なぜ、商品やサービスの利用者が減っているのか。売り上げをアップさせるための効果的な手はないのか――。そうした現状分析や施策の立案に有効なのが、自治体や企業が公表している様々な“無料”のオープンデータだ。新連載「5W1Hで見るオープンデータ活用入門」では、その活用のコツや方法を、実例を交えて解説していく。第1回は、Why(なぜ)に着目し、売り上げや利用者の増減の原因を、オープンデータを使って探り当てる方法をデータサイエンティストの烏谷正彦氏が伝授する。

自治体が公開している公的データや、民間企業が公開している人流データなど、無料で使えるオープンデータは意外に多い(画像/Shutterstock)
自治体が公開している公的データや、民間企業が公開している人流データなど、無料で使えるオープンデータは意外に多い(画像/Shutterstock)

 現在、企業では自社に蓄積されたデータやより広範なビッグデータをビジネスに活用しようという機運が高まっている。デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、データを分析する専門部隊を立ち上げ、多くのデータアナリストを抱えてデータ活用に力を入れる例も見られる。あるいは、多大なコストをかけてシステムを構築したり、外部にデータ分析を依頼したりするケースも目立つ。

 だが、そうして大掛かりな施策を打てるのは資金のある一部の大手に限定される。多くの会社はハードルの高さから、本格的なデータ活用に踏み切れていないのが現状だろう。

事業分析や施策立案に役立つ無料のオープンデータ

 しかし、コストをかけなくても、本格的なデータ活用を自社ビジネスに取り入れる方法がある。それが、自治体や一部の民間企業が提供しているオープンデータを活用することだ。

 オープンデータの多くは、何と無料で開放されている。営業やマーケティングの担当者が、予算を組まずとも、その気になれば思い立ったその日から活用して、現状の分析や課題解決に役立てることができるのだ。ただし、行うにはちょっとしたコツが必要である。本連載では、そうした初心者でも、オープンデータを手軽に自社の事業分析や施策立案に取り入れるためのノウハウをまとめていく。

 まずは、オープンデータがどのようなものかを説明する。オープンデータとは膨大なデータを視覚的に分かりやすく加工して提供している、いわゆるビッグデータの一つである。ビッグデータは大きく分けると、「ファーストパーティーデータ」「セカンドパーティーデータ」「サードパーティーデータ」の3種類になる。そのうち、ファーストパーティーデータは、自社内に蓄積されているデータのこと。小売業であれば、各店舗の日々の売り上げデータ、製造業であれば毎日の出荷データなどがこれに当たる。

 一方、セカンドパーティーデータは、自社のパートナー企業から入手可能なデータを指す。製造業が、自社の製品を卸している小売業の会社から販売データを入手する場合などが相当する。そして、サードパーティーデータは、第三者が保有するデータのこと。その中でも、公的な目的などのために広く利用を可能にしているデータがオープンデータと呼ばれている。国勢調査や商業動態統計など国や自治体による調査結果がオープンデータとして開放されているケースは多い。例えば、経済産業省と内閣府が「地域経済分析システム(RESAS、リーサス)」で提供している、地域の人の流れや飲食、消費、観光のビッグデータもオープンデータといっていいだろう。

 近年、このオープンデータへの注目が高まっている。きっかけの一つは、内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針 2018」で示された、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)の取り組みとして、多くの自治体がデータを公開するようになったことだ。

 例えば、データカタログサイト「DATA.GO.JP」には、約2万4000件のデータセットが登録され、誰でも簡単に検索、入手し、営業目的も含めた二次利用を可能にしている。

▼外部リンク DATA.GO.JP データカタログサイト

 では、こうしたオープンデータを使ってどのように分析をしていけばよいのか。実例を交えて見ていこう。今回のテーマは、「なぜ、売り上げや利用者が増減しているのか」、つまり、5W1Hのうちの「Why(なぜ)」をテーマに、オープンデータを活用した現状や課題の可視化を行っていく。自社のデータに加え、オープンデータを活用してWhyを明らかにすることにより、検討すべき課題の範囲が明確になり、そこに対して適切な改善策を打つことによって、高い確度で事態の打開を図ることが可能になる。

「オープンデータ×売上分解ツリー」で不振の理由を解明

 飲食業や小売業など、様々な業界で活用できるが、今回例として取り上げたいのが、旅行業だ。コロナ禍では、緊急事態宣言などの影響で旅行者が激減した。だが、その後実施されたGoToトラベルの施策によって、逆に旅行者は急増した。いずれも旅行業界が多大な影響を受けた事象である。

 ただ、こうした世の中全体の影響は、自社ではコントロールできない。だからといって、コロナ禍以外でも、景気が落ちて旅行者が減った場合、「不景気だから仕方ない」と諦めて手を打たなければ、後手後手となりさらに業績を悪化させてしまう。そこで、世の中の事象や景気がどうなろうと、自社でコントロールできることにフォーカスして、課題を抽出して対策を打つことが重要となる。

 それでは、具体的にどのように考えていけばよいのか。旅行関連でも主要なカテゴリーとなる宿泊業を対象に検討してみたのが次の図だ。以前、日経クロストレンドで連載していた「『5W1H』で見る! 購買データ分析入門」の第1回「売上分解ツリー図のつくり方 売り上げ20%増でも油断は禁物」の際にも示した、売上分解ツリー図である。売り上げを構成する要素をツリー状に分解していくことによって、何が影響したのか、要因は何だったのかを可視化する手法だ。

▼関連記事 売上分解ツリー図のつくり方 売り上げ20%増でも油断は禁物
■ 宿泊業における売上金額のツリー図(例)
■ 宿泊業における売上金額のツリー図(例)
赤いボックスは公的なオープンデータで把握可能なもの。一方の青いボックスは、データを組み合わせて計算することで算出可能な要素

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