顧客を深く理解し、最適なパーソナライズを届けるために、サードパーティーが提供するデータを活用している企業は多い。だがそんなサード・パーティー・データの利用が、個人情報の保護を重視する流れに沿って規制されつつある。そこで求められているのが、自社で持つファースト・パーティー・データや、顧客自らが企業に提供するゼロ・パーティー・データの活用だ。そして、これらのデータを活用してパーソナライズを実現する基盤がCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム、Customer Data Platform)となる。パーソナライズ実現に当たり、押さえておくべき個人情報保護に関する経緯とCDPを選ぶべき理由について見ていく。
求められる個人情報の保護
近年、多くのマーケターを悩ませているのが、個人情報の取り扱いだ。個人の名前や住所、生年月日はもちろん、その人の過去の購入履歴や購入頻度、買った商品の傾向や購買額などのさまざまなデータは、その人の嗜好や行動パターンを把握するために重要な情報だ。しかし、その情報を乱用したり、その人が意図しない形で流用したり、知らない間に勝手に情報を収集・売買したりすることに対して、厳しく取り締まりがされるようになった。
先駆けとなったのが、2018年に欧州で施行されたEU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、以降「GDPR」)だ。これはEU居住者の個人情報を収集したり、それらの情報を処理・活用したりする企業・組織を対象にした法律で、EU域外の組織も適用対象にしている。欧州でビジネスを展開する日本企業ももちろん当てはまる。
GDPRが規定する個人情報とは、氏名や住所はもちろん、メールアドレスや写真、銀行口座やSNSアカウント(投稿データも含む)、IPアドレス、既往歴などさまざまだ。
その後、20年には米国でもカリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act、以降「CCPA」)が施行された。CCPAでは、個人を直接特定できる名前や住所、電話番号、ID番号などの直接的な識別子と、いくつかの識別子を組み合わせることで間接的に個人を特定できるIPアドレスやメールアドレス、Cookie情報などの間接的な識別子に加え、生体認証情報や位置情報、生体データやネットでの行動履歴など、個人とひも付くあらゆる情報を保護の対象にしている。
日本でも22年4月から新たに改正個人情報保護法が施行された。この改正は、(1)個人の権利権益保護、(2)保護と利用のバランス、(3)国際的潮流との調和、(4)外国事業者によるリスク変化への対応、(5)AI・ビッグデータ時代への対応という5つの点を注視してなされたもので、自分の個人情報に対する開示要求や提供禁止を認めるなど、個人の権利や情報保護が強くなり、改正法に従わない事業者への罰則がより厳しくなった。
改正個人情報保護法で特にマーケターの頭を悩ませたのが、Cookieの利用についてだ。CookieとはWebブラウザーに格納される識別子のこと。これにより、ユーザーはIDやパスワードを訪問のたびに入力しなくても済むし、過去に閲覧したページや商品情報を履歴として残すことができる。だが、その一方で、知らない間に個人を識別するデータとして使われてしまうこともある。
また、広告プラットフォームなど第三者が発行するサード・パーティー・Cookieデータは、ユーザーの許可なくWebの行動履歴を追いかけ続け、その履歴に基づいて広告を表示するなどターゲティングに使われている。この行き過ぎたターゲティングや、本人の同意なくCookieと個人情報をひも付けて個人を特定し、不利益な使い方をするといった企業の行為が問題となり、「Cookieの利用はユーザーの同意が必要」と義務付けることとなった。これにより、Cookieをベースに広告配信を展開してきた企業にとっては大きな打撃となったのだ。
ゼロ・パーティー/ファースト・パーティー・データがパーソナライズの鍵
サード・パーティー・Cookieデータに関しては、Webブラウザーでも規制が進んでいる。「FireFox」や「Safari」はいち早くサード・パーティー・Cookieデータのサポートを停止し、「Microsoft Edge」もCookieのブロック機能を搭載。米グーグルも当初の予定から大幅に遅れながら、新たなターゲティング技術を開発することで、「Chrome」のサード・パーティー・ Cookieデータのサポートを24年後半までに停止するとしている。
とはいえ、ユーザーは自分の情報を企業が活用することに対して、決して否定的ではない。例えばコンサルティング大手のアクセンチュアの調査によると、「約3分の1の消費者が『利用する企業には自分のことをもっとよく知ってほしい』と考えている」とし、「自分が望むエクスペリエンスとサービスを得るためには、個人情報を提供する必要があることを理解している」と述べている。
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