2022年7月4日発売の「日経トレンディ2022年8月号」では、創刊35周年を記念し、「家電、文房具、日用品オールタイムベスト」を特集。イヤホン・ヘッドホンでは、音楽ファンだけでなく、リモートワークの普及以降はオンライン会議をするビジネスパーソンの必携アイテムにもなった。2010年代半ばに無線イヤホンが一般的になったことも革命的だった。

※日経トレンディ2022年8月号より。詳しくは本誌参照

近年のイヤホンは骨伝導や穴開き型など百花繚乱
近年のイヤホンは骨伝導や穴開き型など百花繚乱

 マイク付きの無線イヤホンが一般的になったことで、音楽ファンだけでなく、オンライン会議をするビジネスパーソンの必携アイテムにも“昇格”。リモートワークの広がりに呼応するように、近年は新しい方式のイヤホンが増えている。改めて市場を見渡すことで、今使っているものより自分の生活に合った1台が見つかるかもしれない。

 有線が当たり前だった2000年代までは、イヤホンに求められてきたのは高い音質や遮音性。イヤーピースを耳の穴にぴったり差し込んで音楽を聴く「カナル型」のイヤホンが支持を得ていった。06年には多くの部品点数を盛り込み、手作業の最終調整で音質を追求したというソニーの「MDR-EX90SL」がヒットした。

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 10年代半ばに入ると、使い勝手や装着感が重視されるようになっていく。潮目を変えたのは、スマホが普及して、Bluetooth接続による無線イヤホンが一般的になったこと。特に革命的だったといえるのが、左右のイヤホンが分離して全くケーブルがない「完全ワイヤレスイヤホン」の登場だ。普及の立役者になったのは、アップルが16年末に発売した「AirPods」。翌年夏ごろまで品薄が続き、多くの後追い商品も登場した。

 完全ワイヤレスイヤホンの普及当初は、軽くてケーブルが邪魔にならない快適さだけで驚きだったが、19年にアップルが発売した「AirPods Pro」が新たな体験を生んだ。耳の穴をふさがない「開放型」のAirPodsとは異なる「密閉型」でノイズキャンセリング機能も搭載。アップルが採用したことで、通勤電車や飛行機の中でも静かに過ごせる魅力が広く知られる契機になった。今ではノイズキャンセリング機能付きの商品が高機能イヤホンの主役になり、低価格な商品も出てきた。

コロナ禍で「ながら聴き」に支持

 このような遮音性が高いイヤホンは今でも主力だが、20年からの新型コロナウイルス禍によってリモートワークが広がると、「ながら聴き」という新たなタイプのイヤホンが脚光を浴びるようになった。自宅で働きながら音楽を聴いているときに、家族などからの呼びかけにも対応したいというニーズに応えたものだ。

 AirPods Proのように密閉型で遮音性の高いイヤホンで、外音を取り込める機能を搭載しているものもある。これならモードを変更することで、周囲の音を音楽と同時に聞くことが可能だ。ただし、実際に耳で聞くよりはやや不自然な聞こえ方になる。

 そこで価値が再認識されたのが、耳の穴をふさがない方式のイヤホンだ。「AfterShokz TREKZ AIR」(フォーカルポイント)のような骨伝導のタイプや、「wireless earcuffs」(ambie)のように耳の穴をふさがず、その付近から音を出すイヤースピーカー型のイヤホンはその象徴だ。これらの方式はコロナ禍前からあったが、20年以降に注目度が一気に増した。22年2月には、ソニーが耳の穴をふさぐ部分に穴が開いた斬新な構造の「LinkBuds WF-L900」を発売した。「ながら聴きイヤホン」の選択肢は急拡大しており、性能面でも進化を続けている。

 一方、「ながら聴きイヤホン」には様々な仕組みがあるため、自分の用途に合った製品を選ぶのが難しい。方式による個性の傾向に商品自体の性能差も加わるので、強み弱みは従来以上に色濃く出るのだ。

 イヤホン以外でながら聴きに向くのは、肩掛けスピーカーだ。最初に注目されたのは、17年10月にソニーが発売した「SRS-WS1」。騒音を気にして音量は上げづらいが、好きなテレビや音楽を大迫力で楽しみたいというニーズをつかんだ。音漏れが激しいので屋外の利用には向かないが、耳をふさがないので周囲の音は聞き取り可能。自宅では便利に使える。

ゲームをするなら遅延に注意

 もう一つイヤホンやヘッドホンで伸びているのが、ゲーミングの需要だ。ハイレベルなゲーマーが気にするのが音声の遅延。音楽を聴いているときは気になりにくいが、ゲームでは映像と音がずれるとプレーに違和感が生じることが多い。特別に遅延を少なくしたワイヤレスゲーミングヘッドセットが登場しているのに加え、遅延のリスクがほぼ無い有線タイプも有力な選択肢になっている。

イヤホン・ヘッドホンの最新トレンド

音質以外の選択基準が多様化 欲しい機能に応じて見極める

【Keyword 1】遮音性

 通勤時や集中したいときに使うなら重視すべきで、カナル型のイヤホンやオーバーヘッドヘッドホンが有利。ノイズキャンセリング機能があるとなおよい。AirPods Proのようにモードを切り替えられるタイプもある。

遮音性の高さは、イヤホンを選ぶときのポイントの一つ
遮音性の高さは、イヤホンを選ぶときのポイントの一つ
■イヤホンならカナル型を選ぶ

・カナル型/耳栓型のイヤーピースを耳の穴にはめ込む
・密閉型・オーバーヘッド/イヤーパッドが耳を覆う

【Keyword 2】ながら聴き

 音楽などと同時に周囲の音が聞こえる「ながら聴きイヤホン」には、骨伝導、穴開き、眼鏡型など様々なタイプがある。方式によって耳の穴をふさぐ割合と、低音特性などの音質がかなり異なる。

「ながら聴きイヤホン」には様々なタイプが登場
「ながら聴きイヤホン」には様々なタイプが登場
■ながら聴きには大きく4タイプがある

・骨伝導/頭蓋骨を通じて聴覚神経に音を伝達
・イヤースピーカー/耳付近のスピーカーから耳の穴に向けて音を出す
・穴開き/耳をふさぐ部分に穴があり、外音も聞こえる仕組み
・外音取り込み/耳の穴はふさぐが、マイクを通じ間接的に外音を伝える

【Keyword 3】マイク性能

 ワイヤレスイヤホンはマイク機能が標準装備になりつつある。マイク音質が良ければ、在宅勤務時のオンライン会議などにも使えて便利。製品によっては、相手側には聞こえないように周囲の大きな騒音を低減する機能を備える。

ワイヤレスイヤホンはテレワークで使えるマイク機能が標準装備になりつつある
ワイヤレスイヤホンはテレワークで使えるマイク機能が標準装備になりつつある
【Keyword 4】音声の遅延

 ワイヤレスのイヤホンやヘッドホンの場合、製品や通信環境によっては音声の遅延が大きい。特に、素早い操作が必要なゲームをする際に使うなら、遅延のリスクが少ない有線モデルがベターだ。

イヤホンやヘッドホンをゲームで使用する場合、遅延のリスクが少ない有線モデルがベター
イヤホンやヘッドホンをゲームで使用する場合、遅延のリスクが少ない有線モデルがベター

イヤホン・ヘッドホン トレンド史

 「日経トレンディ」が産声を上げた1987年11月以降で、テレビのトレンドの変遷を年表にまとめた。

1999年
・7月 ソニーがカナル型イヤホン「MDR-EX70」シリーズを発売

■MDR-EX90SL
■MDR-EX90SL
音響調整の部品を通常のイヤホンより多く搭載し、音質を追求した商品

2001年
・11月 アップル「iPod」発売に伴い、付属の白いイヤホンが象徴的存在に
・BOSEが初のコンシューマー向けノイズキャンセリング機能付きヘッドホン「QuietComfort」を発売

2006年
・5月 ソニーが音質を高めた比較的高価なイヤホン「MDR-EX90SL」を発売
・デザイン性などが特徴の「Beats by Dr. Dre」ブランドを展開する、ビーツ・エレクトロニクス設立

【分岐点】AirPodsが完全ワイヤレスイヤホン市場を確立

2016年
・12月 アップルが「AirPods」を発売

2017年
・10月 ソニーが肩掛けスピーカー「SRS-WS1」、完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」を発売
・10月 フォーカルポイントが骨伝導イヤホン「AfterShokz TREKZ AIR」の販売を開始

2018年
・4月 ambieがワイヤレスイヤホン「wireless earcuffs」を発売
・ゲーミングヘッドセットの市場が拡大を始める

2019年
・7月 ソニーが「WF-1000XM3」を発売。「AirPods」1強の完全ワイヤレスイヤホン市場に風穴を開ける
・10月 アップルが「AirPods Pro」を発売

■AirPods ■AirPods Pro
■AirPods ■AirPods Pro
開放型で完全ワイヤレスのAirPods、カナル型でノイキャン機能付きのAirPods Proが共にヒット

【分岐点】テレワーク普及もあり「ながら聴き」商品が人気に

2021年
・6月 ソニーがハイレゾ音源に対応したワイヤレスイヤホン上位機「WF-1000XM4」を発売

■WF-1000XM4
■WF-1000XM4
LDAC対応で、ソニーで初めてワイヤレスでもハイレゾ音質を実現したイヤホン

2022年
・2月 ソニーが「LinkBuds WF-L900」を発売

(写真/古立 康三、PIXTA)

注)創刊35周年特別保存版 歴代ヒット&最新ベストは、「日経トレンディ」2022年8月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。
▼関連リンク 「日経トレンディ」(電子版)
「日経トレンディ2022年8月号」の主な内容を紹介
【いいものオールタイムベスト】
●家電&デジタル
テレビ/最新ミニLEDテレビを検証。ハイセンス格安機の実力は?
イヤホン/骨伝導 vs LinkBuds vs AirPods。最強「ながら聴き」決定戦
炊飯器/各社の最上位モデルでガチ比較。伏兵東芝が僅差で優位に
オーブンレンジ/鶏肉のグリルと揚げ物温めでは日立がトップクラス
コーヒーメーカー/注目のバルミューダはハンドドリップに匹敵した!
掃除機/ダイソンは、本当に吸引力と“軽さ”を兼ね備えているのか
●文具
筆記用具/0.3ミリメートル以下でオススメは? 油性・ゲルインクボールペン選手権
デジタル文房具/成功例が少ない中、「ブギーボード」が生き残っている理由
●日用品&雑貨
衣料用洗剤/大手3社の主力商品をテスト。汚れ落ちに違いはあるのか
掃除用品/ワイパークリーナー登場から28年。今最もきれいになるのは?
【D2C時代のパッケージデザイン大変革】
【ヒットを作る人】メタバースはマーケティングワードか!? ライゾマティクス 真鍋大度氏 インタビュー
【ヒットを作る人】ビームスはメタバース時代の「百貨店」になる? ビームスクリエイティブ社長 池内光氏 インタビュー
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