もうかるネットスーパーのつくりかた 第3回

アマゾンジャパン(東京・目黒)がネットスーパーで攻勢をかけている。2017年から直営のネットスーパー「Amazonフレッシュ」を展開。加えて、ライフコーポレーション、成城石井(横浜市)、東海地方を拠点とするバローホールディングスなど、既存のスーパーとの提携を拡大している。アマゾンジャパンは刺し身をはじめ、生食文化が強い日本市場に合わせるため、在庫管理システムなどをローカライズ化。その仕組みを本国側も導入するなど、日本法人がAmazonのネットスーパーをけん引する。

 「Amazonが売るきゅうりは(物流拠点で)本の隣に置いてあるものなのか?」

 アマゾンジャパンがネットスーパー事業を開始するに当たり、消費者にインタビューをする中でこんな質問が投げかけられた。アマゾンジャパンAmazonフレッシュ事業本部の荒川みず恵事業本部長はこの言葉を耳にしたとき、「Amazonが扱う生鮮食品」に消費者が抱くイメージを刷新するのは、並大抵の努力では難しいだろうと痛感した。「Amazonが生鮮食材を扱うことへのイメージが全くつかないんだろうと思った。だからこそ、品質には最大限こだわり、ポジティブな驚きを提供したかった」と振り返る。商品品質はもちろん、鮮度を保つ精緻な商品管理の仕組みが求められる。

 Amazonのネットスーパー事業は、自らが作り上げてきた「大きい物流拠点から商品を大量に出しているデジタルの会社」という消費者イメージを覆すという、大きな壁を乗り越える必要があった。その壁を乗り越え切るにはまだ道半ばではあるが、徐々に顧客を集め、事業範囲を拡大させている。

Amazonが既存のスーパーと提携する2つの狙い

 Amazonのネットスーパーは大きく2つのサービスに分けられる。1つ目は既存のネットスーパーと提携し、ECサイト「Amazon.co.jp」上に各スーパーのストアを設ける出店型だ。その代表例はライフコーポレーションで、2019年9月からAmazon.co.jpとの取り組みを開始した。ライフは東京23区13市に加え、神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・京都の一部地域で利用できる。

 東海地方を中心として出店するバローは、21年6月にAmazon.co.jp上にストアをオープンした。現在は愛知県8市1町の一部地域で利用できる。直近では、22年3月に成城石井が新たな出店企業に加わった。

 Amazonが既存のスーパーとの提携を強化する理由は2つ挙げられる。1つ目は「商品の充実」だ。例えば、ライフやバローは充実したプライベートブランドを展開する。高級スーパーとして知られる成城石井はワンランク上の総菜など、独自性の強い商品に強みを持つ。顧客の高いニーズに応え続け、根強いファンとブランドパワーを獲得している提携先と組めることは、大きな強みになる。

 2つ目の理由は「サービスの全国展開」だ。Amazonは自社物流に強みを持つ企業ではあるが、スーパーマーケットの主力である生鮮食品を全国津々浦々までくまなく1社で届けられる体制を築くのには時間がかかる。また、食文化は特に地場とのつながりが強く、地域ごとに嗜好性が表れやすい。そこで、既存のスーパー業者との提携を拡大することで、各事業者の店舗を拠点として、全国にネットスーパー事業を展開することを狙う。

 そして、Amazonが展開するもう1つのネットスーパーが、直営のAmazonフレッシュだ。Amazonフレッシュは現在東京都18区2市と神奈川県と千葉県の一部地域を対象エリアとして展開する。Amazonフレッシュの収益性を高めるために、Amazon流のデジタル活用に加えて、泥臭いアナログ施策にも取り組んでいる。本記事では、Amazonフレッシュに焦点を当て、アマゾン流ネットスーパーの作り方を学ぶ。

日本のネットスーパー事業で扱う商品は、特に消費期限が短いものが多い。そのためパッキングも、鮮度を保つことを最優先した工夫がされている
日本のネットスーパー事業で扱う商品は、特に消費期限が短いものが多い。そのためパッキングも、鮮度を保つことを最優先した工夫がされている

刺し身の鮮度を保証する日本発の在庫管理システム

 Amazonが展開するネットスーパーと聞くと、さぞや高度なシステムが稼働しているのではないかと想像するだろう。これには正しい面と誤りの面がある。まず、データを活用した需要予測に基づく商品の発注、在庫管理、配送といった、ネットスーパーのオペレーションに関わるシステムはAmazonならではの高度な技術が用いられている。

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