2022年は通信カラオケが誕生して30年という記念の年。このタイミングでカラオケブランド「JOYSOUND」を運営するエクシング(名古屋)は「JOYSOUND30thランキング」として1992年10月1日~2022年6月30日の歌唱回数に基づくランキングを発表した。

JOYSOUND カラオケ30周年ランキング/集計期間:1992年10月1日~2022年6月30日。JOYSOUND調べ
集計期間:1992年10月1日~2022年6月30日。JOYSOUND調べ

 第1位は高橋洋子の「残酷な天使のテーゼ」。1995年から放送が始まったテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌だが、当時のオリコン最高位は27位でカラオケ人気もそれほどではなかった。それが、2000年代に入って、パチンコ機「CR新世紀エヴァンゲリオン」シリーズや映画化された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズがヒットすると、カラオケの人気にも火が付き、2008年ごろから年間トップ10入りするようになり、以降ヒットの常連に。今や、10代から60代まで、どの年代別で見ても上位となるほどの国民的ヒット曲だ。

 2位「小さな恋のうた」は、バンドMONGOL800が2001年に発表したアッパーチューン。ノリの良さとストレートなラブソングという歌いたくなる要素があることや、2007年にドラマ『プロポーズ大作戦』の挿入歌として再注目を浴び、カラオケでもロングヒットとなった。こちらはシングルではなく、約280万枚売れたアルバム『MESSAGE』の収録曲。アルバムのヒットにはインディーズ発売ゆえにレンタルされていなかったこと、メジャーよりもリーズナブルな価格で発売されていたことも影響していると思われるが、この「小さな恋のうた」や「あなたへ」などカラオケ人気の楽曲が収録されていたことも大きいだろう。

 3位は一青窈「ハナミズキ」。こちらは火曜サスペンス劇場主題歌として、また平和を願う楽曲として、発売された2004年からヒットを継続しており、2010年ごろには、「どのカバーアルバムにも必ず入っているのでは」と思うほどのスタンダードになった。

 6位の中島みゆき「糸」も、今ではカバーアルバムの定番曲となっているが、こちらが年間トップ10入りしはじめたのは2015年ごろ。つまり、一般的に言われているBank Bandがカバーした2004年ごろではなく、もちろんそれ以前の1992年の中島みゆきのアルバム『EAST ASIA』収録時でも、1998年のドラマ『聖者の行進』主題歌としてシングル「命の別名/糸」が発売された時でもない。2010年代にテレビのカラオケ番組で反響の大きな楽曲として注目されるようになり、徐々にカラオケやダウンロードで上昇。数年後に双方で年間上位入りしたのだ。ちなみに、本作のダウンロードシングルがミリオンヒットとなったのは2018年ごろ。同じように、11位のスキマスイッチ「奏(かなで)」もカラオケのスタンダードとなってから、2014年にようやくダウンロードでミリオンヒットとなっている。

 ただ、「ハナミズキ」「糸」「奏(かなで)」のいずれも、2020年代に入ると、年間トップ10クラスから一気にランクダウンしてしまった。これは、新型コロナウイルス禍による影響で、カラオケが大人数で楽しむものではなくなり、幅広い世代で歌えるようなこうしたスタンダード曲が歌われる機会が減ってしまったからだろう。それに代わってカラオケヒットとして増えたのが、優里「ドライフラワー」、Ado「新時代」、Saucy Dog「シンデレラボーイ」など、ストリーミングとの相性の良い、1人でカラオケを楽しむことも多い、若い世代に人気の楽曲だ。その意味で、次の10年間は全く様子の異なる人気曲が生まれるかもしれない。

1992年以前の曲で1位は尾崎豊の「I LOVE YOU」

 トップ30内を見渡してみると、ランキングが始まった1992年以前の楽曲は、尾崎豊「I LOVE YOU」(1983年)、岩崎良美「タッチ」(1985年)、石川さゆり「天城越え」(1986年)、DREAMS COME TRUE「未来予想図II」(1989年)の4曲がランクイン。いずれも、時代を超えて歌い継がれている楽曲ばかりだ。ちなみに、演歌部門第2位は、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」(総合41位)。2007年以降、毎年入れ替わりで、この2曲がNHK紅白歌合戦で歌われ続けているのも納得できる上位入りだ。

 なお、こうした30年間ランキングでは、早期から配信されていた90年代半ばの曲が圧倒的に有利だと思える。歌われる期間が長いし、カラオケ人口が最も多かったのも1990年代前半から半ばなのだ。だが、ランキングを見ると前述の「残酷な天使のテーゼ」と、1994年のシャ乱Q「シングルベッド」、1996年のスピッツ「チェリー」とJUDY AND MARY「そばかす」とそれほど多くない。

 これは当時、毎週のように大型タイアップ曲が発売されて、カラオケでも皆が取り合うように新曲を歌っていたので、1曲あたりのメガヒットが少なくなっているのだ。実際、カラオケでもロングヒットが現れ始めたのは「TSUNAMI」(2000年)、「世界に一つだけの花」(2002年)、「栄光の架橋」(2004年)など2000年代前半になってからだ。このように30年の間でも、様々なスタイルの変化が見られるのが興味深い。

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