※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成

Stray Kidsの日本デビューから、彼らの日本語曲の全歌詞とレコーディングでのディレクションを手掛けているKM-MARKIT(ケムマキ)。彼が担当するクリエートの方法と彼らの素顔、ヒップホップのアーティストでもある立場から感じる彼らの強みを聞いた。

Stray Kids(写真/Song Siyoung)
Stray Kids(写真/Song Siyoung)
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――まず、Stray Kidsの日本語詞をどのように作っているのか教えてください。

 彼らの場合、日本オリジナル曲も基本の部分は本人たちが作るため、韓国側からもらったデモをもとに3人の方に和訳をいただいてから作詞に入ります。和訳を3パターンお願いするのは、1人の方だけだと歌詞の理解や言葉選びが固まってしまうから。それをもとに歌詞を作ったら、僕自身で日本語のデモ音源を録って、韓国のメンバーやスタッフの皆さんに聴いてもらいます。そこから日本語でのサウンド感や歌詞の内容などの微調整を繰り返していくのですが、バージョンが2ケタに及ぶこともざらです。

――作詞の作業で大事にしていることは?

 Stray Kidsの場合は楽曲や歌詞の持つ世界観がとにかくユニークなので、そこに込められた全ての感情を伝えたい気持ちがまずあります。彼ら自身が作っている音楽だからこそ、誰にもマネできない独特な雰囲気があるから。そこを日本語でそのまま再現することを考えています。そのために僕が1番大切にしているのは、彼らの伝えたいメッセージを深く理解して「同じ気持ちになる」こと。韓国語と日本語では同じ意味の単語でも音の数が違いますし、音に合わせるなかで文字数の制限もあります。さらに彼らのラップはライミング(韻を踏む表現)も多いので、そこを日本語にしたときも彼らのスキルの高さが伝わるものにしたい気持ちがあります。その作業をする際に、「同じ気持ちになる」ことが本当に大事だし、それによって歌詞も作りやすくなるように思います。大変そうに聞こえますが、実際は楽しんで作業しています(笑)。

――KM-MARKITさんにとって、日本2ndミニアルバム『CIRCUS』で会心の日本語訳は?

 たくさんあるのですが(笑)。『MANIAC -Japanesever.-』では、最初の2行「誰もがまともに Play/作る笑顔はSo fake」がカッコよくて気に入っています。あとはサビ前の「好意に勘違いしうぬぼれて toxic/you’re losing 正気」。ちなみにここは韓国語の歌詞だと、「??? ??(イロニトルジ)」で前の行の「toxic」と「トルジ」が「o」「i」の音でライミングしていたので、日本語では「toxic」と「正気」で再現しました。

 日本オリジナル曲で言うと、『Fairytale』でこんなやりとりがありました。1人で夜空を見上げながら歌うはかない恋の歌なのですが、最初にハンが書いた歌詞がとてもピュアで繊細なものでした。それを受け、この曲のフックのパートの「ただただ綺麗なMoon」という歌詞が出来ました。もともとはもう少し直接的な表現でしたが、僕は彼の書くピュアな世界観を生かしたくてこの表現を提案しました。ハンには、日本の著名な作家が「I Love You」を「月がきれいですね」と訳したこと、日本にはそんな独特な表現があることなどを伝えたら、ハンも「とてもいいですね! 僕も大好きです!」と理解してくれました。そんな感じでやりとりしながら進めているという一例でもあります。

――レコーディングのディレクションは?

 彼らの日本デビュー前は、韓国に伺って皆さんと直接会ってできましたが、コロナ禍の今はリモートでレコーディングに立ち会います。楽曲にもよりますが、基本は3RACHAとディレクションしながら、日本語ならではのニュアンスやアクセントを一緒に見ていきます。

レコーディングで知った彼らの素顔とは?

――KM-MARKITさんがStray Kidsに関わって3年弱。彼らはアーティストとしてのステージも大きく変わりました。成長をどこに感じますか?

 最初からものすごくピュアで正直に音楽に向き合っている人たちだという印象でしたが、だからこそ今はさらに成熟し、新しい魅力がどんどん出てきているなと思います。僕自身も「次はどんなStray Kidsが見られるんだろう?」とワクワクするんです。新しい曲を出すごとに伝えたいテーマが明確かつユニークになっていると思うし、そうなるべきだとも思います。

 今回のタイトル曲『CIRCUS』もまさにStray Kidsにしか作れないテーマで、皆さん「こう来たか!」と思うんじゃないでしょうか。実際僕がそう思ったので(笑)。タイトルのままにStray Kidsをサーカス団にたとえた斬新な切り口ながらも、彼らなりのメッセージも存分に盛り込まれていると思います。彼らがとても忙しい時期にレコーディングしたのですが、「余裕です! ガンガンいきましょう!」とノリノリの雰囲気で録音した、元気いっぱいの楽曲になりました。今回のミニアルバムは、彼らの振り幅を楽しめるうえに、恋をテーマにした『Fairytale』や『Your Eyes』は、青年へと成長した彼らが垣間見える世界観。感情面でも技術面でも成長を感じられる1枚になっていると思います。

――実際にレコーディングに立ち会った際の、彼らの素顔も教えてください。

 バンチャンは本当に気遣いの人だし、みんなの面倒見もいいですね。レコーディングで全メンバーのディレクションをして、自分は後回し。最後に「じゃあ、僕録ります!」ってブースに入って、短時間で終わらせます。リーダーとしての責任感の強さが全てににじみ出ているし、現場で何があっても常に元気で明るい。ハードスケジュールでみんなが疲れているなかでも、明るく振る舞って現場の雰囲気を盛り上げてくれる。まさにリーダーと呼ぶにふさわしいリーダーです。

 リノは、頑張り屋でハングリー精神が特に強いメンバーだという印象があります。レコーディングで納得がいかないと「もう1回いきましょう!」と。こちらがOKだと思っても、完成度を求める気合いが強いですね。

 チャンビンはグループの「元気」を担うムードメーカー。いい意味で、緊張感をほぐしてくれます。ラップの技術も高く、レコーディングも早いし、こちらの要望への理解力も高いです。

 ヒョンジンは、とにかく勘がいい。こちらが一言言うだけで、「こういう感じですか?」と応えてくれます。引き出しが多いんだと思いますが、その場での対応力が高いです。

 ハンは、歌もラップも何でもめちゃくちゃうまいオールラウンダーです。チャンビン同様にムードメーカーですが、レコーディングの現場スタッフに音楽以外の話を投げかけたりして、ムードを和やかにしてくれるありがたい存在です。

 フィリックスは、歌もどんどんうまくなり、今後の伸びしろも強く感じます。あと、日本語の歌でもデモの再現能力が高い。リノと同じく根性があるなと感じますし、この2人は本当に何回でもトライしようと立ち上がってくるんです。

 スンミンは、まさに“努力の人”。どのメンバーも練習をかなり積んで臨んでいると思いますが、彼からは特に感じます。だからレコーディングもかなり早く終わりますし、日本オリジナル曲のパート分けでも、歌い込むパートは「ここはスンミンに任せれば大丈夫!」とみんなから信頼されているように感じます。

 アイエンは、独特な声が楽曲のアクセントになり、魅力と共に、曲のパートもどんどん増えていますね。現場慣れと技術力の成長もあると思いますが、レコーディングはとてもなごやかです。彼は、たとえ何度やり直しが出ても、ひたすら笑顔なんですよ。どんな時でもかわいい笑顔で頑張ってくれるので、現場もほのぼのとしてしまうんです(笑)。メンバーもアイエンのレコーディングを明るく見守り、みんな大きな声で「アイエン、こうしたらいいよ!」と、ふざけながらツッコんで、とても盛り上がっています(笑)。

――最後に、改めてプロの目から見たStray Kidsの魅力や強みを教えてください。

 作詞の話とかぶりますが、彼らはとにかく自分の気持ちに正直になることを突き詰めているように感じます。僕もそこは重要だと思うし、それが1番他の人との違いが生まれる部分だと思います。彼らは自身の言葉で表現しないとリスナーに伝わらないことをよく分かっているし、伝えるスキルも高い。ツラいこと、悲しいこと、楽しいこと、うれしいこと。そうした感情をピュアに表現していると感じます。自分に対して真摯に向き合っているからこそ、彼らだけの表現が出来上がり、独特の世界観を作っていけるのだと思います。

 あとは、やはりその自分と本気で向き合った言葉が、高いスキルで表現されることにより、初めて同世代の若者の心を動かすんだと思います。BTSもデビュー時から若い人たちのイラ立ちや苦しみ、葛藤を代弁することで、同世代から熱烈に支持されましたが、僕はStray Kidsが世界で人気を得ているのも、同世代の代弁者だからだと思っています。

 キャリアを重ねるごとに、Stray Kidsは「正直な言葉」を表現するスキルも高くなっていると思います。そんな彼らがストイックに、常に向上心を持ち続けて音楽に取り組んでいるから、これからも年を重ねるごとに表現も技術ももっと伸びていくし、彼らにしかできないオリジナル性も鋭くなり、さらなる高みに向かっていくと思いますし、とても楽しみです。

KM-MARKIT(ケムマキ)氏
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KM-MARKIT(ケムマキ)
1976年12月16日生まれ、東京都出身。2005年にアーティストとしてメジャーデビュー。作家としても活動を始め、w-inds.やGENERATIONS、NiziUなどの制作やディレクションを手掛ける。BTSは日本デビューの14年から、Stray Kidsは日本デビューの20年から、全曲の日本語詞作詞とディレクションに携わっている