新しいテックトレンドとして注目を集める「Web3(ウェブスリー)」。金銭的な機能を持つデジタルアセット(トークン)は従来のマーケティング手法にどのような変化をもたらすのか。ブロックチェーン開発のGinco(ギンコ、東京・中央)を率いる森川夢佑斗代表が解説する。

スポーツゲームのNFT(非代替性トークン)のイメージ(写真/Shutterstock)
スポーツゲームのNFT(非代替性トークン)のイメージ(写真/Shutterstock)

 これまで本連載では2回にわたって、Web3ビジネスの基本的な特徴とエコシステムの全体像について解説してきました。2022年はNTTドコモによる6000億円規模のWeb3領域への事業投資や、自由民主党デジタル社会推進本部による「web3関連税制に関する緊急提言」などが実施され、引き続き注目を集めています。

 一方で、金銭的な機能を持つデジタルアセット(トークン)を従来のWebサービスと組み合わせ、ファイナンスとマーケティングに活用するWeb3の手法は、デジタル産業の新しい潮流として普及の途上にあります。そこで今回は、マーケティング的な側面でのトークン活用について、その特徴やメリットについて詳しく解説をしていきます。

DMで「価値あるトークン」を送るという新手法

 現在、マーケティングの世界では急激なデジタル化が進行しています。22年、電通が発表した「2021年 日本の広告費」では、インターネット広告費(=2兆7052億円)がマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)広告費の合計金額(=2兆4538億円)を上回りました。新型コロナウイルス禍を通じてデジタル空間での活動が増加したことで、そこに露出するデジタル広告の重要性が高まった結果といえるでしょう。

 一方で、米GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)に代表されるメガプラットフォームが、ユーザーの興味関心、人間関係、行動履歴を収集・追跡することへの風当たりも強まっています。

 GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)によって、EU圏内で経済活動を行う企業が、「クッキー(Webサイト利用者の情報をブラウザーに保存し、アクセスしたサイトにその識別情報を保存する仕組み)」などの個人データをユーザーの承認なしに取得することが禁止されました。

 今後もデジタル化へのニーズが高まる一方で、ユーザーの個人情報を基にしたターゲティングに制限がかかることに、多くのマーケターは頭を悩ませていることでしょう。

 これまでマーケティングの世界で行われてきたのは、主にユーザーの興味関心や人間関係、行動履歴を監視・追跡し、その経路へいかに有効な「看板」を立てるか、という手法でした。そして、この「看板」がユーザーにとって不要に感じられないよう工夫を凝らし、価値あるコンテンツとして受け止めてもらうようにターゲットを分析することが重要視されています。

 ここにトークンが加わると、どうなるのでしょうか。

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