すごいネーミング開発の舞台裏 第3回

縮小が続く日本茶市場にあって、ユニークなネーミングの日本茶が、若い女性の支持を集めるカジュアルギフト市場を開拓して人気を呼んでいる。緑茶・和紅茶などを製造・販売する山壽(やます)杉本商店(静岡市)の「いぬ茶」「ねこ茶」のシリーズだ。

左は「ね紅茶」のティーバッグ、中央は「ねこ茶」、右は「ね紅茶」。ね紅茶は「ねこの紅茶だから」という理由で命名。2022年には「猫の日」を記念し、ねこ茶3種類から2つを選べる「ねこねこセット」などもプロデュースした
左は「ね紅茶」のティーバッグ、中央は「ねこ茶」、右は「ね紅茶」。ね紅茶は「ねこの紅茶だから」という理由で命名。2022年には「猫の日」を記念し、ねこ茶3種類から2つを選べる「ねこねこセット」などもプロデュースした

 店頭で「いぬ茶」「ねこ茶」などを目にした人は、不思議な感覚に陥るかもしれない。「かわいい犬や猫のイラスト」が目を引くパッケージは、誰が飲むものなのか?

 山壽(やます)杉本商店社長の杉本和義氏によれば、ペットが飲むものではないという。いぬ茶、ねこ茶の特徴は、ネーミングやパッケージ、そして飲んだ後に犬・猫をかたどったティーバッグのタグを本体から切り離し、栞(しおり)として使えるデザインにある。同社のねこ茶が2010年代半ば、各地の雑貨店や展示会に登場すると、全国の販売店のバイヤーから注文が相次いだ。杉本氏は、「先に誰かがいぬ茶を作ってしまうのではないか?」と思い、すぐにいぬ茶を販売した。

 いぬ茶、ねこ茶が広まったので静岡県内で生産された和紅茶の茶葉を使った「ね紅茶」「わん紅茶」も発売した。どの商品も、仕入れた茶葉を自社工場で焙煎・製茶して個包装し、パッケージやティーバッグのタグの製作、印刷に至るまでを自社で一貫して行い、販売店に出荷する。商品のネーミングやパッケージ、タグ類のデザインディレクションもすべて社内で行っている。

左は「いぬ茶」、右は「わん紅茶」。いぬ茶はねこ茶との対比で、わん紅茶は「わん公」からとったネーミング。外国人のために、英訳付きのいれ方パンフレットも付く
左は「いぬ茶」、右は「わん紅茶」。いぬ茶はねこ茶との対比で、わん紅茶は「わん公」からとったネーミング。外国人のために、英訳付きのいれ方パンフレットも付く

 新型コロナウイルス禍中にはネットショップ作成サービス「BASE」でECサイトを立ち上げ、FacebookとInstagramも開始。SNSによる販促を強化した。実販売数は非公表だが、ねこ茶、いぬ茶のシリーズを取り扱う国内の販売店は20年12月時点で東急ハンズやロフト、TSUTAYAなど100店舗を超えている。

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