この数年でオンラインイベントに参加するシニア世代が増えていることをご存じだろうか。実際にオースタンス(東京・新宿)の運営する趣味人倶楽部では、2000回以上のオンラインイベントが自発的に開催されている。なぜ「令和シニア」はオンラインイベントに熱狂するのか。またシニアが満足するオンラインイベントを開催するためには、どのような仕掛けが重要なのか。連載第3回では、シニア向けオンラインイベントがはやる背景と開催する際のポイントを解説する。
ラクマや獺祭も開催するシニア向けオンラインイベント
2019年12月初旬に初めて感染者が報告されてから、数カ月ほどでパンデミック(世界的な大流行)となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、たくさんの人の生活様式に変化をもたらしたが、シニアも例外ではない。他の世代と同様に、シニアの生活も在宅が中心となり、オフラインでの行動にさまざまな制限がかかっていった。
このような情勢の変化に合わせて、オースタンスでは20年以降、シニア向けのオンラインイベントを、コロナ禍におけるリアルイベントの代替手段としてリリースした。実際に楽天グループの運営する「楽天ラクマ」と共同で「シニア向けフリマ教室」を実施したり、旭酒造(山口県岩国市)の展開する「獺祭(だっさい)」と共同で「オンライン酒造ツアー」を実施したりと、コロナ禍でもシニアが自宅からアクティビティーを楽しめる取り組みを、さまざまな角度から行ってきた。
それだけではなく、オースタンスの運営する趣味人倶楽部でも、2000回以上のオンラインイベントが、ユーザーの自発的な行動から開催されており、シニアの中でもオンラインイベントの人気がどんどん高まっていることが分かる。
オンラインイベントがシニア同士の交流と相性がいいワケ
なぜここまでシニアにオンラインイベントが受け入れられているのか。そこにはコロナ禍の前から存在していた、シニアの交友関係における潜在的なジョブが関係している。
これまでの連載でも説明した通り、シニアの交友関係におけるインサイトとして、「新しいつながりの再開拓欲求」が挙げられる。趣味人倶楽部に参加するシニアは、どれだけお互いに趣味を通して仲良くなっても匿名性はお互い守り合い、そして過去の経歴などに関しても特段言及せず、ただ目の前の趣味を通して関係性を構築していく。
▼関連記事 「デジタルを操る『令和シニア』5つのインサイト 20年前とは激変」コロナ禍の前までは、そのような交友関係を深める手段としてリアルイベントが積極的に活用されていたが、ここにはどうしても距離の課題が存在していた。令和シニアにとって、交友関係をつくる優先順位はご近所付き合いができるかどうかよりも、自分と似たような趣味があるかどうかのほうが高いことが多かった。故に住んでいるエリアが遠かったことで、趣味が同じでもなかなか心の距離を詰めていくことが難しいという課題が潜在的に存在していたのだ。
コロナ禍が始まった当初、趣味人倶楽部では、リアルイベントの代替手段として、コミュニティー内メンバーの顔合わせのためのオンラインイベントが開催されていた。
コロナ禍の前までは北海道に住んでいるメンバーと九州に住んでいるメンバーは多くても1年に1回程度しか会えなかったが、実際にコミュニティー内でオンラインイベントを実施することで、場所にとらわれず同じ年代の同じ趣味を持っている人と出合えたり、会話したりできるようになった。
このようなコロナ禍による半強制的なオンラインシフトは、それまでシニアが潜在的に抱えていた課題を解決し、シニアはより純粋な趣味や嗜好を軸に、場所にとらわれることなく交友関係を広げられるようになり、その手段として、さらにオンラインイベントが活用されるようになったのだ。
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