現在、本当にパワーを持っているエンタテインメントブランドは何なのか? GEM Partnersの「Entertainment Standard」は、その答えを求めた調査だ。最大の特徴は、答え方があらかじめ指定したリストから選ぶ形ではなく、自由回答であること。今回の調査では、回答者の頭に浮かんだもの全てが対象になるので、『鬼滅の刃』『ONE PIECE』といった作品名、『Snow Man』『乃木坂46』といったグループ名、『YouTube』『Netflix』といったサービス名、そして『韓国ドラマ』『映画』といったジャンルが、ランキング内に並ぶことになる。異なるジャンルを横並びにして、ブランドの持つパワーを比較することができる調査なのだ。

 調査手法は、全国に住む15~69歳の1万人を対象に「今『好き』『はまっている』または『推している』エンタメコンテンツ」をジャンル問わず、自由回答で最大5つまで記入してもらい、それをGEM Partnersが「名寄せ」(回答者が記入した情報を精査し、同一のコンテンツを示す回答を統合する作業)をした上で、人口構成で重み付けを行うというもの。

 今回から、毎月の調査結果を基にトピックをピックアップし、「人気」の中身を分析していく。まずは2023年4月15日に実施された調査を基にランキングを見ていこう。

 まずは全体ランキング。1位になったのは、4月9日から『刀鍛冶の里』編のテレビアニメ放送が始まった『鬼滅の刃』だ。そして2位には『YouTube』とサービスが入った。3位、4位には『ONE PIECE』『名探偵コナン』、5位にはジャニーズのアイドルグループ『Snow Man』という結果だった。

 ちなみに『鬼滅の刃』『ONE PIECE』『名探偵コナン』はマンガとテレビアニメ、そして映画があるが、今回の順位はその全てを含めたものとなる。

 21位以下を見ていくと、23位に4月12日からテレビアニメ放送が始まった『【推しの子】』が入っている。『【推しの子】』は前月から大きくファン人数を伸ばした「急上昇ランキング」でも4位に入った。

 急上昇ランキングの1位は、こちらも『鬼滅の刃』だった。2位は4月14日に映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』が公開された『名探偵コナン』、3位にはドラマ『風間公親 -教場 0-』が4月10日から放送されている『教場』と、タイムリーな作品公開があったタイトルが上位を占めている。

 一方、前月調査からファン人数が減少したブランドは『ワールド・ベースボール・クラシック』(以下、WBC)だった。日本中が興奮した決勝は3月22日午前8時試合開始(日本時間)。4月に入ってその熱狂も一段落したということだろう。

 そして、『WBC』と入れ替わるように、急上昇5位に入ったのが『メジャーリーグベースボール』(以下、MLB)だ。WBCからMLBにファンの関心が移ったと推察できるが、実際はどうなのか。

 今回はこのMLBとWBC、そして22年に開催され、WBC同様に大きく盛り上がった『FIFAワールドカップ』(以下、W杯)という3つのブランドを比較してみよう。

『WBC』『MLB』『W杯』のファンの違いは?

 まずはブランドとしての強さをファン数で比較してみよう。調査期間をW杯が開幕する前月の22年10月から最新調査の23年4月まで広げてみた。すると、WBCが81万人と最も多くのファン数を獲得していた。

 男女比はどうだろう。女性の比率が最も高かったのがWBCで、女性31%だった。W杯は女性が25%と4分の1。MLBは男性が85%を超える。

 年代別で見ると、平均年齢が最も若いのがW杯で43歳。15-19歳が全体に占める比率も唯一、10%を超えた。一方、MLBで15-19歳が占める割合は1%にすぎない。

 「ファン歴の長さ」はどうだろうか。WBCは3カ月未満が49%とほぼ半数を占めた。21年の『ラグビーワールドカップ』のときにも「にわかファン」という言葉が流行語になったが、今回も同様の現象が見られたわけだ。一方、MLBは3カ月未満が3%。この数字から、WBCでファンになった人がMLBへ移行しるわけではないことが見えてくる。一方、W杯は20年以上が41%と最も多いが、3カ月未満というファンも27%いる。長年見続けているファンを保ちながら、新しいファンを獲得していることが分かる。

 どのくらいそのブランドを愛しているかを聞いた「ファンスケール」調査でも、「人生の一部だと感じる/もはや信者である」という回答を選んだ人がW杯はWBC、MLBの3倍以上だった。日本がW杯に出場してから25年がたつが、長い間、愛され続けたブランドだということだろう。

そのブランドに「使ってもよいと思う金額」はいくら?

 最後に「1カ月に支出した金額」と「ポテンシャル(使ってもよいと思う最大)支出金額」を見ていこう。

 実際に使った金額が最も多かったのは『WBC』の2637円。これは日本の試合が準々決勝ラウンドまで国内で行われたことが大きいだろう。カタールで開催された『W杯』は567円と低いが、「使ってもいい」と考えていた金額が3311円という結果から、アイデア次第でマーケットを広げる可能性はあることが見えてくる。

※エンタメブランドに登場するキャラクターやグループに所属するメンバーは、各エンタメブランドに統合して集計している。また名寄せ辞書のアップデートに伴い、過去に遡って値が修正されることがある
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