宝の山! 顧客データのマーケ活用術 第4回

人材サービスのディップは、「バイトル」など複数の自社サイトやアプリで集まる膨大な顧客の行動データを活用してサービス改善を続けてきた。新型コロナウイルス禍で求人市場が振るわない中でも、直近4年間で求人への応募率を約1.5倍に引き上げた。成功の秘訣とは?

ディップが展開するアルバイト求人サイトの「バイトル」
ディップが展開するアルバイト求人サイトの「バイトル」
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 リクルートホールディングスを筆頭に、パーソルホールディングス、パソナグループが群雄割拠する国内総合人材サービス業界。その中で、ディップはアルバイト求人の「バイトル」、正社員・契約社員の転職求人「バイトルNEXT」、正社員・派遣・パートの総合求人「はたらこねっと」、看護師求人の「ナースではたらこ」といった複数の媒体を展開し、さまざまな属性のユーザーを抱える。

 ところが、せっかく潤沢な顧客データが手元にあったにもかかわらず、以前は十分に生かし切れていなかったという。同社メディア編集部部長の山下ロルミス氏は、「以前利用していた無料の計測ツールでは一定以上のデータが集まると自動的にサマライズされ、生データによる分析が難しかった」と課題を話す。さらに、A/Bテストの検証ツールとデータの定義が異なっていたため、加工の手間がかかるうえ、検証結果の信頼性も乏しかったという。

 そこで同社はツールの乗り換えを検討、最終的に選んだのが、アドビの「Adobe Analytics」と「Adobe Target」だった。前者は複数のデジタル上の顧客接点データを分析、可視化、予測し、後者はWebサイトやアプリなど多数のチャネルをまたいでA/Bテストやパーソナライゼーションを実行したり、AI(人工知能)による大規模な自動化を行ったりできる。

 これによりデータ分析やA/Bテストの精度が上がり、サービスの改善サイクルを回し続けるベースが整った。また、Webサイトとアプリはデータが分断されていたが、Webサイト利用時にアプリがディープリンクで起動する仕組みなどを入れ、チャネル横断でユーザーの行動を把握できるようにした。

 「例えば、移動中にサイトやアプリで求人情報を見て、目的地に着いたタイミングでいったん閉じる人は多い。その後、検索を再開した際に情報を引き継いでおくと、離脱率がぐんと減った。サイトでもアプリでも『同じ人』と認識できるようになったことで、仕事の探し初めから終わりまで個々のユーザーがどんな動きをしているのか、解像度が上がったことが大きい」(山下氏)

データだけでは見えない「生の声」が重要

 こうした複数チャネル間のデータ連携により、ユーザーの行動がより鮮明になったことで主にメールマガジンを用いたCRM(顧客関係管理)の精度も上がった。求職活動は人によってタイミングが異なる。アルバイトなら、長期のバイトだけを探している人、短期のバイトだけを探している人、長期の合間に短期のバイトを重ねる人など、いくつかのパターンに分かれる。また、ディップの調査では37%が3カ月未満、66%が1年未満に離職しており、そこで再び仕事探しをするタイミングが訪れるという。

 こうした調査と実際のサイトやアプリの閲覧履歴や検索行動から推測し、例えば一度職探しが終わり、再開すると思われるタイミングを見計らってメールを出す。また、応募フォームまでたどり着いたものの入力が完了していない人には、ECサイトの「カート落ち」と同じようにリマインドをかける。「ユーザーの行動に応じて複数のトリガーを用意しており、最適なタイミングでメルマガを配信することで応募率は2倍改善できている」(山下氏)

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