2022年12月、カラオケブランド「JOYSOUND」を運営するエクシング(名古屋)は2022年カラオケ年間ランキングを発表した。今回は、そのデータの中から、50代のユーザーに限定したランキングを見ていこう。上位には20世紀の曲が多いが、トップ30を見ると、しっかりと持ち歌を“アップデート”している様子も見えてきた。

 新型コロナウイルス禍の影響により、2020年以降のカラオケ人口は10年代と比べて約4割減少しているが、それでも約2500万人前後(全国カラオケ事業者協会調べ)がカラオケボックスを利用しいる。特に若い世代の1人カラオケが多いこともあって、平成からの皆が歌えるスタンダードではなく、発表1~2年内の比較的最近の楽曲が上位入りすることが増えてきた(記事「通信カラオケ30年ランキング 2位は『小さな恋のうた』、1位は?」参照)。そんな全体の傾向を踏まえつつ、50代のランキングを見てみよう。

集計期間:2022年1月1日~11月20日。「-」は51位以下。「順位」欄で丸囲み数字は全体に比べ50代で特に人気の楽曲を、「発表年」欄の紫色は過去5年以内の比較的新しい楽曲を示している。JOYSOUND調べ。
集計期間:2022年1月1日~11月20日。「-」は51位以下。「順位」欄で丸囲み数字は全体に比べ50代で特に人気の楽曲を、「発表年」欄の紫色は過去5年以内の比較的新しい楽曲を示している。JOYSOUND調べ。

 50代部門の第1位は、アニメ『鬼滅の刃 遊郭編』のテーマ曲となり、ビルボードジャパンの年間ランキングでも1位となったAimer(エメ)が歌う「残響散歌」。さすが国民的にも大ヒットとなったアニメのタイアップ曲であり50代にも人気が高い。「残響散歌」の順位を年代別で見ると、10代16位、20代3位、そして30代・40代・50代が1位となっている。ちなみに、劇場版『鬼滅の刃』主題歌だったLiSAの「炎(ほむら)」も全体では18位だが、年代別で見ると10代と20代が20位以下なのに対し、30代・40代が3位、50代が4位。30~50代で人気が高い傾向は、第6位の「残酷な天使のテーゼ」にも見られ、アニソンのヒット曲は、このミドル世代が大いに支えていることが分かる。

 第2位は1981年の薬師丸ひろ子のデビュー曲「セーラー服と機関銃」がランクイン。全年代では100位圏外ながら、50代で2位、60代でも4位と50代以上の人気が突出している。薬師丸ひろ子は、他にも83年の2ndシングル「探偵物語」が50代部門22位、84年の3rdシングル「メイン・テーマ」が同24位と3作ランクイン。トップ30に3作も入っているのは薬師丸ひろ子だけだ。薬師丸の歌は高音が多いので彼女のように美声で歌うのは難しいとしても、キー下げ調整さえすれば、高得点が狙えるほど素直なメロディーなものが多く歌いやすいのだ。加えて青春時代の思い入れがあればなおさら歌いたくなるだろう。

 トップ10内には、5位に「セーラー服と機関銃」と歌詞の一部が異なる原曲の来生たかお「夢の途中」、7位にレベッカ「フレンズ」、8位に中森明菜「スローモーション」、9位に高橋真梨子「桃色吐息」、そして10位に松田聖子「チェリーブラッサム」と、80年代の楽曲が6曲もランクイン。いずれも全年代では100位圏外で、この傾向は50代ならではの楽曲といえるだろう。明菜なら「DESIRE-情熱-」、聖子なら「赤いスイートピー」といった全年代で知られている定番曲でなく、ミディアム調の「スローモーション」と「チェリーブラッサム」となっているのは、やはりこれも爽快に歌えるということが大きく関係していそうだ。

近年のメッセージソングを歌う中高年も

 ここまでの記述だと、50代はアニソンと80年代を中心とした懐メロしか歌っていないように思われそうだが、3位には、全年代で1位となっている男性シンガーソングライター優里が歌うバラードの「ドライフラワー」がランクインしているし、あいみょんやOfficial髭男dismといった、いわゆるサブスク時代のヒット・アーティストもトップ30にそれぞれ2曲ランクイン。ここからレパートリーをアップデートしている50代も決して少なくないことが見えてくる。特に、Official髭男dismの「Cry Baby」(19位)や「ミックスナッツ」(30位)なんて、1曲の中でめまぐるしく曲調が変わるのに、歌いこなせるなんて同年代としてリスペクトしたいほどだ。

集計期間:2022年1月1日~11月20日。「-」は51位以下。「順位」欄で丸囲み数字は全体に比べ50代で特に人気の楽曲を、「発表年」欄の紫色は過去5年以内の比較的新しい楽曲を示している。JOYSOUND調べ。
集計期間:2022年1月1日~11月20日。「-」は51位以下。「順位」欄で丸囲み数字は全体に比べ50代で特に人気の楽曲を、「発表年」欄の紫色は過去5年以内の比較的新しい楽曲を示している。JOYSOUND調べ。

 12位のMISIA「アイノカタチ」や、14位の菅田将暉「」、18位の米津玄師「Lemon」は、2018年以降の近年の楽曲でありつつ、全年代順位に比べ50代の人気が高い。いずれも、スローなテンポでメッセージ性も強いので、じっくり歌いたい人に向いている曲だ。

 ちなみに、60代でもトップ20に、菅田将暉「虹」(14位)、優里「ドライフラワー」(15位)、あいみょん「裸の心」(16位)といった、近年の楽曲がランクインしている。Yahoo!コメントなどでは、中高年と思われるユーザーが「ヒット曲は何もない」と嘆いているのを見かけることがあるが、このランキングデータを見ると、50代以上も近年の楽曲を歌えるほどに聴いていることが見えてくる。

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