
1兆円を超えるといわれる市場規模に拡大した100円ショップ業界。そのトップに君臨するのが大創産業(広島県東広島市)だ。強気の出店計画を掲げ、成長を続ける同社が次の成長の足がかりとするのが、4月にオープンした「グローバル旗艦店」。「ダイソー」「スタンダードプロダクツ」「スリーピー」の3ブランドを同時出店しただけではなく、メルカリとの提携、環境配慮型商品の展開、ブランド刷新など、数々の新施策を盛り込み、世界市場での展開も視野に入れる。特集では原材料高騰、円安など逆風に挑む大創産業の戦略を徹底分析する。
100円ショップ市場が急拡大している。帝国データバンクが2022年4月に発表したレポートによると、100円ショップの市場規模は、21年度は前年比5.8%増の9500億円になる見込みで、早ければ22年度にも1兆円を突破する可能性があるという。
長らく続く新型コロナウイルス禍でさまざまな業界が甚大な影響を受けるなか、なぜ100円ショップは急成長したのか。背景にあるのは、やはり生活者の強い節約志向だ。「『支出は限りなく抑えたい。でも物はそろえたい』というニーズを捉えて伸びている」と調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏は話す。
商品のクオリティーが向上したことも成長の追い風になっている。少し前までは「安かろう、悪かろう」というイメージが100円ショップにはあったが、「15年あたりからワンコインでも満足できるクオリティーの商品が増え、“100均”の印象が大きく変わった。安さだけではない魅力が生活者に広く認知され、そこからさらに勢いがついた」(飯島氏)という。デザイン性が高い雑貨が増え、ニトリやホームセンターなどを利用していた層が100円ショップにも足を運ぶようになった。
さまざまなジャンルの「エントリー向け商品」を拡充させていることも100円ショップ市場が躍進する理由の1つだ。例えばアウトドアグッズ。最近はどの100円ショップに行っても商品が充実しており、新しいカテゴリーとして売り上げを大きく伸ばしている。そのほか、釣り、DIY、手芸など、多種多様なグッズがそろっている。たいていのジャンルはエントリー層(入門者層)が最も厚い。「『本格的なものはまだいらない。手軽に楽しめるものをとりあえずそろえたい』という初心者のニーズをうまく捉え、日用雑貨以外の商品ラインアップを拡充したことで顧客層が大きく広がった」(飯島氏)。
拡大を続ける100円ショップ市場のトップに君臨するのが“王者”大創産業だ。今からちょうど50年前の1972年に「矢野商店」という雑貨の移動販売から始まった同社は、87年に「ダイソー」の常設型店舗をオープン。バブル経済崩壊後のデフレの大波にうまく乗り、2000年には1000店舗を達成した。現在では国内に4042店舗、海外に2296店舗を出店し、2021年度の売上高は5493億円(全ブランド計)に到達した(大創産業50年史は第6回に掲載)。
他の100円ショップ企業の動きも激しい。唯一“100円均一”を貫く、業界2位のセリアは、店舗数1876と順調に拡大を続けている。また、21年10月にはキャンドゥがイオンの傘下に入るなど、状況は刻々と変化している。
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