2022年7月に入り受注を開始していた日産自動車「フェアレディZ」。世界的な半導体不足、新型コロナウイルス禍や世界情勢の影響などから、「アリアB6」とともに7月末で受注を一時停止している。「7代目」と言っても過言ではない新型はなぜマイナーチェンジなのか。小沢コージ氏が社内事情を分析する。
型式はZ34で変わらず! だが
「私たちの中ではフルモデルチェンジです。今回の新型Zは7代目Zですよ」(日産自動車 製品開発部チーフ・ビークル・エンジニア〈CVE〉の川口隆志氏)――。
ついに登場した日産伝統の本格スポーツカー、新型「フェアレディZ」。日本が誇る本格FR(前部エンジン・後輪駆動)スポーツカーのパイオニアであり、歴史的モデルだ。初代は高度経済成長期の1969年に生まれ、53年間もつくり続けられているのだ。日本でピュアスポーツカーと言えば、89年に登場したマツダ「ロードスター」、2012年発売のトヨタ「86(現GR86)」&スバル「BRZ」の兄弟車が存在するが、歴史はそれよりはるかに長い。
車名が途切れず使い続けられている点で見れば、1951年生まれのトヨタ「ランドクルーザー」、55年生まれのクラウン、66年生まれのカローラに続くビッグネームだ。スポーツカーに絞れば、63年生まれのポルシェ「911」に継ぐ歴史を誇っている可能性がある。
だからといってスポーツカーのモデルチェンジはラクではない。むしろ過酷だ。それを物語るのが、今回の新型Zの「届け出型式」である。なんと型式は2008年からつくり続けた旧型6代目Zの「Z34」から派生した「RZ34」。本来7代目ならZ35となるはずが、公式には6代目のビッグマイナーチェンジモデル扱いになっているのだ。その大きな変貌ぶりからすると、少々違和感が付きまとう。
どう見てもフルモデルチェンジ級変貌
しかし開発陣は「7代目」だと認識している。それはそうだ。ボディーの骨格たるFRプラットフォームはキャリーオーバーで、ホイールベースも変わらず2550ミリメートルのまま。だがパーツの80%は新設計で、外観は完全に新作。全長×全幅×全高は4380×1845×1315ミリメートルで、幅と高さは変わらないが、全長は12センチも長くなっている。
何よりもルックスだ。6代目の丸まったリアビューは伸びやかになり、より伝統的なフェアレディZスタイルに進化。フロントの長方形グリルは初代のS30型Zをオマージュしたものだし、新しさの中にも懐かしさがある。
エンジンは従来の3.7リットルV6ノンターボとは大きく異なる新世代の3.0リットルV6ツインターボ。19年に登場したスカイライン400R用のパワーユニットで、エンジンスペックは一見変わらない。ピークパワー&トルクは405ps&475Nmのままだが、トルクの発生回転域が変わり、高回転まで伸びるようになっている。
実際、乗ったときの印象はスカイラインとは段違いで精度高く回るし、6MT車では2速からの加速で軽いホイールスピンをした。今までのZ34にはない、オーバーパワー感だ。
同社商品企画部ブランドアンバサダーの田村宏志氏も「本来二輪駆動車には300psで十分。タイヤ1輪で150ps伝えるのが限界ですから。しかし新型Zはあえて400ps級に、ちょっと超えたくらいに設定しました」。
ボディー剛性も大幅に強化。オーバーパワーを高精度なシャシーで操ってる感覚があり、じゃじゃ馬ならしのような楽しさもある。
今回投入した新作9速ATもすごい。6速までがクロスレシオでスポーティーにスパスパと加速し、7速以上がワイドレシオで燃費を稼ぐ。時速114キロメートルでやっとトップギアに入り、おそらくその時点でエンジン回転は2000回転以下。
事実カタログ燃費性能は、旧型Z34の6速MTモデルがJC08モードで1リットル当たり9.1キロメートルだったのに対し、新型Z34はより厳しいWLTC(世界統一試験サイクル)モードで、6速MTが同9.5キロメートル、9速ATが10.2キロメートルと、飛び抜けている。残念ながら、今どきの電動化や簡単なマイルドハイブリッドも付いていないが、それを補う燃費向上技術が投入されている。
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