今やWebサイトに限らず、アプリやサービス、さまざまなビジネスで「顧客に心地よいUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供できているかどうか」が問われている。顧客の体験や視点を念頭に事業やシステムをデザインすることが、企業の業績を左右するともいえる。そうした時代であるにもかかわらず、顧客目線で作られたWebサイトはまだ少ないのが現状だ。今回は顧客目線のWebサイトとはどのようなものなのか、どうすれば実現できるのかを考えていく。

企業のWebサイトで、顧客目線のUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供できているかどうかが問われる(出所/Shutterstock)
企業のWebサイトで、顧客目線のUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供できているかどうかが問われる(出所/Shutterstock)

WebサイトのUXが改善しない理由

 Webサイトはもちろん、アプリや業務システム、新サービスなどさまざまな企画・開発の現場で欠かせない視点が、UX(ユーザーエクスペリエンス、User eXperience)だ。和訳すると「顧客体験」と呼ばれており、システムやアプリの使い勝手を意味したり、サービス・製品を通じて得られる心地よさや満足度を指したりすることが多い。

 UXの向上は、顧客がWebサイトやアプリ、サービスを継続的に使用する際の大きな決め手となる。単純な話、使い勝手が悪いアプリはすぐにユーザーが離れるし、サービスや製品が悪ければすぐに使用しなくなるだろう。リアル店舗も同じで、店員の感じが悪かったり、不快な思いをしたりすれば、その店舗には行かなくなる。

 しかし、「UXを向上させよう」と一口に言っても、これは非常にハードルが高い。IT開発の現場では「顧客目線で開発しよう」とよく言われるが、どうすれば顧客目線で開発できるのか分からないことが多い。ユーザーインタビューを重ねたり、実際に利用しているシーンを開発者が観察したり、さまざまな手法が取られるが、何が正解なのか判断することは難しい。そのため開発者側は、可能な限りユーザーからのフィードバックを受け、優先順位を考え、改善を重ねていくことでベストを尽くす。

 一方、企業のWebサイトはどうだろう。Webサイトにアクセスする訪問者のほとんどは社外の人で、何か不満があってもその意見を述べることは滅多(めった)にない。自分が求める情報がなかったり、何度も訪問しても同じ情報しか提示されなかったりした場合、黙ってそのまま離れるケースが大半だ。業務現場では「顧客目線で提案しよう」と掛け声をかけていても、こと自社のWebサイトになると顧客目線を忘れていることが多い。「非」顧客目線のWebサイトでビジネスチャンスを逃していたら、残念というより悔いが残るはずだ。

パーソナライズとは顧客の満足度を上げること

 では、UXの品質が高いWebサイトとはどのようなものなのか。それが連載第1回で説明した「パーソナライズされたWebサイト」だ。

▼関連リンク 連載第1回「ビジネスの決め手は『Webの営業力』、どのように向上させるのか?」

 旅行会社のWebサイトを考えてみよう。あるユーザーが旅行会社のWebサイトで北海道まで往復する飛行機の情報を見ているとすると、Webサイト側ではそのログを基に「この訪問者は北海道に興味がある」と判断できる。そのユーザーに対しては、さまざまな北海道ツアーの案内をレコメンドしたり、道内の宿泊施設の情報を提示したり、レンタカー予約を勧めたりなど、北海道旅行に必要な情報を優先的に表示する。このように関連情報が適切に表示されれば、ユーザーもさまざまな旅行情報を見比べて考えたり、良いツアーがあればその場で予約を入れたりする可能性が高まる。コンバージョンにつながる行動を促すことができるわけだ。

 仮にその場で予約がなくても、ユーザーが前回の訪問で「情報が豊富で便利だった」と感じていれば、再度訪問する可能性は高い。そのとき、自社のWebサイトやWebサーバーにアクセスした人の情報(ファースト・パーティー・Cookieデータ)から、「過去、北海道旅行に興味があったユーザーだ」と判断し、トップページに北海道ツアーや航空券の案内を表示すれば、ユーザーの満足度も上がるし、予約・購入につながるチャンスも高くなる。ユーザーが航空券を予約したら、次はレンタカーやホテルなど、状況に合わせて関連情報を次々に提示していけば、ユーザーの満足度も上がるし、「次の旅行もこのWebサイトから予約しよう」とリピーターになる率も上がる。だからこそ、連載第1回では「パーソナライズとはWebの営業力」と説明した。

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