
日本で書店が減り続けている。紙の出版市場の縮小に加え、大きな要因の一つが、需要と供給のミスマッチによって高止まりになっている返品率だ。この課題に対し、AI(人工知能)を使って自社が持つ膨大な会員データと書籍の販売データなどをマッチングさせ、店舗ごとの最適化に取り組むのが、「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、東京・渋谷)だ。果たしてどんな仕組みか。
国内の書店は2000年前後のピーク時には約2万店あったが、この20年で半減し、今では約1万店になっている。CCCの調べによると、全国の403の自治体が「書店のない街」になってしまっているのが現状だ。
書店が急速に減っているのには理由がある。まず、紙の出版市場が1996年の約2.6兆円をピークに減り続け、直近の2021年は約1.2兆円と半分以下になっていることだ。書店は売り上げも利益も下がり、立ち行かなくなり閉店するケースが後を絶たない。さらに、書店がもうからない要因となっているのが、需要と供給のミスマッチによる販売の機会損失だ。それが返品率の高さに表れている。出版社から書店への送本は約2兆円あるが、返品率は約40%に上り、金額にして約8000億円分が返本されている。
つまり、約4割が需要に合わず、書店の店頭で置かれるだけになっているということである。それがもし、エリアごとに異なる来店客の需要を満たし、過不足のない供給によって返品率を下げることができれば、書店はまだまだもうかる商売に変えることができるはずだ。
ただし、それを人間の手でやることは至難の業、いや不可能に近い。そこで、CCCは19年から、店舗ごとに需給のマッチングを図るシステムを2つ開発し、運用してきた。それが「TBNオリジナルAI」と「クラスタリング発注」だ。「いずれも業界の課題である無駄を改善して、粗利率を上げ、もうかる書店の実現を目指すもの」と、開発プロジェクトの責任者である、CCC執行役員兼BOOKSTORE Company社長の鎌浦慎一郎氏は話す。それぞれどういったシステムなのだろうか。
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