いかに顧客を増やすか――。商品やサービスを販売する企業にとって、極めて重要な課題だろう。その課題解決をする際に活用したいのが無料のオープンデータだ。データサイエンティストの烏谷正彦氏がオープンデータのビジネス活用を「5W1H」にそって伝授する本連載。Why(なぜ)に着目し、売り上げや利用者の増減の原因をデータから探った第1回に続き、第2回は、Who(誰)をテーマに、オープンデータを使った顧客分析の手法を解説する。

自社商品・サービスの顧客は誰? どこにいる? (画像/Shutterstock)
自社商品・サービスの顧客は誰? どこにいる? (画像/Shutterstock)
▼前回の連載第1回はこちら 誰でもできる無料データで「売上減の理由」を見つける方法

 「Who」、つまり「顧客」を分析する場合、活用できるデータは大きく以下の3つに分けられる。

「(1)自社データ」
「(2)競合(業界)データ」
「(3)国全体や各地域を対象としたオープンデータ」

 (1)は、自社に蓄積された顧客データであり、それを分析することによって、新規顧客の獲得や、既存顧客のロイヤルティーを高めるための施策を検討できる。

 ただし、商品やサービスをリリースしたばかりで、まだ(1)がないか、少ないために分析が難しい場合もあるだろう。そうしたときに役立つのが、様々な企業や業界団体が有償・無償で提供している(2)の競合や業界のデータだ。(2)を使って競合の顧客を分析することで、自社サービスに不足しているものが見えてきたり、差異化を図って競合とは異なる層をターゲットにしたりと打ち手が検討できる。

 一方で、自社の商品・サービスがリリースされてからある程度の時間がたっており、今後さらなる成長につなげたい場合、あるいは売り上げが低迷しつつあり回復させる手段が必要なケースなどでは、(1)のデータに加えて、無料で使える(3)のオープンデータの活用を積極的に検討したい。

 ビジネスで課題解決に取り組む際、自社の状況だけを見ていると、その手段は限定的になる。また、市場だけを見ていても、自社の課題解決につながるとは限らない。重要なのが、自社と市場を様々な切り口で“比較”することだ。つまり、(1)の自社データと(3)のオープンデータを比べ、自社の強みや弱みを明確にし、誰が顧客なのかをしっかり見つめ直すことがポイントとなる。

意外に使える「国勢調査」「住民基本台帳」の基本データ

 では、自社データとオープンデータを比較する基本的な方法を見ていく。分かりやすい比較方法として、顧客の年齢層に着目する。

 例えば、東京都千代田区にある架空の小売店(A店)を想定。東京都全体または千代田区全体を市場として、年代別の割合を比較してみた(下のグラフ)。

ある店舗の利用者とエリアの住民について年代別割合を比較(例)
ある店舗の利用者とエリアの住民について年代別割合を比較(例)
店舗の利用者のデータは架空のもの

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