
楽天グループが2022年1月にサービスを開始したネットスーパーのプラットフォーム「楽天全国スーパー」が、徐々に出店企業を増やしている。資本業務提携している西友を皮切りに、サービスの本格化に合わせて、ベイシア(前橋市)が出店。22年6月には首都圏を中心に店舗を展開するいなげやも出店した。西友のネットスーパーの運営と1億を超えるIDを保有する楽天の資産を組み合わせた楽天流「もうかるネットスーパー」の仕組みで、事業拡大を狙う。
「2018年8月に開始した『楽天西友ネットスーパー』はこの4年で月間流通総額が4.7倍に成長した。経済圏を広めるために、西友をはじめ、さまざまなスーパーマーケットとの提携を進めている」
楽天グループは22年7月21日、ECモール「楽天市場」の出店者向け大型イベント「楽天EXPO2022」を開催。同イベントで講演した三木谷浩史社長は、ネットスーパー事業の好調をアピールした。
楽天は18年から、かつての西友株の保有企業だった米ウォルマートと協業し、西友のネットスーパー事業を推進してきた。21年3月には、西友の株式の一部をウォルマートから取得。資本業務提携後はネットスーパー事業の拡大を加速。楽天西友ネットスーパーの21年の流通総額は前年比26%増の約500億円に成長した。
楽天による西友のネットスーパー支援策はECサイトの開発やスマートフォン向けアプリの開発、ポイント連携といった販促施策にとどまらない。受注商品を倉庫内から集める「ピッキング」を効率的に行うため、専用アプリを独自開発して導入するなど、楽天の技術力を生かしたネットスーパー運営のオペレーション負荷低減にも力を入れてきた。
西友の知見生かしネットスーパー支援参入
こうした西友のネットスーパー事業で培った知見を生かし、22年1月に開始したのが、ネットスーパーのプラットフォーム楽天全国スーパーだ。これは、ECモール「楽天市場」のネットスーパー版ともいえるサービス。楽天全国スーパーというプラットフォーム上に、出店企業ごとに店舗のサイトを設ける。この点は、出店企業ごとに個別の店舗サイトを設ける楽天市場と似ている。西友のネットスーパーを汎用的なプラットフォームにすることで、他のスーパーへと「楽天経済圏」を広げることを狙う。
楽天全国スーパーでは一般的なネットスーパーと同様に、カテゴリーごとの商品一覧や商品情報などのページを設けて、商品を販売できる。特定の商品をフィーチャーしたキャンペーンの実施なども可能だ。楽天市場に出店する店舗のサイトを、ネットスーパーに特化した形で開設可能なプラットフォームと考えると理解しやすいだろう。
西友を除く楽天全国スーパー最初の出店企業となったのが、22年1月に出店した1都14県で136店舗を展開するベイシアだ。当初は3店舗から開始したが、22年6月には群馬県内の4店舗が加わった。これにより、群馬県内の配送可能な世帯数は13万世帯から、24万世帯へと拡大した。
22年6月には2社目としていなげやが出店。まずは神奈川県の1店舗から開始した。今後、対象エリアを順次拡大していくとしている。22年秋には富山県を中心にスーパーをチェーン展開する大阪屋ショップ(富山市)の出店も予定されており、徐々に出店店舗を増やしている。基本的には店舗から出荷する。
サービス利用者は自宅の郵便番号を入力することで、ネットスーパーの配送の対象範囲かどうかを調べられる。郵便番号を基に、検索結果に利用可能なネットスーパーの一覧が表示されるため、好きなスーパーを選んで利用できる。利用方法は好きな商品を選び、カートに入れて決済といった点では一般的なECサイトと同様だが、配達日時を指定する必要がある。
例えば、西友なら10~12時、12~14時といった具合に、2時間ごとに枠が区切られており、最も遅い時間の20~22時まで計6枠で、注文日から3日後まで選べる。枠ごとに受注可能数が決められており、規定数に達すると締め切られる仕組みになっている。枠数は出店企業によって異なる。
楽天ならではの利便性としては、楽天のサービスに登録している会員ID、住所情報、支払い情報などをそのまま使える点が挙げられる。出店する各事業者のネットスーパーを利用する場合、個人情報提供の観点などから、別途会員登録する必要があるが、楽天の会員IDに登録された情報をそのまま流用できるため、登録の負担は少ない。
出店企業の視点に立てば、1億を超える楽天ID保有者がそっくりそのまま、見込み顧客になる。楽天IDにひもづいた集客策を展開できる点が、楽天全国スーパーの持つ最大の強みになりそうだ。
1億人が登録する楽天IDで集客を支援
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