なぜ「TikTok売れ」は起こるのか。Z世代のアテンションを得て、TikTokでバズを生み出すには? まずは、Z世代の特徴を知ることが、効果的な運用のヒントになるかもしれない。動画広告配信サービスを提供するTikTok for Businessは、2022年12月に「Z世代白書2023」を発行した。この調査で判明したZ世代の消費行動の特徴を見ながら、今瀧健登氏とTikTok for Businessのハーマン・チャン氏が、彼ら彼女らへの効果的なアプローチ方法を考えていく。
「ほしい物が分からない」Z世代 選ぶのではなく出合いたい
僕と私と(東京・渋谷)代表・今瀧健登氏(以下、今瀧) 「TikTok売れ」という言葉もありますが、TikTokのコンテンツが消費行動につながっていると感じることはありますか。
TikTok for Business ブランドストラテジーマネージャー・ハーマン・チャン氏(以下、ハーマン) 特に美容、飲食、ホームケアのような、カスタマージャーニーが短い商材でTikTok売れが起きた事例がたくさんありました。そうした商材の他にも、例えばみんなの銀行というZ世代をメインターゲットとしたスマートフォン完結型のデジタル銀行サービスは、TikTokでクリエイターを活用した新規口座の開設を促すキャンペーンを展開し、視聴は100万回以上(2022年12月時点)、口座開設数が大幅に伸びたといいます。
このキャンペーンの成功には、Z世代の情報接触意識がかなり関係しているように思います。デジタルネーティブのZ世代は、幼少期から情報量も触れる商品の数も多く、たくさんの選択肢に囲まれています。その分、1つのコンテンツへの関心が薄れやすいというか、商品や情報に接触しても、ほしいという気持ちが生まれにくくなっていると思うんです。ただし、商品に需要がないわけではなく、ほしいと思ってもらうためには工夫が必要。特にコミュニケーションの中で重要なのは、「何を見せるか」「どのタイミングで見せるか」という2点です。
みんなの銀行の例では、銀行が動画のトンマナを用意するのではなく、Z世代が親近感を持つ複数のクリエイターを起用し、クリエイターたちのいつもの動画スタイルでサービスについて紹介してもらうやり方でした。先ほどの「何を見せるか」という観点で言うと、企業目線ではなくてクリエイターたちが自分たちの等身大の目線でお金への意識を語ることで共感されやすく、メリットが伝わりやすい。実際、動画のエンゲージメント率も高く、みんなの銀行側から仕掛けなくても視聴者がコメント欄でいろいろ議論したり、サービスの感想を言ったりしていて、活発なキャンペーンになりました。
TikTokはスワイプしていく中で、サービスの紹介が自然な形で目に入るため、広告コンテンツでも視聴体験の邪魔になりにくいプラットフォームです。また、レコメンドシステムで個々のユーザーの趣味嗜好を分析し、好きなコンテンツが表示されるようにしています。
実は、それだけではありません。TikTokでは、あえてユーザーが興味を示している内容と離れたコンテンツもお勧めするようにしています。これはユーザーの趣味嗜好を広げていくため。フォローベースの他プラットフォームでは得られない意外な発見があり、ユーザーの潜在意識が喚起され、そこから新たな興味につながっていく。TikTok売れという現象も、そういう形で生まれた事例がたくさんあると思います。
またユーザーは、これまでに見ていたコンテンツとは違う系統のものも流れてくる前提で、マインドセットがオープンな状態でいます。そのため、見た内容がすっと入ってきやすいという特徴もあるのではないかと。ブランドの出現の仕方が他のプラットフォームより自然なのです。「どのタイミングで見せるか」という2つ目のポイントには、こうしたTikTokの特徴がうまく機能すると考えています。
今瀧 確かに。これまではほしい物があって、それを調べて買う流れだったのが、ほしい物が簡単に手に入る時代だからこそ、ほしい物がなくなってしまって、適切にお勧めしてほしいという流れになっているのではと思います。商品を選ぶという考え方が、商品と出合うという考え方に変わっていますよね。
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