“一発屋”で終わらせないブランド術 第1回

変わらなければなくなっていく。ロングセラーが生まれにくい時代といわれる中、長く愛される商品を生み出すにはどうすればいいのか、長寿ブランドの試行錯誤からヒントを探る本特集。各社の取材を通じて出てきたのが、「挑戦」というキーワードだ。なぜ挑戦が重要なのか、挑戦を生むために何を意識すべきか。「亀田の柿の種」をはじめとした多数のロングセラーを有する亀田製菓の新CEOになったインド出身のジュネジャ・レカ・ラジュ氏と、執行役員CMO兼商品本部長の荒生均氏に、老舗企業、ロングセラーブランドの革新について問うた。

亀田製菓の代表取締役会長CEOとなったジュネジャ・レカ・ラジュ氏に、ロングセラーブランド、そして老舗企業の変革について聞いた。ジュネジャ氏は、1984年にインドから大阪大学工学部に研究員として来日し、その後名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程を修了。太陽化学に入社し、副社長などを歴任。2014年からロート製薬にて副社長兼チーフヘルスオフィサー(CHO)となり、子会社代表などを経て、20年に亀田製菓の代表取締役副社長に就任。22年6月より現職
亀田製菓の代表取締役会長CEOとなったジュネジャ・レカ・ラジュ氏に、ロングセラーブランド、そして老舗企業の変革について聞いた。ジュネジャ氏は、1984年にインドから大阪大学工学部に研究員として来日し、その後名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程を修了。太陽化学に入社し、副社長などを歴任。2014年からロート製薬にて副社長兼チーフヘルスオフィサー(CHO)となり、子会社代表などを経て、20年に亀田製菓の代表取締役副社長に就任。22年6月より現職

 商品寿命の短命化が叫ばれて久しい。情報過多の中、トレンドの移り変わりが劇的に速くなり、ヒット商品が誕生しては消え、ロングセラーが生まれにくい時代ともいわれる。そのため、大きく話題をつくり、“売り切り”を繰り返すことで収益を確保する動きもある。だが、商品企画者、マーケターとしては「つくるからには長く売りたい」「長く愛されるブランドをつくりたい」というのが本音だろう。

 コンビニなどでは「週販」(1週間での売り上げ)が商品存続の基準になっているともいわれ、長く売り続けることは至難の業。だが、その一方で、SNSで消費者と直接つながったり、D2Cブランドのように継続的なコミュニケーションを取りながら関係性の中で売り上げを伸ばしたりと、手段も多様化している。もちろん短期的な売り上げは重要だが、LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)という観点を重視する動きもある。

 そこで本特集では、ロングセラーブランドが愛され続けるために何をしてきたのか、当初のヒットに終わらず、一過性のブームに溺れず、いかにして苦難を乗り越えてきたのかを明らかにすることで、ブランド長寿命化、そして短命化からの脱出策のヒントを探っていく。本日7月11日には、サッポロビールの「サッポロ生ビール黒ラベル」の事例を同時公開。超ロングセラーながら、若者の人気を取り込み、いまだ成長を遂げる驚くべきブランドだ。

ビール市場が低迷する中、異例の成長を遂げるサッポロビールの「サッポロ生ビール黒ラベル」。なぜ若者を取り込み、再び躍進を遂げているのか、キーパーソンに直撃した
ビール市場が低迷する中、異例の成長を遂げるサッポロビールの「サッポロ生ビール黒ラベル」。なぜ若者を取り込み、再び躍進を遂げているのか、キーパーソンに直撃した
▼参考記事 サッポロ黒ラベルV字回復の軌跡 ロングセラーを再成長させるには

 本特集では、公開済みのサッポロ黒ラベルに加え、今後4社の事例を紹介していく。どれもまさに激動のストーリー。人気の陰には、ブランド存続を危ぶまれる危機や自ら迷い込んだ迷走からの脱出劇など、試行錯誤の歴史が隠されていた。各記事で詳報しているが、ブランドの立ち上げ期でも成熟期でも、常に同じ緊張感で変化に対応している様子が見える。

 7月13日に登場するのは、有楽製菓(東京都小平市)の「ブラックサンダー」。いまや幅広い世代に人気のど定番チョコレート菓子となっているが、実は数年にもわたって迷走していた低迷期があったという。いかに低迷期を脱したのか、注目したい。

有楽製菓の超定番菓子「ブラックサンダー」。一時期の迷走を経て、濃いファンの醸成につながっている。名物社長に愛される秘密を直撃した。右写真は、ブラックサンダーの聖地である愛知県豊橋市の「ホテルアソシア豊橋」で限定提供がはじまった「ブラックサンダールーム」
有楽製菓の超定番菓子「ブラックサンダー」。一時期の迷走を経て、濃いファンの醸成につながっている。名物社長に愛される秘密を直撃した。右写真は、ブラックサンダーの聖地である愛知県豊橋市の「ホテルアソシア豊橋」で限定提供がはじまった「ブラックサンダールーム」

 その他には、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの人気スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」、通称パズドラを取り上げる。スマホゲームの先駆けにして、22年に10周年を迎え、いまだ多くのファンを抱える。日用品や食品などでは数十年の歴史を持つ“猛者”はたくさんいる。だが、はやりすたりのスピードが段違いのスマホゲームにおいては、10年という年月が持つ意味は極めて大きい。一方、小売店としては、Zebra Japan(ゼブラ・ジャパン)が運営する雑貨店「フライングタイガー コペンハーゲン」の事例を紹介。12年の上陸時には行列ができるほど話題になり、22年7月にはパズドラと同じく10周年を迎えた。

 パズドラもフライングタイガーも、共通するのは大ブームの後にやって来る“飽き”や“廃れ”にどうあらがってきたのか。飽きさせない工夫や、戻ってきたくなる場所の醸成など、2つの“10年戦士”の試行錯誤は多くの企業の参考になるはずだ。

 7月15日の最後に登場するのは、ソニーのデジタル一眼カメラ「α」。世界初のフルサイズミラーレス一眼カメラ「α7」の投入を皮切りに、無音高速連写の「α9」、そしてブランド10年目にして初となるフラッグシップ「α1」を発売し、キヤノンやニコンの独壇場だったプロ市場で躍進している。スタート時点からして圧倒的逆境の中にあったα。当初は意見をもらうためにプロにお願いに行っても門前払いの連続。そこからいかにプロに認められ、カメラファンともつながってきたのか。泥臭い取り組みにも注目したい。

ロングセラーにあった“唯一の共通点”

 本特集の取材をしている中で、必ずといってもいいほど出てくる言葉が「挑戦」だ。一発当たったヒット商品からロングセラーになる際も、ロングセラーで居続ける際も、売れ続けるための特効薬はないと取材をしたブランド担当者が口々に語った。「それが分かったら誰でもロングセラーがつくれる」と答えた人もいる。だが、そんな中、一つだけ共通していたのが、上記の「挑戦」だ。

 そこで今回は、ロングセラーブランドを多数抱える亀田製菓の会長CEOになったジュネジャ・レカ・ラジュ氏と、同社で執行役員CMO兼商品本部長を務める荒生均氏に、ロングセラーブランドをいかに守り、育てていくのか、そして老舗企業をいかに成長させていくかについて聞いた。

亀田製菓の革新を託された会長CEOのジュネジャ氏
亀田製菓の革新を託された会長CEOのジュネジャ氏

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