16代目となるトヨタ自動車の「クラウン」が世界公開されてから約1カ月。第1弾として「クラウン クロスオーバー」を2022年秋ごろに発売する予定だが、SUV(多目的スポーツ車)化したと話題の新型の変化を、小沢コージ氏は「何だかんだトップの英断」によるものだという。
ウワサのSUV化は本当だった!
「16代目のクラウン。日本の歴史に重ね合わせれば、それは『明治維新』です」――。
プレゼンターであるトヨタ自動車(以下トヨタ)の豊田章男社長の言葉を借りるまでもない。日本を代表する高級車、いや日本で最も頑固そうなクルマが生まれ変わった。それも超極端に。例えるなら和食が洋食に変わったかのような大変貌だ。
それは2022年7月に日本でワールドプレミアされた新型16代目クラウン。実に67年目の生まれ変わりであり、まさしく「クラウン維新」と言っても過言ではない。
22年秋に発売予定の第1弾「クラウン クロスオーバー」の全長×全幅×全高は、15代目に比べて20ミリメートル長く、40ミリメートル広く、85ミリメートル高くなり4930×1840×1540ミリメートルに拡大。何より強烈なのがスタイルの変貌で、今までの三つぞろいスーツのようなセダンフォルムが、イルカのようなスタイリッシュSUVフォルムに。おまけにボディーカラーは2トーンがメインだ。その分、リアシートは広く、身長176センチの自分が座っても、ひざ前にこぶしが2個半入るほど。ラゲッジは74リットル拡大して450リットルと十分な広さに。正直発表会を見てなかったら「これ、本当にクラウンと呼んでいいの?」という変わりっぷりだ。
クラウンはご存じの通り、今から67年前の1955年に生まれたクルマだ。これより古く、今も現役のトヨタ車といえば、本格SUVの「ランドクルーザー」くらいのもので、まさに自動車界きっての国産ビッグネーム。
しかもこの67年間、ほぼ変わっていない部分があった。それは真横から見ると箱を3つ並べたような王道の3ボックスのセダンスタイルと、フロントにパワートレインを縦置きし、リアタイヤを駆動するFR(前部エンジン・後輪駆動)レイアウトだ。
もちろんクラウンのテーマは一貫して「革新と挑戦」。当初アメリカ車的だったスタイルは徐々にヨーロピアンテイストに変わり、現行15代目はドイツの過酷サーキット、ニュルブルクリンクになぞらえ「ニュルクラウン」とも呼ばれた。それだけ走りは硬く高速向けになったし、一応3ボックスのままだが、リアスタイルはクーペっぽくスポーティーになった。
だが、今もメルセデス・ベンツやBMWの高級車セグメントが採用し続けているFRレイアウトを簡単にやめるとは思えなかったし、一昨年、愛知のメディアが「次期型クラウン、SUV化」のスクープをすっぱ抜いたときも、正直小沢は半信半疑だった。それほどクラウンのイメージは強烈かつ変わらない位置付けにあったのだ。
同時に驚かされたのはマルチバリエーション化とグローバル化だ。今回発表されたところによると、SUV化した新型クロスオーバーに加え、約1年半の期間をかけてスポーツSUVのスポーツ、大型化した国際サイズのセダン、ステーションワゴンのエステートを順次発売していくという。
また、事実上国内専用車だったクラウンだが、新しい世代から約40の国と地域で発売される。正直、びっくり度に例えると、普通の大変身フルモデルチェンジの軽く2~3倍はある。小沢のジャーナリスト人生の中でもこんなに驚いた新車発表は初めてかもしれない。
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