※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成
日経エンタテインメント!の「タレントパワーランキング2022」で急上昇7位に入ったのは、俳優、アーティストとしてドラマ、映画、舞台、音楽活動などマルチな才能を発揮している松下洸平だ。2019年後期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』で演じた十代田八郎役でブレイク。以降、俳優、アーティストとしてドラマ、映画、舞台、音楽活動などマルチな才能を発揮している彼に、それぞれに賭ける思いを聞いた。
――2021年は『知ってるワイフ』『最愛』などテレビドラマ3本に出演し、映画『燃えよ剣』では斎藤一役で時代劇にも挑戦。夏にはシングル『つよがり』でアーティストとして再デビューを果たし、ライブツアーも敢行した。さらには、バラエティ番組『ぐるぐるナインティナイン』(日テレ系)内の人気コーナー「ゴチになります」にも1年間レギュラー出演し、俳優としてだけでなく優しくちょっと天然なパーソナルな魅力もお茶の間に浸透。認知度を大きく広げた。
今年に入ってからも精力的に活動を続けている。3~4月に上演の主演舞台、音楽劇『夜来香イエライシャンラプソディ』では、才気あふれる音楽家の服部良一役を熱演。現在はドラマ『やんごとなき一族』(フジ系)で、主人公・佐都の夫で、仕事もできて妻思いな大財閥の次男・深山健太を魅力的に演じている。快進撃を続ける松下に、まずはこの1年を振り返ってもらった。
多くの人の思いが詰まったものを作っている
いろいろなことに挑戦させていただいた1年でした。アーティストとして2度目のデビューができたというのも、自分の中で大きな出来事でした。
日々、目まぐるしく動いていくなかで、その忙しさに取り残されないように…と思いながら、メインキャストとして役をいただいたり、徐々に大きなライブ会場になっていったり…うれしい反面、プレッシャーを感じることも増えて。でも1つひとつの仕事と丁寧に向き合って、「いいものを作る」ために最優先しなきゃいけないことは何か。それをおろそかにしないためにはどうすればいいか。そんなことを考えて、動いていた気がします。
でも、僕1人でできることは1つもないので、悩んでいることやうまくいかないことを、素直に監督や共演者の方々と話し合うことで、僕1人の頭では凝り固まってしまうところをほぐしていただいて。積極的にコミュニケーションをとっていたように思います。
自分が携わっている作品はもちろん僕だけのものではなくて、関わるみんなのものであり、そして聴いて、見てくださる人のものでもあるという――本当に多くの人の思いが詰まったものを作っているんだな、ということを、この1年通して感じました。
「何かを表現する」というこの仕事が、やっぱり好きなんですよね(笑)。誰かと一緒にものを作れるこの状況は、僕が1番やりたかったことなので、たとえ忙しくてもかなっている今が奇跡のようなものというか。本当にすごく幸せです。
飛躍のポイントは『最愛』
――スコア上昇(下図)のきっかけとなったのは、昨年10月期放送のTBS系ドラマ『最愛』だ。新井順子プロデューサー×塚原あゆ子演出という『MIU404』なども手掛けたヒットメーカーによるこの作品。松下が演じた宮崎大輝の吉高由里子演じるヒロイン・真田梨央をひたむきに愛する姿は多くの女性の心をつかみ、SNSでは「#大ちゃん沼」という言葉が生まれ、世間をにぎわせた。
毎回、「この作品がたくさんの人に届けばいいな」という思いで挑んでいるのですが、演じる役が広がってほしいとかは実はあまり考えたことがなくて。『最愛』の宮崎大輝という役が回を重ねるごとにみなさんに愛していただけて、大輝が僕という人間よりも前を歩いてくれて、役が僕を引っ張ってくれました。『最愛』チーム、そして愛してくれたみなさんに、とても感謝してます。
現場では常に新井さんがドラマ全体を俯瞰して、そして塚原さんが作品を見る視聴者の目線で俯瞰してくれる。その上で俳優たちを動かしてくれるので、僕たちは、いただいたセリフを気持ちを込めて、あとはしゃべるだけ。塚原監督が、1つひとつのセリフに対して細かい気持ちの揺れや動き、下を向くか横を向くかで役の気持ちは表現できるということをディレクションのなかで教えてくださいました。映像でのお芝居のイロハを改めて学ばせていただいた現場でした。
――映像作品での活躍が目覚ましいが、芸能界へ入るきっかけとなった音楽活動の再開や、俳優デビューのきっかけとなった舞台へも熱く強い思いを口にする。
今自分が考えていることや感じていることを歌に乗せて届けたいという気持ちがどうしても諦めきれなくて…新たな気持ちで一からですが、再デビューという形で、音楽と向き合い表現する場をいただけたことに感謝しかありません。
舞台は、とても大切にしている仕事の1つです。芝居をゼロから学んだ場所なので、これからも立ち続けたいと思いますし、最近は映像にも出させていただいていますが、舞台での経験が生かされていると思う瞬間もあります。役から学ばせていただくことがいつも必ずあって、先月まで公演していた『夜来香ラプソディ』では、すごくエネルギッシュな服部良一さん像を演出の河原雅彦さんにオーダーされました。演じていくなかで、服部さんの音楽に対する熱や言葉、精神や考え方にとても感銘を受け、僕も音楽や芸術に携わる身の端くれなので、心に響くものがありました。
――9月30日には映画『アイ・アム まきもと』が公開。松下洸平という存在が広く知られ、活動が充実している今、これからをどう考えるのか。
芝居を初めてから、まだ10年ちょっとですが、基本的なスタンスや仕事に対する向き合い方は変わっていないと思います。いただいたお仕事を一生懸命、丁寧にやっていく――僕にはそれしかできないですから。ただ、まだ見ぬ自分に会うためにも常にアップデートしていきたいですよね。
今年35歳になったのですが、ありのままの自分は受け入れつつ、自分に足りていない部分も認めて、現状に満足せずに、仕事でもプライベートでも、どんな新しい自分に出会えるのか楽しみになるように頑張りたいと思います。
連続ドラマ『やんごとなき一族』は、本当に“やんごとなき”世界。でも、登場人物それぞれに抱えている悩みや苦しみ、葛藤が描かれていて、みなさんにも共通するものがある気がしています(※インタビューは5月)。僕が演じる健太も、意外と後先考えずに自分がしたいと思ったことをする頑固なタイプで、実は100点満点の男じゃない。健太も僕も100点が出せるように頑張っていかなきゃいけないと思います。