「100年に一度の大きな変革期」を迎えているといわれる自動車業界。この激動期の「クルマ&クルマ業界事情」を自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が解析する新連載がスタート。2022年秋に販売開始予定のマツダの新型クロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)「MAZDA CX-60」に試乗した小沢氏は「驚いた」と言う。「電動化」に舵(かじ)を切る自動車業界における「逆張り戦略」の謎に迫る。
新FR骨格に新ディーゼルで超逆張り
何事もそうだが物事は見る角度によって見え方が変わるもの。コップの水が「多い」か「少ない」か視点によって変わるがごとくだが、全く同じことが言えるのが今年(22年)グローバルで全面展開する予定のマツダ新ラージ商品群(※1)であり、その第1弾「CX-60」だろう。
人によっては「何? 今年またマツダが新しい高級車出すの?」くらいに思うかもしれないが、これは見方によってはマツダの大きな賭けであり、超逆張り作戦だ。
今の自動車界のトレンドは、言うまでもなく「電動化」であり「自動化」であり「知能化」に違いない。クルマに詳しくない人の中には、こうしたトレンドに乗ったクルマはスマートフォンのようにケーブル充電されて動き、アプリ満載で、画面タッチ操作で動くように漠然と捉えているケースもあるだろう。
しかし小沢は先日、新作CX-60プロトタイプ試乗会で驚いた。一連の新商品群は自動化こそ多少進んでいるものの、正直、1990年代的自動車価値の進化型にも見えたほど。なぜならばCX-60には今までマツダが造ってこなかった新世代FR(フロントエンジン・リアドライブ)プラットフォームが投入され、直列6気筒エンジン、それもガソリンに加えてディーゼルまで投入されるからである。
もちろん電池容量の多いプラグインハイブリッド(PHEV)車も用意されているがあくまでも一部。メインはどう見ても直列6気筒ディーゼルエンジンであり、FRフォルムの新作SUVなのである。しかもCX-60は今後ワイドボディー化、3列シート化とともに「CX-70」「CX-80」「CX-90」と世界で全面展開される予定。ある意味、マツダの社運を賭けた一大プロジェクトなのである。
一部条件付きとはいえ、独メルセデス・ベンツグループや独アウディ、スウェーデンのボルボなどの2030年前後での全車電気自動車(EV)化計画を見ていると、時代錯誤感どころかマツダの将来に不安を覚える人もいるだろう。
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