ブロックチェーン技術を活用した次世代の分散型インターネット「Web3(ウェブスリー)」。ユーザーが自らデータを共有・管理しながら運用する「新しいインターネットの形」といわれるWeb3がビジネスに及ぼす影響はどんなものか。ブロックチェーン開発のGinco(ギンコ、東京・中央)を率いる森川夢佑斗代表が解説する連載の第1回。そもそもWeb3とは何なのか、改めて考える。

急速に注目度が高まっているキーワード「Web3」(写真/Shutterstock)
急速に注目度が高まっているキーワード「Web3」(写真/Shutterstock)

 2022年に入り、「Web3(ウェブスリー)」というキーワードを目にする機会が増えました。最近ではメディア上のバズワードの域を超え、岸田文雄首相が衆院予算委員会で、「Web3時代の到来は、経済成長の実現につながる可能性がある」と発言するなど、新しいテックトレンドとして勢いを増しています。

 一方で、直近の暗号資産(仮想通貨)マーケットの暴落などを受け、Web3に懐疑的な意見を見かける機会も増え、現時点でどのように評価すべきか判断がつかないという人から相談を受ける機会も増えました。

 バズワードに対する混乱した議論をひもとく最初の一歩は、事実と主張を切り分けて考えることです。これは「Web3」について考える際も例外ではありません。

 そもそもWeb3というキーワードは、語義的に「現在のWeb(Web2.0)にはアップデートすべきところがある」という主張を内包しています。そのため、Web3について説明を受ける人の多くは、その実態を理解する前に一方的な主張をぶつけられているような感覚に陥ってしまうのではないでしょうか。

 一方で、Web3と称される一連のトレンドにおいて、無視できない事実があることも確かだと考えます。それは「トークン」によるファイナンスとマーケティングが事業の成長ドライバーとして有効活用され得るという点です。

 Web3で変わるビジネスの姿を探索していく本連載の第1回では、この事実に軸足を置きながら、Web3というキーワードの輪郭を明らかにしていきたいと思います。

現状への不満がWeb3という”願い”を生んだ

 Web3(Web3.0)というキーワードはブロックチェーン技術の発展に伴い、多くの人の目に留まるようになりました。しかし、実はWeb3.0という言葉自体が初めて登場したのは2006年ごろのことです。

 インターネットの生みの親として知られるティム・バーナーズ・リー氏が提唱した原義のWeb3.0は、インターネット自体をコンピューターが解釈しやすい構造の情報プールにすることで、ビッグデータ活用とシステム自動化が容易な公共空間にしようとするコンセプトでした。

 一方で、今注目を集めている「Web3」は、これを再解釈し、ブロックチェーン技術を活用してビッグデータやプラットフォームを独占する一部企業からの脱却を図るコンセプトとして主張されています。

 このような再解釈が行われた背景には以下の3つの事実が挙げられます。

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