「Z世代のヒットメーカー」の異名を取る今瀧健登氏が、若者向けマーケティングのキーパーソンと語る本連載。第6回は、20代女性から支持を得るメディア「MERY(メリー)」で、Z世代インサイトの発信やマーケティングを担う「MERY Z世代研究所」の所長、平山彩子氏と対談。Z世代マーケティングの極意を議論した。

僕と私と(東京・渋谷)代表の今瀧健登氏(写真左)が、MERY Z世代研究所所長の平山彩子氏に迫る
僕と私と(東京・渋谷)代表の今瀧健登氏(写真左)が、MERY Z世代研究所所長の平山彩子氏に迫る

 2022年1月、MERY(東京・千代田)は「MERY Z世代研究所」(以下、Z世代研究所)を立ち上げた。MERYは20代女性をターゲットに、メディア事業やコミュニティー運営、広告制作、マーケティングコンサルティング、商品開発、ECサイト事業など幅広い領域でサービスを展開している。そうした事業の中から抽出した、Z世代インサイトの知見を蓄積、発信しているのが、Z世代研究所だ。

 このZ世代研究所を率いているのが、所長の平山彩子氏だ。平山氏は、リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」編集長として、若者世代の結婚観や生活に関する調査を行い、その後同社を退社。22年7月にMERY統括編集長兼MERY Z世代研究所所長に就任した。長年、若者の意識調査をライフワークとしてきた経験を生かし、昔の若者と今のZ世代がどう違うのか、マーケティングで気を付けるべき点を今瀧氏と語り合った。

“仮面”に慣れたZ世代特有の距離感

今瀧健登氏(以下、今瀧) まずは、Z世代研究所の活動内容を教えてください。

平山彩子氏(以下、平山) Z世代研究所の特徴は「MERY」というメディアを軸に、ウェブサイトの登録会員やMERY MATE(メリーメート)、有料の「MERY&(メリーアンド)」といったコミュニティー、SNSで動画を発信するMERYライフクリエイター、その他のインフルエンサーなど、何層にもわたってZ世代のユーザーと接点を持っていることです。

 それらの方々へのインタビューなどを通じて、情報を得ることができます。クライアント企業のマーケティングや商品開発を行う際も、そうした分厚いコミュニティーに意見を聞き、リアルなZ世代のインサイトを捉えながらクリエーティブを開発できる点がメリット。Z世代の定量的な調査はいくつもあると思いますが、私たちのように日常的に生の声を拾って定性情報を集められる組織は少なく、そこが大きな強みになっています。

今瀧 なるほど。これまでに手掛けた事例にはどのようなものがありますか。

平山 例えば、化粧品メーカーのロゼット(東京・品川)が展開する「夢みるバーム」「ロゼット洗顔パスタ」のプロモーションでは、診断コンテンツを作成。自分らしさ、パーソナライズ、モテがキーワードとなるターゲットのZ世代女性に響くコンテンツを考えました。この施策では、単なる商品への誘導を目的としたコンテンツではなく、Z世代の関心事である「ご自愛ルーティーンケア」を知ることができる内容にし、商品の使用シーンをイメージさせることで、自分事化を促したこともポイントです。

診断系のコンテンツは、商品やブランドの魅力をさまざまな切り口で訴求できるため、マス的手法が効きにくいZ世代と相性がいいという
診断系のコンテンツは、商品やブランドの魅力をさまざまな切り口で訴求できるため、マス的手法が効きにくいZ世代と相性がいいという

今瀧 多くの若者と関わる中で、Z世代にはどんな特性があると感じますか。

平山 この世代で最も独特だと思うのが、人との“距離の取り方”です。Z世代の皆さんは総じてコミュニケーション力が高く、相手を嫌な気持ちにさせることなく話を受け入れ、肯定的に会話が進みます。けれども、自分が思っていることを何もかも正直に明かしているかというとそうではありません。自分をさらけ出して話せる相手の人数が、以前の若者と比べると少ない人が多いと感じます。「本当は何を思っているのか」を知るのがとても難しくなっていますね。

今瀧 Z世代は、あまり自分の本音を見せないと。

平山 はい。以前、「何層かの円を書いて、自分と周りとの距離感を円のどの層に配置するかで表してください」というお題でグループインタビューを行ったことがあります。調査では、自分と同じ層の人がいなかったり、親友が2層先にいたり、というZ世代もいました。関わっている人は増えているし、嫌いな人もいないけれど、「距離が近い人の数は減っている」ことが分かります。

 例えば、親友といえども本音は語らず、「ディープな悩みは相談したくない。場が重くなってしまうし、そんな話をすれば相手が不快に思うから申し訳ない」という声もありました。もう少し上の世代であれば、「仲良しが5人くらいいて、その仲間には何でも話す」というタイプの人が多く見られましたが、今は様相が異なっているようです。

今瀧 私自身Z世代なので、その感覚は理解できますね。Z世代は中学、高校の頃からスマートフォンでSNSをやってきた世代。SNSは、プラットフォームごとや複数持っているアカウントごとに言い方や表現、内容を変えて投稿するのがセオリーです。

 「Twitterの自分」「Instagramの自分」「TikTokの自分」「Aアカウントの自分」「Bアカウントの自分」などといった、いわば“仮面”をそれぞれで持っています。つまり、生活の大半の時間を費やすSNSで、仮面を付けてコミュニケーションするのが当たり前になっているのです。そのため、リアルの場で人と接する際も仮面を付ける習慣が抜けず、なかなか「本当の自分=本音」をさらけ出さないというのが実情ではないでしょうか。

Z世代にペルソナマーケティングは通用しづらい

今瀧 ただ、“仮面”は、Z世代の中では決してネガティブなことではないと思います。多様な仮面を持っていることで、自分の色々な側面を出せたり、使い分けてストレス発散できたりするなどメリットを感じている人のほうがむしろ多いはず。

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