※日経クロステックの記事を再構成

「買わない人=未顧客」を理解する初めての教科書『“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』(2022年6月)。経験豊富なマーケティングサイエンティストであるコレクシアの芹澤連氏がさまざまなエビデンスに基づいた未顧客理解の原理原則と、日々のマーケティング実務で実践できるフレームワークを、マンガと図表で詳しく解説した書籍です。「未顧客理解」のエッセンスをお届けしている本連載。今回から“未”顧客を理解し、顧客にするための実践編に入ります。今回のテーマは「CEP(カテゴリーエントリーポイント)」です。

 ブランドが成長するには、ブランドの利用機会を増やし、ライトユーザーへの浸透率(特定期間中に少なくとも1回以上ブランドを購入した人の割合)を高める必要があります。こうしたエビデンスは何十年も前から報告されています[1] [2] [3] [4]。にもかかわらず、実務ではあまり生かされていないように感じます。なぜでしょうか。マーケターの主な指摘は、次の2つにまとめることができると思います。

[指摘1] 理論的にはそうかもしれないが日本では当てはまらない。日本は人口減少が続き市場が縮小しているから浸透率を高めるのは難しく、既存顧客を育成していくしかない。

[指摘2] 現行の問題点を指摘するなら、その問題を解決するにはどうすればいいのかを教えてほしい。具体的にどうやって新規獲得し、利用機会を増やすのか、手を動かせるレベルで示されていない。

 今回の記事では、こうした指摘をどう受け止めるべきなのか、そのうえでどう顧客獲得を進めていけばよいのか、考えてみたいと思います。

日本の市場だけが特別なわけではない

 まず[指摘1]についてですが、市場が縮小すると浸透率が高められないというのは、そもそもどこから来ている話なのでしょうか。恐らく、「人が少なくなると新規獲得が難しそうだ」というイメージの話ではないかと思われます。

 確かに“顧客数“は人口減少の影響を受けます。しかし、浸透率は少なくとも1回以上ブランドを購入した人の”割合“ですから、ブランドが選ばれる確率に左右されます。そして母集団のサイズと、その母集団における特定ブランドの選択確率は別の変数です。この辺りが混同されて、人口が減ると浸透率も伸び悩むというイメージが形成されているのかもしれません。

 寡占市場で浸透率が国民全体に及ぶようなブランドならこれ以上浸透率が伸びないというのも分かりますが、通常の事業会社の場合、「カテゴリー内のどのブランドも使っていないような完全新規が少ないだけ」で、競合も自社も買うカテゴリーユーザーは残っているはずです。

 それは単に競争が激しい成熟市場であるというだけで、別に日本が特別なわけではありません。他の先進国でも同様です。というより、人口が増加していたとしても、自社ブランドだけを買い続けてくれるようなヘビーユーザーを育てるのは難しいでしょう[2] [5]

人口が減っているからこそ浸透率を増やすべき

 誰も「浸透率を伸ばすほうが簡単だから浸透率を伸ばしましょう」とは言っていません。「既存顧客のロイヤルティーだけで事業成長するというモデルには限界があるから、浸透率を伸ばしましょう」と言っているのです。

 例えば、仮にリソースを100%既存顧客の維持や育成に集中させたとしても離反をゼロにはできませんから、残った既存顧客のロイヤルティー(購入回数)を増やして、離反客の売り上げ減少分を賄い続ける必要があります。それでも収支はとんとんです。しかし、いくらファンとはいえ青天井で購入回数を増やせるわけではありません。

 また、顧客離反もダブルジョパディに従います[3]。シェアの小さいブランドほど、離反客の売り上げ減少によるインパクトは大きくなりますから、破綻するのも早くなります。ですので「人口が減っているから既存顧客を育成していくしかない」ではなく、「人口が減っているからこそブランドへの入り口をたくさんつくって、浸透率を増やさなければならない」のです。

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