不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」が取り組む、「住み替えインサイト」の発見と事業ブランドへの活用についての連載。第1回では、ブランドの独自性をつくるためのインサイト探索法として、「住み替え」機会においてどのようなインサイトが隠されているかをひもとく分析アプローチを紹介しました。第2回では、「住み替え」のインサイトとして、生活者が住み替えを通して潜在的にかなえたいこととは何か、「生活の転機」に起こる住まいに限らない消費ニーズの高まりを事業ブランドはどのようにビジネスに生かすべきかを解説します。

生活者の潜在的にかなえたいことは何なのか。インサイトの扉を開かなくてはならない ※画像はイメージ(画像提供:tomkawila/Shutterstock.com)
生活者の潜在的にかなえたいことは何なのか。インサイトの扉を開かなくてはならない ※画像はイメージ(画像提供:tomkawila/Shutterstock.com)

「住み替え」という現象が生まれる生活者の潜在的欲求

 前回の調査・分析によって、住み替えに至る生活者の心理変化や、環境からの作用を含めた構造を明らかにしたことで、生活者は自身の原体験を顧みながら「かなえたい希望」を具体化しながら「住み替え」を行っていることが分かりました。

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 しかし、ここまでの分析では「住み替え」という現象を理解したにすぎません。生活者をこのような行動に至らせる構造と共通する欲求を捉えることで、住み替えをしようとする生活者にとって価値のあるブランドの独自性をつくることができます。

「住み替え」をする人の「合理」を知る

 今回は、住み替えをする人の「合理(考え方、物事の捉え方)」を理解することで、インサイトを明らかにします。

 合理を理解するには、インタビューなどにより考え方や物事の捉え方を聞き出す必要があります。例えば調査やインタビューをしている際に、傍から見たら生活者が不合理な行動や発言をしているように見えるケースに遭遇することがあります。しかし、これは生活者がウソをついているのではなく、観察者にとって見えていない考え方や物事の捉え方が隠れていることにより、不合理に見えてしまっている場合がほとんどで、本当はその生活者の中で成り立っている「合理」が隠れています。

 そこで「住み替えをする人の合理」を明らかにするために、下図のような構造を用いて分析を行いました(合理を明らかにするための基本構造は「未顧客理解」で紹介されている「オルタネイトモデル」を基にし、本プロジェクト用にカスタマイズして使用しています)。これは、注文住宅に住み替えた30代男性のインタビュー調査からインサイトを探った例です。一般的なサービスの利用実態を調べる調査でこの方の消費を捉えようとすると、サービスを利用したきっかけは環境変化に記載のある「子供が生まれた」「同世代の知り合いが家を建てた」であり、行動は「インスタグラムで施工例を調べた」であることから、行動の目的は将来の理想の家を見つけることだと受け取られるでしょう。

 しかし今回、「生活者が住み替えを通して潜在的にかなえたいこととは何か?」という普遍的な現象を探索するうえで、きっかけを「住み替えの行動を始める前に、どのようなことがあったか」で捉えると、「実家に帰った時に落ち着きを感じて、今、子供が増えて少し心身に窮屈さを感じていることに気付き、子供の時の幸せを家族と手にしたいと感じた」という発言が得られます。そして、行動は「家族と実家のような安心感を共有」することに目的があって、行動の報酬として得られた喜びは「家族とこだわりが共有できて、ニーズが明確にできたこと」です。

 この構造を使い、無意識にある調査対象者自身も見えていなかった考え方を浮き彫りにすることで、今は無い理想の住まいを探している人は、過去の原体験に存在する住まい選択の軸を、自分や同居者と共有したい人へと移します。これによって、サービスが解決すべき顧客課題が正しく捉え直されるのです。

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