店している時間帯を大まかに割り出す。ビールでいえば、午前中よりも夕方以降、ベビー用品なら子連れ客の多い時間帯といった具合だ。これを基に全時間帯で一定数配信されている広告の配分を調整し、さらに実際どんな人にどれだけ見られているかをサイネージに搭載したAIカメラで測定。より見込み客の視聴数が多い時間帯を細かく絞り込み、対象となる広告の表示回数を増やしている。

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