すごいネーミング開発の舞台裏 第9回

ヒット商品を作るうえで欠かせない「魅力的なネーミング」を考える特集の第9回。今回は、さまざまな新商品が頻繁に登場し、幅広くファンを獲得しているコンビニスイーツを取り上げる。店舗でどのように気を引き、商品の特徴をどのように伝え、覚えてもらうか。各社の創意工夫が詰まったコンビニスイーツは、売れるネーミングの宝庫だ。

ローソンの「ウチカフェ」の「おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)」
ローソンの「ウチカフェ」の「おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)」

 スイーツの新商品を年間200種類ほど発売するローソン。2022年6月発売の「おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)」は、21年11月以降、定期的に発売する「おぼれクリーム」シリーズの新商品だ。商品名が示す通り、たっぷり盛ったクリームが特徴となっている。

 特に、初代の「おぼれクリームのパンケーキ」や「おぼれクリームのパンケーキ(いちごの味わい)」は、中のパンケーキが見えないほどのクリーム量。一方で、クリームの糖質を抑えているのも同シリーズの特徴だ。

左は、21年11月発売の「おぼれクリームのパンケーキ」。右は、22年1月発売の「おぼれクリームのパンケーキ(いちごの味わい)」。どちらもクリームたっぷりで商品名を体現(画像提供/ローソン)
左は、21年11月発売の「おぼれクリームのパンケーキ」。右は、22年1月発売の「おぼれクリームのパンケーキ(いちごの味わい)」。どちらもクリームたっぷりで商品名を体現(画像提供/ローソン)

 おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)のパッケージの表面には、「おぼれる程のクリームのヒミツは裏に…!」とあり、裏面には「おぼれる程のヒミツ♪」と、クリームの糖質オフを紹介している。

おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)のパッケージ表面には、「おぼれる程のクリームのヒミツは裏に…!」とある
おぼれクリームのエクレア(ホイップ&カスタード)のパッケージ表面には、「おぼれる程のクリームのヒミツは裏に…!」とある
裏面には、「おぼれる程のヒミツ♪」として、クリームの糖質オフを紹介した
裏面には、「おぼれる程のヒミツ♪」として、クリームの糖質オフを紹介した

 おぼれクリームシリーズは、しっかり甘くておいしいというスイーツの満足感と糖質オフという、相反する特徴が共存した商品だ。商品名が、「甘そう」「おいしそう」という期待感を高めている。この商品名は、商品開発中に使っていた仮の名称がそのまま採用となったという。

無意識に使っていた言葉を商品名に

 「ホボクリム」シリーズの初代「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー」は、クリーム好きに向けた、クリームを手づかみで食べるような満足感を狙った商品だ。開発中、新商品の特徴を口頭で説明する際に、「クリームが目いっぱい入っていて」「クリームで口の中がいっぱいになるのを楽しむ」などと解説していた。「その際に無意識に多用していた『ほぼほぼクリーム』を、商品名に採用した」(ローソン商品本部商品コンセプト開発部シニアマーチャンダイザーの吉田祐子氏)

 22年5月発売の「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー(とろ~りミルク)」は、ローソンのスイーツブランド「ウチカフェ」シリーズが目指すワクワク感を引き立てようと、パッケージを大きく変えた。新しく採用した無色透明のパッケージで中身を見せ、「とことんクリーム」との文字とともに、断面写真でたっぷりのクリーム量や生地の薄さを表現している。

22年5月発売の「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー(とろ~りミルク)」。19年11月発売の「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー」(左上)から、パッケージを大きく変えた(画像提供/ローソン)
22年5月発売の「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー(とろ~りミルク)」。19年11月発売の「ホボクリム ほぼほぼクリームのシュー」(左上)から、パッケージを大きく変えた(画像提供/ローソン)

 パッケージの蓋に大きく「涼」と描いたのは、「涼感スイーツ」シリーズだ。第1弾は、「まるでマンゴーみたいなマンゴープリン」と「まるでカフェラテみたいな珈琲ゼリー」。「まるで」「みたいな」という2つのワードを取り入れることで、スイーツでありながらフルーツと合わせたマンゴープリン、ドリンクと合わせた珈琲ゼリーという異なる特徴をストレートに伝え、シリーズとしての統一感も表現している。

2022年6月発売の「涼感スイーツ」第1弾、「まるでマンゴーみたいなマンゴープリン」
2022年6月発売の「涼感スイーツ」第1弾、「まるでマンゴーみたいなマンゴープリン」
「涼感スイーツ」第1弾のもう1つの商品、「まるでカフェラテみたいな珈琲ゼリー」
「涼感スイーツ」第1弾のもう1つの商品、「まるでカフェラテみたいな珈琲ゼリー」

 19年5月発売の「どらもっち」シリーズは、これまで累計7400万個以上を販売し、定番商品となった人気スイーツだ。わずか5文字の短い商品名に、食感を示す「もっち」というワードを取り入れた。短く簡潔で分かりやすく、記憶に残りやすいネーミングが、定番に昇格するほどの人気を支えている。

19年5月の発売以降、シリーズ累計で7400万個以上を売った「どらもっち(あんこ&ホイップ)」
19年5月の発売以降、シリーズ累計で7400万個以上を売った「どらもっち(あんこ&ホイップ)」

短く読ませて2つの意味を伝える

 セブン-イレブン・ジャパンが21年4月にリニューアル発売した「7プレミアム」の「きみだけのプリン」は、発売以降、SNSを含めて多くの好評を得ているという。

 商品コンセプトは、「(白身は使わず)卵黄のみで固めた、濃厚でなめらかなプリン」。商品名の「きみだけ」は、卵の「黄身だけ」と「君(お客様)だけ」という2つの意味を持つ。平仮名と片仮名のみで構成した商品名からは、やわらかさや親しみやすさ、商品への自信も感じられる。短く読ませて考えさせるネーミングになっている。

「セブンプレミアム」の「きみだけのプリン」。平仮名と片仮名のみで構成した、2つの意味を持つ商品名
「セブンプレミアム」の「きみだけのプリン」。平仮名と片仮名のみで構成した、2つの意味を持つ商品名

 リニューアル以前の従来品のパッケージは、ホワイト基調のシールを使っていたが、現行品はイエロー基調に変更し、卵黄のイメージを強調した。さらに前身の「きみのプリン」から、ネーミングもパッケージも、商品の魅力をより表現できるようブラッシュアップしている。

 ファミリーマートの「はじめは濃厚チーズなのにだんだんなめらかショコラきわだつショコラチーズケーキ」は、すでに終売した商品ではあるものの、20年11月発売の「新感覚チーズケーキ」シリーズの商品だ。発売から半年もたたず、シリーズ累計販売数は1000万個を突破した。38文字の長い商品名は、特徴をじっくり読ませて伝えるネーミング。たとえ長い商品名が読まれなくても商品情報が伝わるよう、「ショコラチーズケーキ」の文字を大きくしている。食べ進めると味わいが変化していき、食べ終わる頃には商品名への納得感も味わえる。

ファミリマートの「はじめは濃厚チーズなのにだんだんなめらかショコラきわだつショコラチーズケーキ」。じっくり読ませて特徴を伝える38文字の商品名
ファミリマートの「はじめは濃厚チーズなのにだんだんなめらかショコラきわだつショコラチーズケーキ」。じっくり読ませて特徴を伝える38文字の商品名

 ほかにも、ファミリーマートには、パッケージに「ふわしゅわ」と記した人気の「スフレ・プリン」や、「ふわほろエアインチョコサンド」といった、食感を表現した直感系ネーミングの新感覚スイーツがある。どちらも中身が見える無色透明のパッケージを採用し、商品名と合わせて、一度食べてみたいと思わせる。

「ふわしゅわ」というワードで食感を表現した「スフレ・プリン」
「ふわしゅわ」というワードで食感を表現した「スフレ・プリン」
「ふわっ」「ほろっ」という食感を商品名に取り入れた「ふわほろエアインチョコサンド(塩キャラメル)」
「ふわっ」「ほろっ」という食感を商品名に取り入れた「ふわほろエアインチョコサンド(塩キャラメル)」
(注)取り上げた商品の中には、すでに終売したものもある。
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