最近、シニア向けコミュニティーへの需要がさまざまな領域で広がっている。デジタルツールを積極的に活用することで、趣味などを起点に自分のコミュニティーを構築することができる「令和のシニア」特有の動きだろう。そこで連載第2回では、月間PV(ページビュー)約3000万を超えるシニア向けコミュニティーの「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」を運営するオースタンス(東京・新宿)が持つ独自の構築フレームワークを基に、シニア向けコミュニティー構築のポイントを解説する。
まず大前提として、オースタンスでは、シニア世代を「中高年~シニア世代」と捉えており、50~70代が該当すると考えている。では令和を生きるシニア世代はどのようなコミュニティーを求め、活動をしているのか──。まず、オースタンスが運営している趣味人倶楽部の実態をひもときながら、実際に活発なコミュニティーを紹介していく。
会員数35万人超! 日本最大級のシニア向けコミュニティー趣味人倶楽部
趣味人倶楽部は、月間3000万PV、会員数約35万人と、50~70代のシニア・中高年世代の多くに日常的に使用されている、趣味でつながる匿名制のコミュニティーサービスである。コミュニティー、イベント、日記などでオンライン・オフラインを問わず活発に交流されている人が多く、自身の「好き」や「興味」を通じて、新しい趣味や出会いを楽しむことができる。
そんな趣味人倶楽部にはイベント開催や写真の投稿などさまざまな機能があるが、中でも特徴的でかつ一番人気を誇るのがコミュニティー機能である。コミュニティー機能とは、同じ趣味や共通の興味、関心がある仲間を見つけて交流する場である。現在3万5000個ものコミュニティーが存在し、毎日それぞれのコミュニティーで交流が行われており、高いエンゲージメントを保っているのが特徴だ。
その中でも特に活発なコミュニティーをいくつかご紹介する。例えば「La vie on Rose」という旅行や日帰りイベントを企画するコミュニティーには2000人もの人が参加しており、そこでは日々さまざまな交流が行われ、多くの人が趣味に打ち込んでいる。他にも「Nice Time」という、1000人が参加し、2カ月先までイベントの参加予約が埋まっている、ハイキングや会食などさまざまなイベントを通して新しい友人と出合うためのコミュニティーもある。このように、旅行・写真・グルメ・スポーツなど多種多様なコミュニティーにたくさんの人が参加している。
オースタンス流 コミュニティー形成フレームワーク
では、なぜ趣味人倶楽部にはこのように活発なコミュニティーが大量に存在するのか。オースタンス独自のコミュニティー形成フレームワークがその鍵を握っている。ここからはそのフレームワークを紹介しながら、シニア向けのコミュニティー形成を成功させるための1つ目のポイントをお伝えする。
オースタンスではコミュニティー構築を始める際に、まず「目的」と「運営方法」、それぞれ6つの因子を組み合わせて、つくりたいコミュニティーの方向性を明確にするところから開始する。
例えば、オースタンスが支援した事例として、サントリーウエルネス(東京・港)が運営するGood Aging School(グッドエイジングスクール)がある。Good Aging Schoolは、「好き」をテーマに新しいコトと人のつながりを創出する、セサミン会員限定コミュニティーサービスであり、月間数万人規模にまで成長している。
サービスの立ち上げ時は、コミュニティーの目的をCRM(顧客情報管理)と集客に、運営方法をファンクラブとスクールに設定し、新CRMサービスの開発を行った。
Good Aging Schoolでは、ヨガやピラティス、筋トレなど、多種多様なオンラインレッスンが開催されており、レッスン中の質疑応答などチャットを通して生徒と先生同士の交流が行われている。またレッスン以外の時間では、先生と生徒がコミュニケーションを取れる掲示板機能が実装されている。掲示板では、レッスンの復習ができるだけでなく、健康や学びにつながる情報がやり取りされ、来訪頻度や継続率の向上に寄与している。直近では、芸能人・インフルエンサーのイベントへの参加や、観劇や旅行のプレゼント企画など、さまざまな企業との協業の取り組みも進んでいる。
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