もうかるネットスーパーのつくりかた 第2回

新型コロナウイルス感染症拡大以降、急成長する「ネットスーパー」市場。だが、ネットスーパーでもうけるのは至難の業だ。スーパーマーケットの営業利益率は一般的に1~3%といわれる。その利益の中から、ECサイトの運営や配送などのコストを捻出する必要があるため、一般的なECサイトよりも収益構造を設計する難易度が高く、撤退も後を絶たない。そのような厳しい条件下でも、しっかりと「もうかるネットスーパー」を構築できている企業は存在する。本特集では利益を生むネットスーパー事業から、ECサイト運営の極意を学ぶ。

元すかいらーくホールディングスCMO(最高マーケティング責任者)和田千弘社長率いるクイックエクスペリエンス(東京・渋谷)は、2022年1月に日本から撤退したドイツ発のフードデリバリー事業「foodpanda(フードパンダ)」上で展開されていたネットスーパー事業「pandamart(パンダマート)」を買収。課題点を克服し、15分で届くネットスーパー「AMo(アモ)」へとリブランディングして22年6月からサービスを本格開始した
元すかいらーくホールディングスCMO(最高マーケティング責任者)和田千弘社長率いるクイックエクスペリエンス(東京・渋谷)は、2022年1月に日本から撤退したドイツ発のフードデリバリー事業「foodpanda(フードパンダ)」上で展開されていたネットスーパー事業「pandamart(パンダマート)」を買収。課題点を克服し、15分で届くネットスーパー「AMo(アモ)」へとリブランディングして22年6月からサービスを本格開始した
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 新型コロナウイルス感染症拡大によって、一気に市場が拡大した業態の1つがネットスーパーだろう。ECの勃興につれ、ネットスーパーに取り組む企業は増えていたものの、スーパーマーケットの主力商品である生鮮食品などはリアル店舗での購入意向が根強かった。その常識がコロナ禍で覆された。外出自粛が広がる中、日々の買い物のような感覚でネットスーパーを使う層が増えた。調査会社の富士経済(東京・中央)によれば、国内の2021年のネットスーパー市場は前年比で15.4%増の2470億円となった。22年も引き続き堅調で、12.1%増の2770億円に規模が拡大すると見込む。

ネットスーパーは2020年以降、急速に販売金額が増加している。22年には21年比で12.1%増の2770億円に成長する見込みだ(出典:富士経済)
ネットスーパーは2020年以降、急速に販売金額が増加している。22年には21年比で12.1%増の2770億円に成長する見込みだ(出典:富士経済)
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 これを商機と捉え、既存のスーパー事業者によるネットスーパーの強化が進んだ。さらにネットスーパー成功のノウハウを生かした支援サービスが相次いで登場している。西友と資本業務提携して、同社のネットスーパー事業を推進してきた楽天グループや、地方発のネットスーパー成功者として知られるスーパーサンシ(三重県鈴鹿市)が、事業で培ったノウハウを生かした支援事業を開始。ベイシア(前橋市)、いなげや、サミット(東京・杉並)などの大手スーパーがそうした支援サービスを活用して、続々とネットスーパーへの参入を表明している。

 市場が活況を呈する中、異業種からの参入が相次ぐのが「ダークストア型」と呼ばれる新業態だ。ダークストアとは、配達専用スーパーを指す。実際のスーパーマーケットのように店舗の棚に商品を陳列するものの、その役割はあくまでも配送拠点だ。ネットで注文を受け付け、配達員がダークストアの棚から注文商品を袋に詰めて、顧客の自宅に配達する。その多くは数十分以内という短時間での配達をウリにしていることから、「クイックコマース」とも呼ばれる。22年1月にはヤフー、アスクル、フードデリバリーの出前館の3社が共同で「Yahoo!マート by ASKUL」を開始して、この市場に参入した。

ネットスーパーの参入/撤退に関する半年間の主な動向。参入企業が増えている一方、撤退する企業も多い
ネットスーパーの参入/撤退に関する半年間の主な動向。参入企業が増えている一方、撤退する企業も多い
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 大手IT企業も参入して盛り上がりを見せている一方、早くも雌雄を決し始めた。フードデリバリー事業を展開するWolt Japan(東京・渋谷)は22年7月3日、ダークストア型ネットスーパー「Wolt Market」の全拠点を閉店したことが分かった。21年12月からわずか半年での撤退だ。半年間の事業展開で、日本では大きな需要は見込みにくいと判断し、見切りをつけた。フードデリバリー事業とダークストア型ネットスーパーは、同じ配達サービスだが似て非なる面がある。ここに撤退の理由がありそうだ。

 本特集では群雄割拠のネットスーパー市場で、「もうかるネットスーパー」の構築を目指し、奔走する各社の取り組みを取り上げる。

フードデリバリー時代の経験は役に立たず

 「当社のネットスーパー事業は高収益モデルになっている。ダークストア型ネットスーパー事業において、フードデリバリー時代の経験は役に立たない。むしろ、すかいらーくで培った経験が生きている」

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